お姉様と私の婚約者が駆け落ちしたので、お姉様の代わりに辺境伯に嫁ぎます。

山葵

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ジル様は、国王に結婚の許可を貰うために、直ぐに婚姻許可証を手続きすると側近のロイに王宮へと届ける様に指示を出した。

ロイとガイルは、その報告にホッとする。

「やっと、やっとかぁー」

「ああ、やっとジルにも…良かった、本当に良かった。アイリス様を迎えに行った時に、今までのご令嬢とは違うと思ったんだ。ガイルにも、もしかするともしかするかもよ!と言っていたのが当たったよぉー…うぅ、良かったよぉ…」

涙ぐむロイにジル様は驚いていた。

皆にそこまで心配させていたとは思ってもいなかった様だ。

「俺もアイリスに出逢えて本当に良かったと思っている」と言っていた。

貴族は、国王からの許可を得ないと婚姻する事は出来ない。

けれどジル様は、国王からも早く結婚する様に言われていた為、許可が下りない事はないだろうと式に向けて準備を始めると言う。

アイリスは、モイス伯爵家に手紙を書いた。
ジル様と結婚する事、結婚式には来て欲しい事。そしてジルフィード・ザイザルの婚約者になれて幸せだと書いた。

「アンナ、これを出して貰えるかしら?」

近くに居る筈なのに返事がない?

振り返るとアンナが声を出さずに泣いていた。

「ど、どうしたの?具合でも悪いの?」

「…ぢ、ぢがいまずぅ…おじょうざまが…げ、げごんざれるのが…ぎ、ぎまって…うれじぐでぇー」

「もうアンナ、泣きすぎよ。でも、ありがとう。貴女が一緒に付いて来てくれて本当に心強かったわ。これからも宜しくね」

「も、もっだいないおごどばでずぅー」

そこに扉がノックされた。

アンナは、泣きながらも対応する。

扉が開けられ、中に入ってきたジル様は、アンナの姿に驚いている。

「アンナ…どうしたんだ?」

「アンナは私達の結婚に喜んで泣いているのよ」

「そ、そうか。具合が悪いのかと思ってしまった。具合が悪くないなら良かったが、しかしロイといい、アンナといい…」

「ジル様。何かご用事で?」

「ああ、そうだった。実はモイス伯爵から手紙が届いた」

ジル様は、私に読む様にと渡す。

「お姉様とアルベルトが戻って来たのね…。2人共、まさか除籍になっているとは思わなかったのでしょうね。両家共に屋敷に入れず、諦めて去って行ったと。まぁ当然ですね…今更お金が無くなったから許して貰おうだなんて考えが甘いわ!こんな大それた事をしておいて許されると思うなんて、馬鹿なの!?」

「アイリスは、そのー元婚約者の事は、もう良いのか?」

「良いか?なら、もう良いわよ。許すのか?なら絶対に許さないわよ。ジル様は、私とアルベルトが元に戻った方が良いのかしら?私が、アルベルトの元に戻ったら、お姉様と婚約すると?」

怒りのあまり、ジル様に意地悪を言ってしまう。

「そ、そんな事あるわけないだろう!?」

「ならば、もうお姉様とアルベルトの話は終わりにしましょう」

「分かった。しかしお金に困った2人がアイリスに接触してくるのではないだろうか?モイス伯爵も、その事を心配している」

「わざわざ辺境の地まで私に会いに来るかしら?」

「君には悪いが、カトリーヌ嬢は、お金の為ならば来そうでならん。お金の無心だけなら良いが今の君の姿を見て、その座は自分が居るはすだったと言って来ないと良いが…」

プライドを捨てた姉ならば、お金の無心だけでなく美丈夫なジル様を見て、ジル様の妻の座を返せ!と言って来るかもしれない。
私が拒絶すれば、危害を加える可能性もあるかも知れない。

「そうね…気を付けるわ」

ジル様も私の警備を増やすと言っていた。
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