剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん

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第4章~魔王討伐~

第202話 奇跡の絶望

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「クロウ様はここにいますか?」

「これは勇者様、もうお怪我は大丈夫なのですか?」

クロウがいると言われる場所に行くと治癒師の人が誰かを治療していてリュークの心配をしてくれる。

「はい僕は大丈夫です、それよりもクロウ様の容態を聞きたいのですが」

「クロウ様の…状態ですか?」

リュークの問いに治癒師はどこか申し訳なさそうにしながらコチラリュークに問い直す、まるで見て欲しくないかの様に。

「はい、クロウ様のおかげで僕は魔王を倒す事が出来ました、そのお礼がしたいんです」

リューク1人では魔王ミロスには勝つ事はできなかった、クロウがいたからこそ魔王ミロスに勝つ事ができたのだ。

「…分かりました、ですがお話をする事はできません、一方的に話すだけになりますがよろしいですか?」

「?…どう言う事ですか?」

「…見れば分かります」

そう言って治癒師の人はその場から離れる、リュークはやっとクロウにお礼が言えると思って少し喜んでいたが、その気持ちもすぐに吹き飛んでしまった。

「な…何ですか…これ?」

「…あれがクロウ様です」

治癒師の言うあれ、と言うのは包帯でぐるぐる巻きにされたミイラ男のことだった。
しかも皆が想像するミイラ男のではなく、全身血だらけで、目は充血して口も歯が常に見えるぐらい皮膚が裂けてて、生きている事が奇跡の様な感じだった。

「…嘘…ですよね?」

「…嘘を言って何のメリットがあるんですか?」

リュークに嘘を言ったってメリットなんてものはないだろう、と言う事はつまり、そこにいる醜い姿をした人物がクロウなのだろう。

「…そ…そんな…そんなことって…」

「我々も尽力を尽くしましたが、クロウ様のダメージは凄まじく、この状態でもかなりマシになった方なんです」

「………」

治癒師の言う事は本当だ、魔王ミロスの反転の能力、それによりクロウは他の仲間達の数千倍のダメージを何度も何度も負い、そんなボロボロの状態にも関わらず幾千もの魔物達との連戦も続き、本当に生きているのが奇跡の状態だったのだ。

「…それで回復はするんですか?」

「分かりません、我々がずっと治癒魔法をかけてはいますが、それでもあの状態なので…」

おそらく今まで受けてきた蓄積ダメージが治癒魔法を上回り、クロウの身体を徐々に蝕んでいるのだろう。

「僕が見た時はクロウ様はまだ怪我はしていてもここまで酷くはなかった、それなのに今は見るも無惨な姿に…」

「穴が空いている部分は治癒とタオルで止血していますが、包帯を変える時に皮膚とくっついていて例えどんなに破けない様にしても皮膚は剥がれてしまい、この様な姿に…」

だからここまで酷い姿になっていたのだろう、治癒魔法を使っても治らないほどのダメージをクロウは受けていたからこうなってしまったのだ。

「ところで、他の人達はどうしたんですか?」

「他の人達?」

「僕の仲間達ですよ、クロウ様以外もいるんですよね?」

クレイに聞いたのでいる事は分かっているが肝心のどこで治療を受けているのかを知りたかったのだ。

「はい、いますよ、皆様は女性の方なので女性用の部屋で休まれていますよ」

「そうですか…なら安心です」

クロウとリュークは男性だからここにいるが、メイディ達は女性、休む部屋が別々なのだ。
今の日本なら炎上しそうな内容だが、この世界にはそんな馬鹿はいない為誰も気にしない。

「ここは我々に任せてリューク様も休まれてはいかがですか?」

「ここで休んでもいいですか?クロウ様の事が気になってここじゃないと休めないと思うんです」

リュークはクロウのおかげで今こうしてここで生きられている、その命の恩人とも言えるクロウが瀕死の重傷を負っている今先程の場所で寝る事は出来ないだろう。

「…分かりました、隣にベッドを置いておきますのでそちらでお休みください」

「分かりました、態々ありがとうございます」

治癒師も理解してくれたのだろう、おそらく同じ様な事が過去に何度も起きている為、リュークの言動にも柔軟に対応が出来るのだ。

治癒師の人はリュークの為に新しいベッドをクロウの隣に置いてくれた、そこでリュークはクロウが治る事を期待しながら見守り続けた。

———————————————————————
しかし、その日はクロウが治る事はなく、ずっと荒い呼吸をし続けるだけだった。
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