お姉様と私の婚約者が駆け落ちしたので、お姉様の代わりに辺境伯に嫁ぎます。

山葵

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ある晴れた日の朝、何やら部屋の外が騒がしい。

「だ、旦那様ぁー!!た、大変で御座いますー!!カトリーヌお嬢様が、カトリーヌお嬢様が駆け落ちされましたぁー!!!」

カトリーヌ付きの侍女リンが青い顔して叫びながら、居間で新聞を読み、寛いでいるお父様に報告に走っていた。

「えっ!?今、お姉様が駆け落ちしたと聞こえた様な!?」

私は慌てて侍女のアンナに着替えを手伝って貰い、リビングへと急いだ。

部屋に入ると、お父様は、お姉様からの手紙を握り絞め、手が震え、顔を赤くして怒っている。

ソファーに座るお母様は、侍女長に支えられて泣き崩れていた。

「お父様。お姉様が駆け落ちしたと聞こえてきた気がしたのですが、私の聞き間違いでしょうか?もし本当ならば、なぜ駆け落ちなど…まさかザイザル辺境伯様に嫁ぐのが嫌で…お姉様が駆け落ちしたお相手の方は誰なのですか?」

「……アルベルトだ」

お父様は躊躇いながら小さな声で誰かの名前を言ったが聞き取れなかった。

「あの、申し訳ありません。よく聞き取れなくて、もう1度お願いしても…」

「アルベルトだっ!!!」

アルベルト…まさか私の婚約者のアルベルト・ガルモンじゃありませんよね?

けれど私の知る限り、アルベルトという名は、私の婚約者のアルベルトしか知らない。

まさか…いえ、私が知らないだけで、アルベルトという名の別の殿方とお姉様は一緒に出ていかれたのよ。

「ア、アルベルト?」

「そうだ。アルベルト・ガルモンお前の婚約者だ。あの男は、お前の婚約者だというのに…」

アルベルト・ガルモン。
私の初恋の人で…私の婚約者…。

お父様の言葉が段々と聞こえなくなっていく。
私は目の前が真っ暗になり倒れてしまった。


気が付けば、自室のベットに寝ていた。

「ああ、アイリスお嬢様。気が付かれたのですね。急に倒れてしまわれたので、旦那様も奥様もとても心配しておりました。喉が渇きましたよね。今、お水をお持ち致しますね」

私付きの侍女のアンナの変わらぬ声に、私は悪い夢を見ていたのかもしれないと身体を起こす。

「ねぇアンナ。私ね、凄く可笑しな夢を見たのよ。お姉様と私の婚約者のアルベルトが駆け落ちをしてしまう夢なの。ふふ、可笑しいわよね?」

「ア、アイリスお嬢様…」

アンナは顔面蒼白になり狼狽えている。

あぁやはり夢では無かった…。
お嬢様とアルベルトは本当に駆け落ちしてしまったのだ…。

アルベルトは、私を捨てお姉様を選んだのだ。

アイリスは、ベッドの中で泣いた。
溢れ出る涙は止める事は出来なかった。

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