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10.元カノ
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ヤバイ。これ、本格的にヤバイんじゃないか?
あの後、気絶するようにひと眠りした後、何事もなかったかのように高見と別れた。そして自分のベッドに腰を下ろして頭を抱えている、今。
ゆるゆると線を越えてきている気がする。キスが上手くなりたいからと高見とキスの練習をするようになり、AVを観てムラッとしたからといってあんな……。
あんなのまるで挿入なしのセックスみたいじゃないかっ!!
「どうしたんだ? 何を間違った?」
どう考えても自分が引き金を引いてきたようにしか思えない。
チロリン チロリン
【明けましておめでとう。昨日はありがとう。友達すっかり良くなったよ】
【おー、それは良かった】
【時間ある時で良いから少し会えないかな】
【いいよ。明後日、仕事休みだから明後日でいい?】
【うん。じゃあ14時にいつものところで】
【わかった】
あの日以来、高見と一緒の現場になることもなく、従って変な痴態を晒すこともなく休みになった。
「12時か……」
ベッドから起き上がると今日着る服を引っ張り出す。
「出掛けるの久しぶりだな」
美佳と会うのは先日を抜いたら5か月ぶりか……。
別れてから二か月。別れる前にそういえば3か月も会っていなかったことに今更気付いた。
「久しぶり。って、この間ちらっとは会ったけど」
「だね。元気にしてた?」
「見ての通りよ」
美佳と待ち合わせたのは二人の家の中間地点にあるファミレスだ。ここで待ち合わせをして、僕はアップルパイと紅茶、美佳はフルーツパフェを食べながら今日の予定を決めるのが決まりだった。
「どこに行く?」
「せっかく新年に会えたんだし、初詣に行こうよ」
「いいね」
マフラーをぐるぐる巻きにして僕の隣を歩く美佳は首のない生き物のようだ。
「ぷっ」
「何よ、吹き出したりして」
「マフラー、相変わらずだなと思って」
「仕方ないでしょ。寒いんだから」
美佳は一度口を尖らせた後に笑った。
こうして美佳と歩いていると高見との日々がまるで夢のように思えてくる。
初詣に行こうとだけ決めてなんの相談もなしに歩いてきたのは僕らが毎年のように行っていた3駅隣にある日比野神社だ。そんなに有名な神社ではないのでテレビの中継が来たりするようなことはないが、それでも地元民に愛されており、この時期は出店も出て結構な人出がある。
「おみくじ引いたらさつま芋ステック買おうよ。良太、好きでしょ」
「うん」
おみくじも毎年必ず引く。美佳はいつも僕より半歩先を歩いていて、手を繋いだ時にだけ僕らは並んで歩いていた。当たり前だけど今年は手を繋いでいない。
二礼二拍手一礼。
「良太は何をお願いしたの?」
「えー、健康と平和に過ごせますようにって」
「くすっ、良太らしい」
「美佳は?」
「私は内緒っ」
「え、それ、ズルくない?」
「私、さつま芋ステック買ってくる」
「あ、逃げたな」
「へへーっ」
トゥルル トゥルル トゥットゥットゥットゥ
トゥルル トゥルル トゥットゥットゥットゥ
ポケットから携帯電話を出すと、着信は高見からだった。
「はい」
「羽山さん?」
「高見? どした?」
「今日、羽山さん休みですよね? 俺、仕事早く終わりそうなんで夜行ってもいいですか?」
「良太っ! さつま芋ステックMサイズでいい?」
聞こえてきた大きな声に「うん」と答える。
「ごめん、今出かけてて。夜には帰れるからいいよ。もし帰ってなくても先に部屋に入ってて」
「……わかりました」
「じゃ」
電話を切ると丁度美佳が戻ってきた。
「電話?」
「うん、友達から。夜、家に行っていいかって」
「そっか。あ、あっちのベンチに座って食べようよ」
「うん」
ベンチに座ると冷たさがお尻から伝わってくる。僕らの少し離れたところを神社に行く人が行き来していて、なんとなくその流れを見ていた。
「ねぇ、良太ってさ、私のことちゃんと好きだった?」
「うん」
「よかった。私、告白して強引に迫ったでしょ? 良太が断るの苦手だって知っててあんなやり方して。だから、ちゃんと好きでいてくれているのか不安だったんだ」
初めて聞く美佳の気持ちだった。
「ごめん、そんなこと気付かずに」
「ううん、私が言わなかっただけだし」
「ねぇ、さっきの電話、女の人? 好きな人、出来た?」
「いや、そんなんじゃないよ。相手、男だし」
「そっか」
美佳はそう言った後、下を向いて小さく「良かった」と呟いた。
「ねぇ、私たち、もう一度やり直せないかな」
「美佳……」
「あ、直ぐに返事はしないで。今、良い返事貰ってもまた不安になっちゃうから。断れないとかじゃなく、ちゃんと良太の気持ち聞かせて欲しいんだ」
「わかった。」
「うん、ちゃんと考えてね」
気の強い美佳とは思えない言葉だった。
いつも作ってもらうばっかりだから、たまには僕が何か作るかな。鍋くらいなら簡単だろう、そう思って食材を買って帰ると家の明かりがついていた。
「ただいまー。高見、今日は早いじゃん」
「おかえりなさい。早く帰れるって言ったでしょ」
「うん、きいた。なんか作ってる?」
「いや、まだです。今日は鍋にしようと思って食材は買ってきたんですけど」
「ぷっ、考えることは同じだな」
僕が買ってきた材料を見せると「ほんとだ」と高見も笑った。
「「いただきまーす」」
鍋を間に向き合って手を合わせる。
「具材は沢山あるからいっぱい食べろよ」
「ですね」
高見がスープを一口すする。
「おい……しい」
「なんだよ、その意外な反応は」
「いや、もっと料理不器用かと思ってたんで」
「やればできる子なんです、僕」
「あち、ふぉっ、ふぉっ」
豆腐を口に入れたところで高見がじっとりと僕を見つめてきた。
「今日会ってたのって元彼女さんですか?」
「ん、あぁ、うん」
「この間のイベントの付き添いの……」
「お前、勘がいいなぁ」
「うん、まぁ。で、寄りを戻すんですか?」
「おまっ、ぐっ……ごほっ、ごほっ」
「大丈夫ですか!?」
高見が席を立ったのを手で制して、大丈夫だと答えた。
「なんでそこまで知ってんだ?」
「この間、何か言いかけたのを俺、邪魔しちゃったんで。普通なら想像つきますよ」
「そ、そうなの?」
「はい、で?」
高見と付き合っているわけでもないのに、まるで浮気を咎められているようなそんな罪悪感が付きまとった。
「わかんない」
「は?」
「そんな怖い顔すんなよ。本当に分からないんだから」
「その方のことが好きなんですか?」
「……なぁ、好きってどういうことだっけ?」
「はあぁぁ」
高見が信じられないというように大きなため息をついた。
「一つ言えることは、その方のことがハッキリ好きだと言い切れないのなら復縁はしない方がいいんじゃないですか?」
「……だよな。まぁ、もう少しちゃんと考えてから返事するわ」
食器を片付け始めた高見が不意に僕の隣に立った。
「返事、あんまり待たせるのも良くないですからね。断るつもりなら早めに」
「うん、分かった」
高見を見上げると何となく不安そうな高見の視線とぶつかった。そのまま高見の顔が下りてくる。キス……だ。
「高見、待って。もうそういうのいいや。キスの練習はもうしなくていい」
「そうですか」
「ん、なんか、高見に甘えてばっかじゃアレだろ。男同士だし、なっ」
「そうですね。さて、洗い物、しちゃいますか」
高見の表情が何となく暗くなったように感じた僕は、その後いつもよりテンション高めに過ごし、高見も良く笑った。
そして3日後、美佳には復縁はできないという電話をした。
あの後、気絶するようにひと眠りした後、何事もなかったかのように高見と別れた。そして自分のベッドに腰を下ろして頭を抱えている、今。
ゆるゆると線を越えてきている気がする。キスが上手くなりたいからと高見とキスの練習をするようになり、AVを観てムラッとしたからといってあんな……。
あんなのまるで挿入なしのセックスみたいじゃないかっ!!
「どうしたんだ? 何を間違った?」
どう考えても自分が引き金を引いてきたようにしか思えない。
チロリン チロリン
【明けましておめでとう。昨日はありがとう。友達すっかり良くなったよ】
【おー、それは良かった】
【時間ある時で良いから少し会えないかな】
【いいよ。明後日、仕事休みだから明後日でいい?】
【うん。じゃあ14時にいつものところで】
【わかった】
あの日以来、高見と一緒の現場になることもなく、従って変な痴態を晒すこともなく休みになった。
「12時か……」
ベッドから起き上がると今日着る服を引っ張り出す。
「出掛けるの久しぶりだな」
美佳と会うのは先日を抜いたら5か月ぶりか……。
別れてから二か月。別れる前にそういえば3か月も会っていなかったことに今更気付いた。
「久しぶり。って、この間ちらっとは会ったけど」
「だね。元気にしてた?」
「見ての通りよ」
美佳と待ち合わせたのは二人の家の中間地点にあるファミレスだ。ここで待ち合わせをして、僕はアップルパイと紅茶、美佳はフルーツパフェを食べながら今日の予定を決めるのが決まりだった。
「どこに行く?」
「せっかく新年に会えたんだし、初詣に行こうよ」
「いいね」
マフラーをぐるぐる巻きにして僕の隣を歩く美佳は首のない生き物のようだ。
「ぷっ」
「何よ、吹き出したりして」
「マフラー、相変わらずだなと思って」
「仕方ないでしょ。寒いんだから」
美佳は一度口を尖らせた後に笑った。
こうして美佳と歩いていると高見との日々がまるで夢のように思えてくる。
初詣に行こうとだけ決めてなんの相談もなしに歩いてきたのは僕らが毎年のように行っていた3駅隣にある日比野神社だ。そんなに有名な神社ではないのでテレビの中継が来たりするようなことはないが、それでも地元民に愛されており、この時期は出店も出て結構な人出がある。
「おみくじ引いたらさつま芋ステック買おうよ。良太、好きでしょ」
「うん」
おみくじも毎年必ず引く。美佳はいつも僕より半歩先を歩いていて、手を繋いだ時にだけ僕らは並んで歩いていた。当たり前だけど今年は手を繋いでいない。
二礼二拍手一礼。
「良太は何をお願いしたの?」
「えー、健康と平和に過ごせますようにって」
「くすっ、良太らしい」
「美佳は?」
「私は内緒っ」
「え、それ、ズルくない?」
「私、さつま芋ステック買ってくる」
「あ、逃げたな」
「へへーっ」
トゥルル トゥルル トゥットゥットゥットゥ
トゥルル トゥルル トゥットゥットゥットゥ
ポケットから携帯電話を出すと、着信は高見からだった。
「はい」
「羽山さん?」
「高見? どした?」
「今日、羽山さん休みですよね? 俺、仕事早く終わりそうなんで夜行ってもいいですか?」
「良太っ! さつま芋ステックMサイズでいい?」
聞こえてきた大きな声に「うん」と答える。
「ごめん、今出かけてて。夜には帰れるからいいよ。もし帰ってなくても先に部屋に入ってて」
「……わかりました」
「じゃ」
電話を切ると丁度美佳が戻ってきた。
「電話?」
「うん、友達から。夜、家に行っていいかって」
「そっか。あ、あっちのベンチに座って食べようよ」
「うん」
ベンチに座ると冷たさがお尻から伝わってくる。僕らの少し離れたところを神社に行く人が行き来していて、なんとなくその流れを見ていた。
「ねぇ、良太ってさ、私のことちゃんと好きだった?」
「うん」
「よかった。私、告白して強引に迫ったでしょ? 良太が断るの苦手だって知っててあんなやり方して。だから、ちゃんと好きでいてくれているのか不安だったんだ」
初めて聞く美佳の気持ちだった。
「ごめん、そんなこと気付かずに」
「ううん、私が言わなかっただけだし」
「ねぇ、さっきの電話、女の人? 好きな人、出来た?」
「いや、そんなんじゃないよ。相手、男だし」
「そっか」
美佳はそう言った後、下を向いて小さく「良かった」と呟いた。
「ねぇ、私たち、もう一度やり直せないかな」
「美佳……」
「あ、直ぐに返事はしないで。今、良い返事貰ってもまた不安になっちゃうから。断れないとかじゃなく、ちゃんと良太の気持ち聞かせて欲しいんだ」
「わかった。」
「うん、ちゃんと考えてね」
気の強い美佳とは思えない言葉だった。
いつも作ってもらうばっかりだから、たまには僕が何か作るかな。鍋くらいなら簡単だろう、そう思って食材を買って帰ると家の明かりがついていた。
「ただいまー。高見、今日は早いじゃん」
「おかえりなさい。早く帰れるって言ったでしょ」
「うん、きいた。なんか作ってる?」
「いや、まだです。今日は鍋にしようと思って食材は買ってきたんですけど」
「ぷっ、考えることは同じだな」
僕が買ってきた材料を見せると「ほんとだ」と高見も笑った。
「「いただきまーす」」
鍋を間に向き合って手を合わせる。
「具材は沢山あるからいっぱい食べろよ」
「ですね」
高見がスープを一口すする。
「おい……しい」
「なんだよ、その意外な反応は」
「いや、もっと料理不器用かと思ってたんで」
「やればできる子なんです、僕」
「あち、ふぉっ、ふぉっ」
豆腐を口に入れたところで高見がじっとりと僕を見つめてきた。
「今日会ってたのって元彼女さんですか?」
「ん、あぁ、うん」
「この間のイベントの付き添いの……」
「お前、勘がいいなぁ」
「うん、まぁ。で、寄りを戻すんですか?」
「おまっ、ぐっ……ごほっ、ごほっ」
「大丈夫ですか!?」
高見が席を立ったのを手で制して、大丈夫だと答えた。
「なんでそこまで知ってんだ?」
「この間、何か言いかけたのを俺、邪魔しちゃったんで。普通なら想像つきますよ」
「そ、そうなの?」
「はい、で?」
高見と付き合っているわけでもないのに、まるで浮気を咎められているようなそんな罪悪感が付きまとった。
「わかんない」
「は?」
「そんな怖い顔すんなよ。本当に分からないんだから」
「その方のことが好きなんですか?」
「……なぁ、好きってどういうことだっけ?」
「はあぁぁ」
高見が信じられないというように大きなため息をついた。
「一つ言えることは、その方のことがハッキリ好きだと言い切れないのなら復縁はしない方がいいんじゃないですか?」
「……だよな。まぁ、もう少しちゃんと考えてから返事するわ」
食器を片付け始めた高見が不意に僕の隣に立った。
「返事、あんまり待たせるのも良くないですからね。断るつもりなら早めに」
「うん、分かった」
高見を見上げると何となく不安そうな高見の視線とぶつかった。そのまま高見の顔が下りてくる。キス……だ。
「高見、待って。もうそういうのいいや。キスの練習はもうしなくていい」
「そうですか」
「ん、なんか、高見に甘えてばっかじゃアレだろ。男同士だし、なっ」
「そうですね。さて、洗い物、しちゃいますか」
高見の表情が何となく暗くなったように感じた僕は、その後いつもよりテンション高めに過ごし、高見も良く笑った。
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