お姉様と私の婚約者が駆け落ちしたので、お姉様の代わりに辺境伯に嫁ぎます。

山葵

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9 カトリーヌ視点

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私カトリーヌは、王都から辻馬車を乗り継いで、やっとザイザル辺境伯領に辿り着いた。

「はぁー。…疲れた。何で私がこんな目に合わないと行けないのよ。それもこれもアルベルトのせいよっ!」

ザイザル辺境伯領地は、王都からは遠いし田舎で何も無い。
こんな所に嫁がなくて本当に良かったと思いながらも、嫁いでいれば生家から除籍される事なく、今でも貴族のままで贅沢が出来たのかもしれないとも思う。
結婚してからザイザル辺境伯に頼んで私だけ王都のタウンハウスに住まわせて貰えば良かったのかもと少し後悔した。

ザイザル辺境伯との結婚が嫌で妹の婚約者だったアルベルトと駆け落ちしたのが失敗だった。

彼の事は別に好きでも何でもなかった。
ただザイザル辺境伯との結婚が嫌で私を好いてくれていたアルベルトを選んだだけ。

アイリスが私に言った。ザイザル領は、緑が多く?
それって凄く田舎って事じゃない。
それに12歳も歳上なのに、未だに婚約者も居ないなんて、顔が不細工とか、性格が悪いとか、きっと問題物件に違いない。
ならばアイリスが私の代わりにザイザル辺境伯と結婚すれば良いのだ。
アルベルトは、私に気があるのだし私が貰ってあげるわ。
これで問題ないでしょう?

ザイザル辺境伯からの迎えが来る前に屋敷を出れば良い。
ある程度したら、屋敷に戻ればお父様もお母様も、ガルモン子爵家も、愛し合う2人を引き離す事は出来ないと結婚を許すわ。
まぁ結婚相手が子爵家子息なのは頂けないが、ザイザル辺境伯よりはマシね。

しかしカトリーヌ達の考えは甘かった。
2人は庶民の生活にも慣れず、働く事もしたくない。

食事だって3食食べたいし、ドレスは流石に着ないけれど、商家の娘が着る様なワンピース位は着ても良いでしょう!?

2人で持って出たお金や貴金属類は、3ヶ月で底を着いた。
お金が残り少なくなり、私とアルベルトは顔を見れば喧嘩した。

最後には必ず、お互いに「こんな筈ではなかった…」と言っていた。

もう限界とアルベルトと別れ、予定よりも早くモイス伯爵家に戻れば門が閉ざされ入る事が出来ない。

「ちょっと門を開けて頂戴。カトリーヌが戻ったとお父様に伝えて来てよ!」

お父様もお母様も、私が戻った事に泣いて喜ぶに違いない。
私も素直に謝って、ザイザル辺境伯に嫁ぐと言おう。

「旦那様より伝言で御座います。カトリーヌは、アルベルトと駆け落ち後にモイス伯爵家から除籍した。2度とモイス伯爵家に近付く事はならん!との事で御座います」

執事は、そう告げると屋敷に戻って行ってしまった。

除籍?目の前が真っ暗になる。
そんなに悪い事をしたの?
何で?謝るから許してよ!!
ザイザル辺境伯にも嫌がらずに嫁ぐからっ!

私は門の前で泣き叫んだ!
どんなに叫んでも、門が開く事はなかった。

私はたった1度の過ちで親に捨てられたのだ…。

これからどうしようかと街の中をトボトボと歩いていると、学園で一緒だった男爵令嬢に声を掛けられる。

彼女は私を見ると嘲笑い「まあ随分と堕ちたものね。学園では人を散々馬鹿にしていたのに、今の貴女は、ただの平民になられたとか?妹の婚約者と駆け落ちなんてしたら当然よね。貴女の代わりにザイザル辺境伯の元に行かれたアイリス様は結婚が決まったと聞いたわ」

何で男爵令嬢に伯爵令嬢の私が嫌味を言われなければならないの!?

それよりアイリスがザイザル辺境伯と結婚?
きっと辺境伯は、結婚出来るなら誰でも良かったのね。
愛の無い結婚をするなんて、本当にアイリスは可哀想♪

そうだわ!アイリスに言って私をモイス家に戻す様にお父様に頼んで貰いましょう。
あの子は、人が良い子だから、私が頼めば動いてくれるわ。

ザイザル領までの行きの馬車代くらいは有るから、帰りは辺境伯の馬車で送って貰えば良いわね。
私は急いでザイザル領方面に行く辻馬車に乗り込んだ。

3回乗り継ぎ、やっとザイザル領に着く。

本当に田舎で何も無い。
私の様な令嬢が住む所ではないわね。
アイリスがお似合いの場所だわ。

馬車を降り、ザイザル辺境伯の屋敷まで歩くしかないか…と思って歩き始めると、1台の豪華な馬車が店の前で停まるのが見えた。

宝石店に入ろうとする女性を見れば、アイリスではないか!

「ア、アイリス!?ああ、やっぱりアイリスだわ!!」

アイリスは私を見て驚き狼狽えている。
隣に居る男性がアイリスを庇う様に寄り添って居た。

この美丈夫な男性は誰?
アイリスの護衛なのかしら?

誰かと尋ねれば「私はジルフィード・ザイザルだ」と名乗った。

嘘でしょう!?

ジルフィードに見惚れていると彼はアイリスを連れて馬車に乗り込んでしまった。

慌ててアイリスを呼び止め様とすると側近の男に取り押さえられる。
彼は、私にお金を渡すと「王都に戻り、2度とザイザル領に来られません様に!」と告げ、私を出発する辻馬車に乗せた。

ちょっと待って!!
何なのあの美丈夫な人は。
あの人が、ザイザル辺境伯?
嘘でしょう!?

私は、辻馬車に揺られながら考えた。

本当なら、私がジルフィードと結婚するはずだったのだ。
田舎暮らしは嫌だけれど、あんなに格好いいジルフィードならば結婚しても良いわ。
ジルフィードは、アイリスには勿体無い。
彼の隣に立つのは私の方が相応しいわ!
ジルフィードも綺麗な私を見れば、アイリスよりも私の方を選ぶはず。
こうしてはいられないわ、ザイザル辺境地に戻らないとっ!

乗り継ぎ場所に着くと、私はザイザル領に向かう辻馬車に飛び乗った。
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