国王陛下、王太子殿下、貴方達が婚約者に選んだ人は偽物ですよ。教えませんけれどね♪

山葵

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父に国王より結婚許可が下り次第、婚姻したいとエルドが告げると「ならば直ぐに伯爵家に連れて行って構わない。此方ではマリーナに余計なお金を使わなくても良くなるからなっ。こんな穀潰しな娘を貰うなんてアルス伯爵の次男は物好きなものだ」と言った。

侯爵令嬢としては異様に少ない荷物を持ち、今まで良くしてくれた使用人達に別れを告げ、私はエルドと共に侯爵家を後にした。

エルドが、父との事をアルス伯爵に伝えると「どれだけマリーナを蔑ろにするのだ!」と2人は怒っていたが、マリーナは今までの扱いから当然の事と思える。

アルス伯爵が申請していた結婚許可が届いたのは、それから3日後。
普通なら1ヶ月~2ヶ月は掛かると言われているのに、王太子が大変な時に良く許可が下りたものだと驚く。
「今は王太子の事で国中が大騒ぎな最中だから、籍だけ先に入れて結婚式は落ち着いたら挙げよう。あぁー今日から僕の奥さんだ」

『妖精王のお陰なの』

『マリーナに早く幸せになって欲しいからって』

『うぅぅ…マリーナが…』

どうやらグリース様が力を使って、陛下に許可証にサインをさせたみたいだ。

私とエルドは婚姻届にサインをすると従者に役所に届けさせる。

「マリーナ。子爵家の手続きなんだけれど、流石にそれまで妖精王には頼めないし、もう少し待っていて欲しい。屋敷の方も、これから2人で探そう。それまではアルス伯爵家に住む事になるけれど良いかな?」

アルス伯爵家は、お義父様とお義兄様とエルドの3人家族。
お義母様は、5年前に病で儚くなってしまっていた。

お義兄様は、来週には修行の旅に出ると言っていたし、エルドも文官として王宮勤めをしながら、アルス伯爵家の執務を手伝っているのだもの。
お義兄様が帰国するまでは、急がなくても良い。



婚姻が無事に済むと、実家のロザリオ侯爵家の領地が災害に見舞われた。
死者は出なかったが、領地建て直しの為には莫大なお金が掛かる。
アイリスが王太子妃となっていれば、王家もロザリオ領の建て直しに惜しまずに協力をしてくれていたかもしれないが、王太子が目覚めていない、宙ぶらりんの婚約者では国税を優先的に掛ける訳にはいかない。
他貴族と同じ金額しか補助はされなかった。

ロザリオ侯爵もイザベルもアイリスも贅沢大好きな馬鹿な者達。
領地の為の貯蓄など殆どしていなかった。
その為、私財を使うしかなかったが、それでも賄えない。
他貴族に頭を下げ、融資を頼んだ。
その中には、アルス伯爵家も入っていた。

「申し訳ない。我がアルス伯爵家は、貴方が馬鹿にされた様に元は子爵家でしたから、ロザリオ侯爵家に融資出来るほど裕福ではない。どうぞお帰りを」

「そ、そこを何とか。あの時の事は謝罪する。マリーナ、お前も生家が没落したら嫌だろう?お前からもアルス伯爵に頼みなさい!」

「私は、ロザリオ侯爵家が没落しても何も思いません。ただ使用人の皆の事が心配にはなりますが。私は、アルス伯爵家に嫁いだ身、お義父様の考えに従います」

「な、なんだとっ!!この親不孝者めがぁー!!」

お父様は、立ち上がると私を目掛けて歩き出そうとした。

しかし避けて通ったはずのテーブルが移動し、膝下に直撃。
足を抱えて椅子に座ろうとすると椅子が移動し、そのままひっくり返った。
その拍子に花瓶が倒れて頭からビショビショになってしまった。

『マリーナを叩こうとしたから、テーブルを移動させた』

『あたしは、椅子を動かしたよ~』

『俺っち、花瓶を落としてやった!』

「3人とも良くやった!」

「ちょっとエルド。あなた達も…」

お父様は、慌てて起き上がると暴言を吐きながら帰って行った。

「これは、マリーナに付いている妖精がしたのか?」

「ええ。マリーナを虐める奴は許さないと」

「マリーナは守られているんだな。マリーナを守る妖精殿、感謝します」

『任せておけ!』

『マリーナ。この人、良い人』

『マリーナ。これから幸せになれる』

「そうね。私、エルドと幸せになるわ」

「僕が必ず幸せにするよ」

本当の家族には恵まれなかったけれど、新しく出来た家族は私を蔑ろになどしない。
私の幸せを願い守ってくれる人達だ。

やっと見つけた、私の居場所。
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