三度目の恋

白川ゆい

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番外編

抱きながら電話に出させる

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 ヨリは翔のお店で働いているから、基本的に土日は仕事だ。もう大人だから休みが合わないからっていじけたりしないよ、俺は。

「拗ね方が分かりやすい」

 頬を膨らませた俺を見て、ヨリは盛大に顔をしかめた後、我慢できなかったのかぷっと噴き出した。そしてアハハと声を上げて笑う。その笑顔にドキッとしてムラムラしてしまうのは男なんだから許してほしい。
 ソファーに座る俺を後ろから覗き込んでいたヨリの頬を撫で、素早く唇を奪う。ヨリは目を瞬かせて、ふっと笑った。

「私も一緒に過ごしたいよ」
「今日は珍しく素直だね」
「まあね」
「何かあった?」
「ん?うん。今日休みだから」

 え?固まる俺を置いて、ヨリは鼻唄を歌いながら洗濯物を干しに行ってしまう。今日は土曜日。絶対に仕事だと思っていたのに。俺はスキップをする勢いでベランダへ走った。

「どこか出掛ける?」
「いいよー」
「それとも家でゆっくり?」
「立花の好きなように」

 何となく温度差を感じるけれど、これが俺たちの通常運転だ。ヨリもクールなフリを装って鼻唄を歌っている、気分は上々のようだ。

「じゃあ、さ」

 洗濯物を干し終えて部屋に入ってきたヨリの腕を掴んだ。

「今日はずっとエッチしてよう」
「え゛」
「ヨリが言ったんだよ?俺の好きなようにって」
「い、言ったけど、」
「じゃあいいよね?」
「う、ぎゃあああ」

 そんなこんなでベッドに引きずり込んだまではいい。いやいや言いながらも俺が触れるとすぐに蕩けた顔になるヨリも最高に可愛い。でも。

「も、もしもし!」

 セックスの途中で電話がかかってきて出るなんて酷くない?ヨリは翔のことが相当怖いのか、電話がかかってくると俺のことを放ったらかしにして電話に出てしまう。翔も翔だよ。今日はヨリは休みなのに。だからちょっとくらい悪戯しても罰は当たらないと思うんだけどどうだろう。

「うん、うん……うん、そう、あのね、倉庫に……っ」

 ヨリに覆い被さったままの体勢で、固く反応している自身をヨリの中心に擦りつけてみた。ヨリは信じられない!と電話中でなければ確実に言っていただろう、そんな顔で俺を見上げた。でも今日の俺は負けないのだ。
 そのまま首筋、鎖骨、胸に舌を這わせていく。ヨリは俺の胸を押す。いつもならヨリの嫌がることはしたくないと思うけれど、今日の俺は少し怒っている。ヨリの手を握ってシーツに縫い付けた。ヨリは俺の様子がいつもと違うことに気付いたらしく、動きを止めて俺の顔をじっと見てきた。俺は安心させるように微笑み、そのまま乳首を口に含んだ。

「ふっ、ん……」

 甘い刺激に、ヨリの口から声が洩れる。でも手は俺に押さえられているしどうにもできない。ヨリは唇を噛んで俺を睨み付けてきた。でも顔が真っ赤だから全然怖くないんだよね。むしろそそられる。

「ん……うん、うん……えっ、ん、平気」

 ヨリに恥ずかしい思いをさせたいとか、そんな意地悪な気持ちからしているんじゃない。ただ、ちょっと拗ねてるだけ。俺が子どもなんだ。分かってるけど。たまにしかない二人の休み、ヨリを独り占めしたいって思う俺を許して。

「ヨリ、ごめん、好きだよ」

 電話を当てていないほうの耳にわざと息を吹きかけるように囁く。ヨリはビクンと体を跳ねさせた。手を離すと、自由になった手で迷わず口を押える。だから俺はヨリの脚を大きく開き、下着を避けてそこに熱くなった自身を押し付けた。ヨリは当然目を見開いて抵抗する。でも抵抗されればされるほど。どうしてもやめたくないって思ってしまう。俺は手を伸ばしてくるヨリの手をあえて優しく掴んで、腰を進めた。

「はっ、んんんっ」

 必死で声を我慢しているヨリが可愛い。きっと翔のことだから俺たちが何をしているかなんて分かっているのだろう。でも、いいや。ヨリは俺の彼女なんだから。
 ようやく電話を切ったヨリが文句を言う前に唇を塞いだ。一ミリも隙間がないように、ひたすらヨリの甘い舌を貪る。はじめは反抗的だったヨリも、しつこく追いかけているうちにおずおずと舌を絡めてくる。猫のように気まぐれで、クールに突き放すかと思えば俺がドキッとするような言葉を簡単に言う。そして結局、ヨリも俺のことが大好きで俺に触れられたいと望んでいる。ね、そうだよね?

「ば、か」
「ん、ごめん。ヨリ、俺だけ見ててよ」

 真っ赤な顔で俺の首に手を回してくるヨリの体を揺さぶって、熱い息を吐く。ぎゅっと抱き締めると、ヨリの肌がふるりと震える。俺はヨリの肩に甘く歯を立てた。

「ごめん、電話」
「……ん」
「これからはなるべく出ないようにするから」

 ほら、簡単に許してしまう。ヨリへの愛しさが止まらなくて、目を瞑った。それでもヨリの姿が瞼の裏に映る。五感全部をヨリで満たされて、たまらなく幸せな気持ちになった。

「好きだよ」
「うん……」

 幸せそうに微笑むヨリの唇に一つキスを落として、俺は甘い感覚に身を委ねた。
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