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サイドストーリー
カイの場合 1
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「あー、良太くぅ~ん」
「んもぅ、情けない声出しちゃってん」
「だって高見さんと上手くいっちゃったんでしょ。あんなに優しくしたのにー」
俺はカウンターに突っ伏して並んだ瓶を見ていた。奇麗に並んだ瓶の中、一つだけラベルが逆になっているものがある。きっと五郎さんがお酒を作ったのだろう。
ひとつだけ逆になっているの、気持ち悪いなぁ。
「ねぇ、ヒデさん」
「はい」
「その瓶、直して」とお願いしようと思いヒデさんの名前を呼んだその時、ヒデさんが瓶を掴んでラベルの向きを直した。
「お、さすがヒデさん。俺、その瓶だけラベルの向きが逆なのが気になってたんだよね」
「気になりましたか。私もこういうのは気になるんですけど、大雑把なオーナーがちょいちょい盗み酒をするのでね」
「んもうっ、少しくらい多めにみてよぅ」
「ちゃんと直してくれればいいんですけどね」
「ヒデさん、そんなに細かいと可愛い子ちゃん、寄ってこないわよぅ」
「細かくなんかないですよ。嫌なことはちょっと人より多いかもしれませんけど」
「たとえばぁ?」
「出掛けた靴下で家に上がるとか」
「あ、わかる、それ。俺も玄関で靴下脱ぐ派です」
「えぇ~、冬とか寒いじゃなぁい」
「家用の靴下を履けばいいんですよー。靴って臭いじゃないですか。そこに突っ込んでいた靴下で家の中を歩くのが嫌なんですよ」
「えぇ~、もしかして、あなたち、服も着替えるとかぁ?」
「いえ、そこまではしないですね。それをやりだすとキリがなくなるので」
「俺もそこまではしないなー」
「ふぅん、なんだか面倒くさい男たちねぇん」
五郎さんはそう言ってナッツをつまんだ。
「あ、ヒデさん、俺にもナッツちょうだい」
「珍しいわねぇん。カイがナッツ頼むなんてぇん。いつもお酒飲むとき、何も食べないじゃなぁい」
「んー、五郎さんが食べてるの見たらなんか食べたくなった」
「どうぞ」
ヒデさんが俺にナッツと箸を用意したのを見て、五郎さんがまた目を丸くした。
「なんで箸?」
「カイ君は手づかみでものを食べるってことをしないので」
「おぉー、そういえば結構前に一度話したような気がする。ヒデさん、よく覚えてましたね」
「私も手を汚したくない派なので。ポテチも箸で食べますよ」
「わかるっ。すんげー分かる」
友達からは箸を洗う方が面倒じゃね?と言われたりするけど、手を洗うのも箸を洗うのも手間的には大して変わらない。それよりも手が汚れるあの感じが嫌なのだ。
「……なんか、ちょっとあんた達、付き合ってみたらん?」
「えぇっ?」
俺は驚いて声を上げた。そんなこと今まで考えたこともなかった。
確かにヒデさんはクール系イケメンで、よく気が付く出来る男だ。俺がこのお店を居心地の良いと感じるのは五郎さんの人の好さだけじゃなく、ヒデさんがさりげなく皆をフォローしてくれるからだ。でも、僕の好みは可愛い系男子、ヒデさんは好みじゃない。それに。
「俺、ここに数年通ってますけど、ヒデさんと趣味とか好み、あんまり合わないと思うんですけど。ヒデさん、好きな映画のジャンルは?」
「ヒューマン系ですかね」
「俺はコメディ系。俺、休みの日はスポーツ観戦とか好きなんだけど、ヒデさんは?」
「私はインドア派なので家でまったり読書をするのが好きですね」
「ほら、全然合わないですよ?」
「やぁねぇ。好きなことなんて全部同じじゃなくてもいいじゃない。こうして一緒の空間は楽しめるでしょう?」
「……確かに」
「それとね、好きなことが合うよりも、嫌いなことが合う方が長続きするっていうのよ」
「そんなもんですかねぇ。あーっ、でも、大事なこと忘れてた! ヒデさんってタチですよね? 俺もタチなんで無理ですよ」
「そんなことないわよぅ。ヒデさん、どっちもイケるんだからぁん。ね?」
「五郎さん、しゃべり過ぎですよ」
「いいじゃない。あたし、二人は結構合うと思ってるのよねぇ」
へぇーヒデさん、受けもするんだ。このクールな人が気持ち良くなってアンアン喘いだりするのだろうか。それって……結構、いや、かなりそそられる。
「カイは22歳、ヒデさんが27歳。今時5歳差なんてなんの問題もないわん。ね、ちょっと試してみなさいよぅ」
「五郎さん、酔っぱらってるんですか?」
「確かに、アリかも。ヒデさん、俺、どうっすか!!」
気付いたら俺はヒデさんの手を掴んでいた。
「本当に付き合うつもりですか?」
五郎さんの命令でデートをすることになった今日。休みの日に呼び出されたとあってヒデさん少々ご機嫌斜めの様子だ。クール系イケメンの不機嫌顔と言うのはなかなか迫力がある。
だが、ここで負けてはいられない。この顔が快楽に歪む姿を見てみたいという俺の心はそう簡単には折れないのだ。
「そのつもりです。ヒデさんだって付き合ってもいいって思ったから五郎さんの話に乗ったんでしょう?」
「……単純なる興味ですよ。五郎さんの言う通り、嫌いなものが合う方が良いのかどうかっていう、ね。カイ君も同じでしょう?」
「まぁね」
興味っていっても五郎さんの言う事が当たっているかどうかよりも、ヒデさんへの興味だけど。
「で、今日はどこに行きますか?」
「んー、本屋に行こうかと思って」
「本屋ですか?カイ君、本なんて読みましたっけ?」
「全然。でもヒデさんは好きなんですよね? 本屋さんなのにカフェが併設してあって購入前の本が読めるってお店、前にテレビで特集してたのを思い出したんですよね。ちょっと興味あって。ヒデさん、行ったことあります?」
「いや、ない」
「じゃあ、決まりですね」
本屋までは電車で5駅だ。電車に乗り込むと女子高生たちの視線がこっちを向いて、友達と顔を見合ってキャッキャしている。きっとあの笑顔はヒデさんへのものだ。170センチの俺よりも5センチ以上高い身長、サラサラした黒髪、眼鏡の奥の目は切れ長で少し釣り目の奥二重。GパンにTシャツ黒のジャケットというよくある服装もサラリと着こなすヒデさんは太陽の光の下で見てもイケメンだ。
「どうかしました?」
「いや、ヒデさんってイケメンなんだなって」
「くす、今更ですか?」
「いや、お店でもちゃんと思ってましたよ」
「どうだか」
ヒデさんがほほ笑む。俺だけに、だ。お店にいる時の接客用スマイルとはまた違う感じで、少し胸がざわついた。
「んもぅ、情けない声出しちゃってん」
「だって高見さんと上手くいっちゃったんでしょ。あんなに優しくしたのにー」
俺はカウンターに突っ伏して並んだ瓶を見ていた。奇麗に並んだ瓶の中、一つだけラベルが逆になっているものがある。きっと五郎さんがお酒を作ったのだろう。
ひとつだけ逆になっているの、気持ち悪いなぁ。
「ねぇ、ヒデさん」
「はい」
「その瓶、直して」とお願いしようと思いヒデさんの名前を呼んだその時、ヒデさんが瓶を掴んでラベルの向きを直した。
「お、さすがヒデさん。俺、その瓶だけラベルの向きが逆なのが気になってたんだよね」
「気になりましたか。私もこういうのは気になるんですけど、大雑把なオーナーがちょいちょい盗み酒をするのでね」
「んもうっ、少しくらい多めにみてよぅ」
「ちゃんと直してくれればいいんですけどね」
「ヒデさん、そんなに細かいと可愛い子ちゃん、寄ってこないわよぅ」
「細かくなんかないですよ。嫌なことはちょっと人より多いかもしれませんけど」
「たとえばぁ?」
「出掛けた靴下で家に上がるとか」
「あ、わかる、それ。俺も玄関で靴下脱ぐ派です」
「えぇ~、冬とか寒いじゃなぁい」
「家用の靴下を履けばいいんですよー。靴って臭いじゃないですか。そこに突っ込んでいた靴下で家の中を歩くのが嫌なんですよ」
「えぇ~、もしかして、あなたち、服も着替えるとかぁ?」
「いえ、そこまではしないですね。それをやりだすとキリがなくなるので」
「俺もそこまではしないなー」
「ふぅん、なんだか面倒くさい男たちねぇん」
五郎さんはそう言ってナッツをつまんだ。
「あ、ヒデさん、俺にもナッツちょうだい」
「珍しいわねぇん。カイがナッツ頼むなんてぇん。いつもお酒飲むとき、何も食べないじゃなぁい」
「んー、五郎さんが食べてるの見たらなんか食べたくなった」
「どうぞ」
ヒデさんが俺にナッツと箸を用意したのを見て、五郎さんがまた目を丸くした。
「なんで箸?」
「カイ君は手づかみでものを食べるってことをしないので」
「おぉー、そういえば結構前に一度話したような気がする。ヒデさん、よく覚えてましたね」
「私も手を汚したくない派なので。ポテチも箸で食べますよ」
「わかるっ。すんげー分かる」
友達からは箸を洗う方が面倒じゃね?と言われたりするけど、手を洗うのも箸を洗うのも手間的には大して変わらない。それよりも手が汚れるあの感じが嫌なのだ。
「……なんか、ちょっとあんた達、付き合ってみたらん?」
「えぇっ?」
俺は驚いて声を上げた。そんなこと今まで考えたこともなかった。
確かにヒデさんはクール系イケメンで、よく気が付く出来る男だ。俺がこのお店を居心地の良いと感じるのは五郎さんの人の好さだけじゃなく、ヒデさんがさりげなく皆をフォローしてくれるからだ。でも、僕の好みは可愛い系男子、ヒデさんは好みじゃない。それに。
「俺、ここに数年通ってますけど、ヒデさんと趣味とか好み、あんまり合わないと思うんですけど。ヒデさん、好きな映画のジャンルは?」
「ヒューマン系ですかね」
「俺はコメディ系。俺、休みの日はスポーツ観戦とか好きなんだけど、ヒデさんは?」
「私はインドア派なので家でまったり読書をするのが好きですね」
「ほら、全然合わないですよ?」
「やぁねぇ。好きなことなんて全部同じじゃなくてもいいじゃない。こうして一緒の空間は楽しめるでしょう?」
「……確かに」
「それとね、好きなことが合うよりも、嫌いなことが合う方が長続きするっていうのよ」
「そんなもんですかねぇ。あーっ、でも、大事なこと忘れてた! ヒデさんってタチですよね? 俺もタチなんで無理ですよ」
「そんなことないわよぅ。ヒデさん、どっちもイケるんだからぁん。ね?」
「五郎さん、しゃべり過ぎですよ」
「いいじゃない。あたし、二人は結構合うと思ってるのよねぇ」
へぇーヒデさん、受けもするんだ。このクールな人が気持ち良くなってアンアン喘いだりするのだろうか。それって……結構、いや、かなりそそられる。
「カイは22歳、ヒデさんが27歳。今時5歳差なんてなんの問題もないわん。ね、ちょっと試してみなさいよぅ」
「五郎さん、酔っぱらってるんですか?」
「確かに、アリかも。ヒデさん、俺、どうっすか!!」
気付いたら俺はヒデさんの手を掴んでいた。
「本当に付き合うつもりですか?」
五郎さんの命令でデートをすることになった今日。休みの日に呼び出されたとあってヒデさん少々ご機嫌斜めの様子だ。クール系イケメンの不機嫌顔と言うのはなかなか迫力がある。
だが、ここで負けてはいられない。この顔が快楽に歪む姿を見てみたいという俺の心はそう簡単には折れないのだ。
「そのつもりです。ヒデさんだって付き合ってもいいって思ったから五郎さんの話に乗ったんでしょう?」
「……単純なる興味ですよ。五郎さんの言う通り、嫌いなものが合う方が良いのかどうかっていう、ね。カイ君も同じでしょう?」
「まぁね」
興味っていっても五郎さんの言う事が当たっているかどうかよりも、ヒデさんへの興味だけど。
「で、今日はどこに行きますか?」
「んー、本屋に行こうかと思って」
「本屋ですか?カイ君、本なんて読みましたっけ?」
「全然。でもヒデさんは好きなんですよね? 本屋さんなのにカフェが併設してあって購入前の本が読めるってお店、前にテレビで特集してたのを思い出したんですよね。ちょっと興味あって。ヒデさん、行ったことあります?」
「いや、ない」
「じゃあ、決まりですね」
本屋までは電車で5駅だ。電車に乗り込むと女子高生たちの視線がこっちを向いて、友達と顔を見合ってキャッキャしている。きっとあの笑顔はヒデさんへのものだ。170センチの俺よりも5センチ以上高い身長、サラサラした黒髪、眼鏡の奥の目は切れ長で少し釣り目の奥二重。GパンにTシャツ黒のジャケットというよくある服装もサラリと着こなすヒデさんは太陽の光の下で見てもイケメンだ。
「どうかしました?」
「いや、ヒデさんってイケメンなんだなって」
「くす、今更ですか?」
「いや、お店でもちゃんと思ってましたよ」
「どうだか」
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