ゲスな殿下に婚約破棄だと叫びましたが捕まりました

拓海のり

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 目が覚めると知らない部屋に寝かされていた。
 広いベッドの周りに薄いカーテンが何重にも張り巡らされている。
 ここは何処だろう。知らない部屋だ。

 寝ている間に前世の記憶を思い出した。前世、私は交通事故で死んだ。長い夢のようで、もう名前も歳も思い出せない。

 私はこの世界に侯爵家の令嬢アデラとして転生した。十歳の時、先ほどのぴらぴらの不機嫌男オドヴァル王太子と婚約した。アデラはダークブロンドの髪とブルーグレーの瞳の大人しい少女だった。
 アデラが望んで、私は前世のはねっ返りな性格を取り戻したようだ。

 私は王都の貴族学校に通っていて、オドヴァル殿下は二歳年上だ。私が入学した時にはもう恋人がいた。子爵家のご令嬢でエリカという可愛いピンクの髪の女だ。
 取り巻きもぞろぞろと引き連れて、皆でエリカを愛でているらしい。

 私の立ち位置は悪役令嬢みたいだが、断罪の前に毒を盛られるとか、何なの。


 この国の王侯貴族は側妃も妾も許されている。
 跡継ぎの問題があるし、生まれた子供を他国の王侯貴族と婚姻させて、関係を強化したり、内情を探らせたりする為だ。

 だがこの大陸の王族貴族は殆んど血縁関係で繋がっている。昨今はそれの弊害が出て、他国の王位継承権を主張して王位を簒奪しようとする国が現れた。
 それでこの国の王太子は国内の貴族令嬢と婚姻することが決められている。
 王子は外にも三人いるので他国の姫と結ばれる方もいるだろう。

 オドヴァル殿下はエリカという恋人以外にも、女を取っ替え引っ替えする浮気な男で、令嬢同士のつばぜり合いはしょっちゅうで、アデラも何度も巻き込まれて嫌な思いをした。

 王妃教育で追い回され、学校では学年も離れているし、オドヴァル殿下にはろくに会ったこともない。月に一度、王宮でのお茶会で会うだけだがいつも機嫌が悪くてアデラは嫌われているのだと悲しかったようだ。

 前世を思い出す前の話である。

 思い出してみれば、年下の婚約者に如何な王太子といえど、こんなにツンケン蔑ろにする必要もあるまいに、そのやりように腹が立つばかりだ。


  * * *


 部屋の扉を開けて誰かが入って来た。天蓋のあるベッドに寝かされていて、幾重にも薄いカーテンが降りて誰が入って来たか見えない。
 付き添っていた栗色の髪の侍女が下がって、その人物を迎え入れた。

「アデラ、目を覚ましたか」
 侍女が天蓋のカーテンを持ち上げるとオドヴァル殿下が現れた。

 何しに来たんだろうコイツは、まだ死んでいないか見に来たのか。
 私、こんな奴と結婚するのイヤなんだけど。ここどこかしら、侯爵邸じゃないからまだ王宮に居るのかしら。さっさと安全な所に帰りたい。

 起き上がろうとしたらクラッときた。
「お前は三日間寝ていた」
「まあ、そうなのですか……」
 やはりあれは毒だったのだろうか。この男が一番怪しいのだが、まだ私は生きているし違うのだろうか。

 オドヴァル殿下がベッドの端に座った。
「へ……?」
 侍女の差し出すコップを受け取って「水だ」と、間の抜けた顔で見ている私の身体を抱き寄せてキスをする。

(ちょっと待って! そんなコトは、したことがない!)
 舌が入って水が流し込まれた。
「んんくっ……、んなっ、何をするんですかっ!」
 思わず突飛ばそうとした。

 殿下が離れて、水が寝間着やシーツに零れると、すぐに侍女がリネンでササッと拭いた。
「よく零す奴だ」と文句を言いつつ、もう一度唇が近付いて来る。ジタバタしたけれど抵抗にもならない。顎を押さえて水を流し込まれた。
「んぐ、んぐっ……」
 いやいや飲み込むと何度か水を流し込まれて、ついでに舌の絡む濃厚なキスをされた。

「んんんーーーっ!」
 ジタバタして睨みつけるとニヤリと笑ってやっと離してくれる。
「何で口移しに飲ませるんですかっ!」
 温くて唾液が絡んで不味い。睨むと嬉しそうに笑う。何なんだコイツ。頭でも打ったのか。
 大体今まで、こいつとまともに接触したことあったっけ。

「変わったな、アデラ。その方がずっと良い」
「分かりました、今すぐ婚約破棄しましょう、殿下」
「分かった。すぐに結婚しよう」
「意味が分かりません」

 三日も寝ていた所為か力が出ないが、とにかくここは危険だから逃げたい。起き上がると身体が少し寒い。私はデイドレスを着ていた筈だが。

「何でこんなものを着ているの!?」
 細い肩ひもだけで肩がむき出しの薄いナイトウェア一枚しか着ていない。この国は今の季節は寒い。外に出ればこんな薄物一枚では耐えられない、凍え死ぬ。

 侍女がサッと暖かそうな大判のストールを殿下に差し出す。彼は悠々とそれを受け取って勿体ぶって私に着せ掛けた。
 これはカシミヤだろうか、とても軽くて暖かい。しかしさっさと着せてくれればいいのに腹が立つ。ストールに当たっても仕方が無いので黙って包った。

 婚約者とはいえ未婚の令嬢がこんなシュミーズみたいなナイトウェアだけで男性の前にいるなんて、何てはしたない真似をさせるのか。

「お前の着替えは全部私がした。お前の身体を誰にも見せたくないからな」
「えええーーー!! 何で! エッチ! スケベ!!」
「なあ、アデラ。お前はなかなか良い身体をしていたのだな。婚約した時はまだ幼くて、前も後ろも見分けは付かなかったが」
 ニヤリといやらしい笑いを浮かべてオドヴァル殿下が言う。何と失礼なことを言う王子だ。婚約した時って私は十歳だったのに。

「知らなかったとはいえ、もう少しで婚約破棄する所だったぞ。よかったな」
「構いません、今からでも婚約破棄しましょう」
「無理だな。お前はもう私のものだ」
「何で! 私はあなたみたいな浮気者はイヤよ!」
「お前が私を喜ばせてくれればどうという事は無い。浮気せぬようにせいぜい頑張るのだな」
「な、な、なっ、何を、頑張れと!!」
「もちろんその身体を使って私を喜ばせ、私が飽きないよう性技を磨き、日々愛を注ぎ、色っぽい身体を保ち──」
「いい加減にしてっ!」
 引っ叩こうとした手を掴まえて引き寄せる。
「私にすぐに飽きられて捨てられたいのか」
 ニヤニヤとゲスな顔で言うな。すぐにでも婚約破棄されそうな感じだったのに、どうしてこうなった。

 ぶちゅと音がしそうな程濃厚なキスをぶちかまされる。キスをしている内に身体が熱くなってきた。
「んん……、あんっ……」
(いや、何でこんなになるの?)
「いい感度だ。お前の身体のココに淫紋を刻んだのだ」
 殿下が私を抱いて下腹を撫でる。殆んど恥丘の上だ。私の陰毛は薄くて恥ずかしいほどなのに見られたのだ。恥ずかしくて身悶えしたがまだ早かった。

「心配するな。すべて処理してやったから、もう何も生えていないぞ。他の男が触っても反応しないから私専用だ、ふっふっふ……」
 そんな、私こいつに弄ばれるだけの人生なの?


 殿下はナイトウェアの細い肩ひもを肩からハラリと落とし、胸元に指を入れてナイトウェアをずるりと降ろす。プルンとふたつのたわわな乳房が転び出た。
「きゃあぁっ!」
「見事な乳房だ。これをお前は隠し持っていたのだな」
 そう言って両方の手で掴み、揉みしだいた。掛けていたストールが背中を滑って落ちる。

 オドヴァル殿下やその取り巻きがツンケンするから、私はいつも項垂れて俯いていた。美しい太陽のような婚約者は、私には眩いばかりだった。

 そんな私の思いも他所に、殿下は好き放題に胸を揉み乳首を指で摘まんで責める。
「このぷりぷりの肌、素晴らしい弾力、桜色の可愛い乳首。感度も良い、私が見つけてやったのだ」
「あっ、いやああぁ……んんっ」
 見つけて欲しくなかった。こんな事をされてイヤなのに、こんな男は嫌いなのに、身体が勝手に感じて下半身に熱が集まる。

 殿下はナイトウェアの中に手を入れて、私の恥丘に刻まれた淫紋をいやらしい動きで撫で擦った。
(そこを触ってはイヤ、ダメ、ヘンになる!)
 殿下の手に身体を捩らせる。身体が熱くなって仰け反ってしまう。
「ななな……いやあぁ、あああ……ん」
 指が恥丘をさわさわと撫でてその奥の割れ目に向かう。ああ、そんな所を触らないで、そこはもう先ほどからの彼の悪戯で蕩けている。

「何だアデラ、こんなに濡らして、恥ずかしい奴め」
 長い指が割れ目の内部に侵入する。両足を閉じようと思うのに、殿下の手で太股を押し開かれてあっさり明け渡してしまう。

「恥ずかしい格好だな、アデラ。そんなに欲しいか、淫乱な奴め」
「ああぁん……、いやぁ……んんっ……はうっ」
 イヤと思っても身体は殿下の指に反応して腰が揺れる。快感の波が押し寄せて、頭の中が痺れて来る。身体から力が抜けて私は殿下にしがみ付き、胸を押し付け足を開いて受け入れている。

(ああ……ダメ、もっと弄って。もっと……)
 割れ目の上の敏感な突起を親指で弄びながら長い指が内部を蹂躙する。ぬちゅ、ぐちゅと水音がする。
「くっ、あっ……やっ、いやあぁ、……はうんんっ……」
「そらそら、堪らないだろう、もっと可愛く鳴けばもっと可愛がってやろう」
(このくそゲスが!)
 そう思っても私の身体は言う事を聞かない。どんどん煽られて恥ずかしい痴態を晒してしまう。殿下の思い通りになるのが悔しい。


「オドヴァル殿下、アデラ様のお食事を持ってまいりました」
 やがて侍女が私の食事を持ってきて、彼はやっと私の身体への悪戯を止めた。私は中途半端に煽られたまま放り出された。
「そうか」
 殿下は知らぬ顔で侍女の方に行く。栗色の髪の侍女が入って来る。

「こちらをどうぞ」
 侍女が手拭きを持ち、水差しから湯を入れて殿下にボウルを差し出す。殿下は手を洗い手拭きで悠々と手を拭うと、私を捕まえて散々に嬲られたソコを手拭きで拭う。そして匂いを嗅いでニヤリと笑った。
 私の顔がボッと発熱したように染まる。

 何をしていたか侍女にすっかりバレていて、恥ずかしくていたたまれない。何よりどうしてくれるんだこの身体を──。
 殿下に背中を向けると侍女が手早く乱れた姿を直してストールを掛けてくれる。私は恥ずかしさと怒りに体が震えた。

 侍女は私の背中にクッションをたくさん宛がって、ベッドの上に食事用の小さなテーブルを置いた。深皿にオートミールと小さく切った果物が出された。

 オドヴァル殿下は腕を組んで私が食べるのをじっと見てから出て行った。
 食事には毒は入ってないようだ。
 食べた後は眠くなってすぐに眠ってしまった。これでは逃げ出せもしない。


 私は侯爵家に迎えに来てくれるよう手紙を出したが、お父様は使いを寄越してしばらく王宮に留まるようにという。

 夜になると殿下が着て淫紋の具合を見るといって好きなだけ触っていく。触って煽って私を陥落させて放り出す。
「嫌です、いや。アンタなんか大嫌い」
「お前に好かれてもな、どうせ政略結婚だし。まあ具合は良いようだから孕ませることぐらいは出来るだろう」
 とても酷い言いようだ。記憶を思い出す前の私だったらボロボロと泣いていただろう。睨みつけると殿下は相変わらずニヤリとゲスな笑いをして出て行った。

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