国王陛下、王太子殿下、貴方達が婚約者に選んだ人は偽物ですよ。教えませんけれどね♪

山葵

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婚約パーティーから3ヶ月が過ぎた頃、目覚めない王太子に周囲は諦め掛けていた。

「…ぅ…うぅ……」

呻き声と共に目覚めた王太子。

「で、殿下!?殿下が王太子殿下が目覚めた!!直ぐに陛下にお知らせをっ」

従者の知らせに公務を始めていた国王と王妃は飛んで来た。

「ロバート!!ああ良かった。このまま目覚めないのでは無いかと心配しておったのだ」

国王の声掛けにも反応せずにボゥーとしているロバートに周囲は違和感を覚える。

到着した医師は、直ぐにロバートを診察した。

「…陛下。とても残念ですがロバート殿下は、頭部を激しく強打した為か話す事も言葉を理解する事も出来なくなっている様で御座います」

「そ、それはどういう事だ!?」

「脳の衝撃が激しく、脳内が損傷したものと…」

「な、治す事は出来るんだろうな?ロバートは王家直系の唯一の子なのだ」

「今の医学では難しいかと…。もしかすると妖精王なら治す事も可能かもしれませんが…」

医師の言葉に国王は、直ぐにロザリオ侯爵家に使いを出した。
国王は、アイリスが偽物だとまだ知らないのだ。

国王からの手紙を読み、ロザリオ侯爵は喜んだ。

神は、まだ私達を見捨てなかったのだと…。

「アイリス!ロバート殿下の意識が戻ったそうだ。陛下から火急王宮に来る様にと御達しだ。着替えて直ぐに向かうぞ」

アイリスは、目覚めた王太子に会えるとお気に入りのドレスに着替え、髪を結い、化粧に時間を掛けると両親と王宮に向かった。

「ロザリオ!何をしていた!!火急にと使者を使わせたのに2時間も待たせるとは!?」

苛立つ陛下にひれ伏し謝った。

「それよりもアイリス!直ぐに妖精に頼んで妖精王を呼べ!」

「妖精!?陛下、妖精に頼むとは?」

「そなたにしか見えぬ妖精に頼み、妖精王を呼んで貰うのだ。頼む、妖精に妖精王を………ま、まさか妖精が見えないのか!?」

妖精?とキョトンとしているアイリスに国王は不信感を抱く。

「見え…「見えます、見えます!アイリス。陛下はアイリスが妖精を見えるのを御存じなのだ。隠す必要はない」

言葉を遮ったお父様を見詰め、これは見えないと言っては駄目なヤツなのだとアイリスは悟った。

けれど妖精も見えないのに妖精王を呼び出すなんて出来る訳がない。

「へ、陛下。妖精はとてもデリケートな生き物でして、どこか別の部屋を用意して頂いても宜しいでしょうか?」

「ああ勿論だ。直ぐにロザリオ卿達に部屋を用意させよう」

従者と共に別室に移る時に、ロザリオはロバート殿下の状態をそれとなく聞き出した。

「お父様。陛下は妖精と言っていましたが、どういう事なのですか?」

「どうやらアイリスを妖精に愛されし者と勘違いしている様だ。…そうか、あの茶会は、妖精に愛されし者を探していたのか…」

「妖精に愛されし者?何ですの、それ?」

ロザリオは自分が知る限りの物をアイリスに教えた。

「それって、とても不味いんじゃないですか!?私が妖精に愛されし者でないと分かったら…「王家を誑かした罪に問われ我がロザリオ侯爵家は取り潰しだ。いや取り潰しだけで済めば良いが…」

「そんなぁ~。勝手に向こうが勘違いしただけなのにぃ~」

確認もせずに勝手にアイリスを妖精に愛されし者と判断したのは王家だ。
しかし、王太子の問いに、そうだと答えたのはアイリス。

「アイリス、貴女は妖精が見えるの。そう見えるのよ!ここに居る者は妖精が見えないのだもの貴女が居ると言えば居るのよ。分かるわよねアイリス?」

アイリスは、お母様の言葉に頷くしか出来なかった。

王太子の部屋に戻ると、アイリスは、妖精と妖精王がそこに居る様に演技した。

「妖精王!どうか息子のロバートを治して欲しい。このままでは、我が国の、カイロス家の直系が途絶えてしまう。何としても治してくれ。その為なら、そなたの望みを聞こう」

「えっ!?へ、陛下、ロバート様は、そんなに悪いのですか?見た限りでは変わった所はない様なのですが?」

「脳の損傷が激しく話す事も動く事も出来ない。脳が死んでいるのだ。もう妖精王にしか治す事は出来ない…」

陛下の言葉に呆然とした。
ロザリオ侯爵もアイリスも、そこまで酷いのだと知らなかった。
従者は、医師で治療が出来ない部分を妖精王にと言っていたから、そこまで酷いとは思っていなかったのだ。

なので妖精王でも、それは治せないと言っていると言って誤魔化そうとしていた。

勿論、脳の損傷だって、そう言えば済む。
しかしアイリスは、陛下の言葉に酷く動揺した。
治らなければ、ロバート殿下は廃太子され、アイリスとの婚約も解消。
災害のせいで借金は膨れ上がり、このままではロザリオ侯爵家は没落する。

「う、嘘よ!!ロバート様が廃太子されたら私はどうなるの!?妖精王!!妖精王が治せるなら直ぐに呼んで治させればっ!!陛下、早く捜す様に指示して…「「アイリスっ!!」」

両親の怒鳴り声にアイリスは我に返った。

私、今、なんて言ったかしら?

陛下の顔が見る見る赤くなり、従者に衛兵を呼ぶように言っている。

そ、そうよ。私は妖精に愛されし者だったわ。

「へ、陛下。あの…妖精王が人間は治せないとと言って…「ほう?妖精王が…それで妖精王は、此方に居たかな?」

「そうです、そうです。そこに…「さっきは、こっちだと言っておったが移られたのか?」

あーもう嘘だとバレている。

お父様もお母様も私を睨み付けて衛兵に連れられて行った。

アイリスは、部屋を出る前にロバートを見た。
彼は何も聞こえないのか騒動が起きているのにボゥーとしている。

「あー本当に脳が壊れちゃったのね。だったら一生目覚めなきゃ良かったのに」

アイリスは、連行されながら泣いた。
短い間だったけれど、ロバートと居る時間は楽しかった。
ロバートが婚約者として自分を選んでくれた事が本当に嬉しかった。
ロバートを好きになっていたのだ。
これから彼は、何処か遠くの地で一生幽閉されるのだろう。
何も分からなくなってしまったロバート様には苦痛も不幸だと思う事も無いのだろうけれど…。
どうせ処罰が下されるなら、最後の頼みとしてロバート様の世話係にでもしてくれないだろうか?
駄目元で頼んでみよう。


それから程なくして北の極寒の地に送られたロバート殿下には、貴族令嬢であったと思われる1人の世話係と使用人数人が付けられた。
使用人は、数年で入れ替わったが、世話係はロバート殿下が儚くなるまで世話をし、その後あとを追うように儚くなったという。
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