ハニードロップ

白川ゆい

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Chapter.7

過去2

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 イジメがあったのは高校2年生の時だ。それまで普通にしていたクラスの中心グループの女子たちに聞こえるように悪口を言われたのが始まり。
 ブスのくせに、調子に乗ってる、地味、そのくせ男に媚びてる。
 ああ、私ってブスなんだと思った。それまで特別可愛いとは思ってなかったし、特別モテるわけでもなかったから、『普通』だと思っていた。でもその『普通』は、悪口によって簡単に覆された。自分はブスだ、自分は地味だ、心の中に降り積もっていった悪口のせいで、そうとしか思えなくなった。
 でもそれ以外の友達は普通に接してくれたし、あまり気にしないようにしていた。長い人生、関わる人全員に好かれるなんて無理な話。嫌われることもある。
 私が学校を休んだりしなかったことが気に食わなかったのか、イジメはエスカレートした。休み時間に呼び出されて突き飛ばされる、蹴られる、ゴミをかけられる。嫌だったけど、辛かったけど、意地でも学校は休まなかった。お母さんに心配をかけたくなかったから。
 そしてある日、空き教室に連れ込まれて無理やり制服を脱がされた。下着姿になった私を撮影する無神経な携帯電話のシャッター音。必死で隠そうとしても3人がかりで押さえつけられたら抵抗できなかった。
 それからは卒業するまで携帯電話の画面を見てヒソヒソするあの子たちに怯えた。他の人に見せないで、そう願いながら。
 それがまさか、卒業して10年経った今、全世界の人が見られるインターネットに流されてしまうなんて。



「……うん、これ載せた奴まず特定したい。それから削除させる。まあ、拡散されてるから全部は消えないだろうけど」

 目を開けたらベッドに横たわっていた。目がほとんど開かない。どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。ああ、明日も仕事なのに目どうしよう。
 博也くんはベッドの近くの椅子に座って電話しているようだ。私が起き上がるとそれに気付いて「また後で電話する」と言って電話を切った。

「奈子ちゃん、まだ夜中だから寝てな?」
「横にいて、ギュッてしててほしい……」
「うん、もちろんいいよ」

 博也くんは私を抱き締めて、一緒に横になった。博也くんの胸に顔を埋めると安心する。
 ああ、大好きなのに。何で邪魔するのかなあ。大好きな人と一緒にいたいって、思ってるだけなのに。
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