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「君だけを愛してる。どうか私と共に生きていこう。必ずクラリスを幸せにする」

3年前に貴方が私に言ってくれた求愛の言葉。

私は、それを信じて貴方と結婚したのに…。


「はぁー、クラリス。君と結婚して3年も経ったのに、君は未だに子供を授からない。君も分かっていると思うけれど、僕は、このデルバラド公爵家を守って行かなければならないのだ。まさか君が不妊だとは…」

「…グライラス。本当にごめんなさい」

「ああーもう謝らなくて良い。これに黙ってサインをしてくれ!」

そう言って渡された書類は離縁届だった。

「グライラス、これは…」

「私はデルバラド公爵家の次期当主だ。この家を守る為には、世継ぎを授からねばならないのだ。クラリス、君でもそのくらい分かるだろう?」

子供が授からない私は、この家には不要なのだ…。
私は、懸命に涙を堪えながら離縁届にサインをした。

「これで君と私はもう赤の他人だ。悪いが早々に荷物を纏めて出て行ってくれ。しかし私も薄情な男ではない。これからの生活も有るだろう。最後の情けに君の物は全て持っていって構わない」

私は、自分の部屋に戻ると侍女達に荷物を纏める様に頼んだ。

この後、修道院に入り、神に支えても良いけれど、私を愛してくれている家族がそれは許さないかもしれない。
それならば修道院に入るのは、両親が神に召されてからでも遅くない。

子供が授かる事が出来ない私は、次に嫁ぐ事は難しいだろう。
後家としてなら娶ってくれる殿方も居るかしら?

お父様や次期当主となるお兄様に迷惑を掛けず、1人で暮らしていける様に仕事に着いても良いかもしれない。

私がこれからの事を考えている間に、侍女達が全てのドレスと貴金属類を詰めてくれた。
バイロン侯爵家に使いを出して馬車で迎えに来て貰ったが、その馬車だけでは荷物が乗り切らず、デルバラド公爵家の馬車も借りて荷物を運び出した。

これは早々に売ってしまわないと荷物が多すぎる。グライラスは、結婚当初は、毎日の様にドレスや宝石をプレゼントしてくれていた。
「私は、プレゼントより貴方の愛の言葉が欲しいわ。どうか毎日、愛の言葉をプレゼントして下さい」と言ってプレゼント攻撃を止めさせたんだわ。

その愛の言葉も、ここ数ヵ月は聞いていない気がする。
結婚から3年近く経ち、子供が授からない事で私との関係を考え始めていたのだろう。
嫡男としては仕方がないのかも知れない。

私を愛している、幸せにすると言っていたグライラスとの結婚生活は、3年で幕を閉じたのだった。
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