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私は、独り、流される
ぱれーどがはじまる
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昨日の雨が嘘のように雲一つない青空が広がる。きっと何も知らない人が見たら、世界が祝福していると思うのだろう。
ジルが去った後、私はお風呂に追い立てられ、戻ってくると部屋はすっかり綺麗になっていた。首の傷は侍女さんによって魔法で塞がれ、少しの痕が残るばかりだ。2、3日もすればこの痕も消えるだろう。詳細については後日改めて聴取すると言われた。
今日はパレードの日だ。朝から知らない侍女さん(多分お城で働く別の侍女さん)に全身を洗われ、綺麗な服を着せられ疲れてしまった。
部屋に置かれている鏡に映る自分を見つめる。どこからどう見ても服に着られている。可愛らしくも冒険者らしい洋装は、確かにパレードに相応しいだろう。しかしフリルがあしらわれている袖がとても邪魔だ。これもまたパフォーマンスの1種かと思うとげんなりしてしまう。もしかしたらこれはヴィーのために作られたのかもしれない。彼女なら素敵に着こなすだろう。その姿が見たかったなと思う。
しばらくすると、侍女さんが呼びに来てくれた。なんでも私は騎士様の馬に乗ることになったらしい。侍女さんの馬では駄目なのか問うと、本来侍女さんは裏方の人間だから英雄が乗るには相応しくないとの事だった。
言葉に詰まる私に、侍女さんは気にしていないと言ってくれたけれど、相応しくないという言葉にどことなく悪意を感じて、気分が落ち込んだ。
別に英雄でもなんでもないのだから、侍女さんと一緒でいいという私の意見は結局通らず、姫様の乗る馬車の後ろに配置される馬に乗せられることとなった。
騎士様は誰だろう。怖い人じゃなければいいと思う。最悪無視されても、それはそれで構わない。侍女さんに乗せてもらえれば、パレード参加の義務は果たされるだろう。ただ、叩かれたり蹴られたりするのは、隠さなくちゃいけないから面倒なのだ。途中で落とされたりしたら目にも当てられない。
「マリー様。」
「…騎士様。」
馬を待っていると、声を掛けられる。振り返るとそこには馬に乗った魔法騎士様がいた。彼が私を乗せてくれる人なのだろうか。
「本日はよろしくお願いいたします。」
「…っよろしく、お願いします。」
そうらしい。魔法を掛けられて引っ張りあげられる。せめて一言言って欲しかったと思う。急に高くなった視界に、心臓が痛い。
「すみません、人を乗せたことがあまり無いので、ご不便な点が多くあるかもしれません。御容赦ください。」
変に固まってしまった私に気付いたのか、魔法騎士様が慌てて魔法を解く。荷物と同じ要領で使ったのだろう。戻ってきた自重に、ホッと息を吐く。
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
「英雄様を乗せられるのは名誉な事です。マリー様が落ちないよう、精一杯努めさせていただきます。」
「…よろしくお願いします。」
にこやかに笑うその人の真意は分からなかったけれど、多分私を途中で落としたりはしないようだ。パレード中、後ろに気を張らなくてもいいというのはありがたい。注意すべき箇所は少ない方がいい。腰に下げた杖に手をあてる。
「動きます。」
「…はい。」
あと少しだけ、頑張ろう。
ジルが去った後、私はお風呂に追い立てられ、戻ってくると部屋はすっかり綺麗になっていた。首の傷は侍女さんによって魔法で塞がれ、少しの痕が残るばかりだ。2、3日もすればこの痕も消えるだろう。詳細については後日改めて聴取すると言われた。
今日はパレードの日だ。朝から知らない侍女さん(多分お城で働く別の侍女さん)に全身を洗われ、綺麗な服を着せられ疲れてしまった。
部屋に置かれている鏡に映る自分を見つめる。どこからどう見ても服に着られている。可愛らしくも冒険者らしい洋装は、確かにパレードに相応しいだろう。しかしフリルがあしらわれている袖がとても邪魔だ。これもまたパフォーマンスの1種かと思うとげんなりしてしまう。もしかしたらこれはヴィーのために作られたのかもしれない。彼女なら素敵に着こなすだろう。その姿が見たかったなと思う。
しばらくすると、侍女さんが呼びに来てくれた。なんでも私は騎士様の馬に乗ることになったらしい。侍女さんの馬では駄目なのか問うと、本来侍女さんは裏方の人間だから英雄が乗るには相応しくないとの事だった。
言葉に詰まる私に、侍女さんは気にしていないと言ってくれたけれど、相応しくないという言葉にどことなく悪意を感じて、気分が落ち込んだ。
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騎士様は誰だろう。怖い人じゃなければいいと思う。最悪無視されても、それはそれで構わない。侍女さんに乗せてもらえれば、パレード参加の義務は果たされるだろう。ただ、叩かれたり蹴られたりするのは、隠さなくちゃいけないから面倒なのだ。途中で落とされたりしたら目にも当てられない。
「マリー様。」
「…騎士様。」
馬を待っていると、声を掛けられる。振り返るとそこには馬に乗った魔法騎士様がいた。彼が私を乗せてくれる人なのだろうか。
「本日はよろしくお願いいたします。」
「…っよろしく、お願いします。」
そうらしい。魔法を掛けられて引っ張りあげられる。せめて一言言って欲しかったと思う。急に高くなった視界に、心臓が痛い。
「すみません、人を乗せたことがあまり無いので、ご不便な点が多くあるかもしれません。御容赦ください。」
変に固まってしまった私に気付いたのか、魔法騎士様が慌てて魔法を解く。荷物と同じ要領で使ったのだろう。戻ってきた自重に、ホッと息を吐く。
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
「英雄様を乗せられるのは名誉な事です。マリー様が落ちないよう、精一杯努めさせていただきます。」
「…よろしくお願いします。」
にこやかに笑うその人の真意は分からなかったけれど、多分私を途中で落としたりはしないようだ。パレード中、後ろに気を張らなくてもいいというのはありがたい。注意すべき箇所は少ない方がいい。腰に下げた杖に手をあてる。
「動きます。」
「…はい。」
あと少しだけ、頑張ろう。
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