国王陛下、王太子殿下、貴方達が婚約者に選んだ人は偽物ですよ。教えませんけれどね♪

山葵

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ロバート殿下が病気の為に継承権を放棄し静養されたと聞かされたのは、ロザリオ侯爵の者達が虚偽の罪で捕らえられた後だった。

父と義母は毒杯を賜り、アイリスは何故か辺境の地へ送られたと聞いた。

3人はひっそりと刑に処された。
国王陛下がロバート殿下の事を公にしたくなかったからだろう。

王太子には、国王の従兄弟であるブラングラス公爵の次男フィリップ様が即位された。

「陛下が何としても妖精に愛されし者を捜し出せと命を出した」

「それはロバート殿下を治させる為ですか?」

「勿論、ロバート殿下の事だろう。だが…国王はフィリップ殿下に王位を譲るのを躊躇っている様に見える。マリーナを探し出すのは何か他に…?フィリップ殿下の婚約者にと考えているのか…?」

「もしマリーナが妖精に愛されし者だと分かっても、彼女は僕の妻です」

「………そうだな。マリーナが結婚していると知ればロバート殿下を治せと指示されるだけだろう…しかし、なぜか胸騒ぎがしてならんのだ。マリーナに良くない事が起こりそうな…」

お義父様は、不安そうな顔をする。

『あのねマリーナ、王様が怒っているの!』

『俺っちもメチャクチャ怒っているぞ!!』

「グリース様は何を怒っているの?」

『言って良いのかな~?』

『マリーナの危機だぞ!』

『そうだよね。あのね、この国の王はマリーナを側室にしようとしているんだって』

ミゥの言葉に私は耳を疑った。
国王陛下が私を側室に?

「なっ!それは本当なのか!?陛下がマリーナを側室にすると言っているのか!?」

エルドも驚き、ミゥに確認している。

『王宮にいる妖精に聞いたから間違いないよ~』

『妖精に愛されし者に世継ぎの子を産ませると言っていたんだって~』

『王様も俺っちも激怒!!』

黙って聞いていたお義父様が納得がいったかの様に頷いた。

「陛下は、何としても自分の子、王家直系の子を国王にと考えているのだろう。もしマリーナが妖精に愛されし者だと分かれば、強引にエルドと離縁させ側室として迎え入れるかもしれん。何としても隠さねば…」

今までも外では妖精達との会話も気を付けていたし、周りに妖精が居るだけで自分に力が有る訳でもない。
何かしなければバレる事は無いとマリーナは思っていた。

しかしマリーナがアルス伯爵家にやって来てから、領地では天候に恵まれ農作物は良く育ち、家畜も元気に丸々とし、領地が潤った。

突然のアルス領の変動に気が付いた家臣から国王に報告がされてしまった。

国王は、アルス伯爵家を調べさせ、領地が潤い出したのがエルドが婚姻した辺りからだとの報告に、妻であるマリーナが妖精に愛されし者なのでは?と疑った。

アルス伯爵を呼び出し、マリーナを連れて来る様に告げた。

「国王陛下が私を…な、なぜ…」

「大丈夫!僕が守…『無理だな!』

『無理ね!』

『マリーナ、王様に頼むの』

「な、なんで無理なんだよ!?僕だって…」

『マリーナを連れて行ったら帰さないの~』

『そのまま王宮に閉じ込めるんだって~』

まさか監禁するつもりなのだろうか?
そんな事をしたら、妖精王が怒り、この国が滅びるとは思わないのだろうか?
国王だから、自分は何をしても許されると?
臣下の者は、誰でも自分を愛するとでも思っているのだろうか?

『国王である自分が望めば、この国の者は愛する人をも捨て国王である自分に従うとでも思っているのだろう。あやつは国の為ではなく自分の為にマリーナを欲しておる。愚かな王よ』

「グリース様!」

「よ、妖精王」

エルドが跪こうとすると、グリース様はそれを止めた。

グリース様は妖精から聞いた事でマリーナに手助けが必要だと思うとやって来てくれる。
今回も、そう判断したのだろう。

エルドが守ると言っても、何人もいる衛兵相手に勝てるわけもなく、逆に王に背いたとして捕まり処罰されてしまう。
国王としては、その方がマリーナを娶るのに都合が良いのだろうが。

今回はグリース様に力を貸して貰うしか無い。

「グリース様。どうかお力をお貸し下さい」

『やっとマリーナが、余を頼ったな。余の愛し子の頼み、しかと聞き受けよう』
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