【完結】君が僕に触れる理由

SAI

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11.早瀬の決意 ☆

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芸術祭が終わって一週間、あの日以来佐倉と顔を合わせることもない。芸術祭は苅部の石像のおかげで僕は12万円という大金を手にすることが出来た。因みに苅部は15万円だ。僕は相変わらず制作室で絵を描いているがそこに佐倉が姿を現すこともない。

「どう、進んでるー?」

早瀬は制作室に顔を出すと、僕の手のひらに飴玉を乗せた。

「差し入れ」
「どうも。絵は結構進んだよ」
「完成は間近?」
「どうかな」

受け取った飴の封を切り口に入れると、オレンジのさわやかな香りが口の中に広がった。早瀬は何を言うわけでもなく僕の斜め前に椅子を持ってきて座り、僕を見ている。

「どうしたの?」
「ん~、この光景を目に焼き付けておこうと思って」
「なんだそれ」

そう言いながらも胸がザワザワと騒ぎ立てた。そして頭で考えるよりも声が出ていた。

「どっかいくの?」
「ん・・・留学しようかと思って」
「そう。いつから?」

「来月には行く予定。芸術祭のアートライブを見てくれたアメリカの大学の先生が声をかけてくれたんだ。大きなチャンスだよ」

「よかったね」
「なんだよー。感動が薄いなぁ」
「びっくりして言葉が出ないだけだ。よかったね、おめでとう」

「へっへー、さんきゅー。行く前にタカの絵の完成が見られればなーなんて思ったりして。や、急かしてるわけじゃないけど」

「あぁ、頑張ってみる」
「いや、だから、急かしてるわけじゃないって」

早瀬はケラケラと笑った後、準備に忙しくてここにもあまり来られないかもな、と言った。


「本当にこんな日が来たな・・・」

早瀬が帰って1時間、僕は椅子に座って自分が描いている絵を見ていた。絵の中の早瀬は絵の具をじっと見つめている。僅かに伸ばされた手が留学を掴み取った早瀬の手と重なった。

早瀬に会えなくなるのか。

早瀬の才能を知っているからこそいつかこんな日が来るだろうと思っていた。だからだろうか。思っていたよりも冷静な気がする。

「あと一か月か。絵、完成させないとな」

僕は絵筆を握ると絵に向き合った。


 翌日、大学に行くと早瀬が留学するらしいという話がちらほらと聞こえてきた。早瀬が学内でも注目されている人物だということもあり、情報があっという間に広がったらしい。

「早瀬、凄いよなぁ~。あー、俺にもお声がかからないかねぇ」
「苅部にもお声はかかっただろ」
「あぁ、イベントのマスコット的なやつな。断ったよ」
「え?そうなの?」
「当り前だろ。俺は彫刻家になりたいの。イベントのマスコットになりたいわけじゃないのよ」
「それもそうか」
「お、噂をすれば早瀬じゃん」

「おはよーっす」

早瀬が手をあげたのを見て僕と苅部も同じように手をあげた。

「早瀬、俺、ちょっと先にいくから」
「あ?あぁ、じゃ、後でな」

佐倉が逃げるようにその場を後にした。

あんな露骨に避けなくてもいいのに。
でもそれだけのことを言った、か・・・。

それからも早瀬と佐倉を見かけると佐倉は何かと理由を付けてその場を去った。流石に早瀬も僕らの間に何かを感じたようだが、僕に何かを聞いてくることはなくそのまま日々は流れた。

そして早瀬の出発まであと2週間となった日、僕は絵を仕上げなければという自身が課したプレッシャーと持て余した欲求とで制作室の中を歩き回っていた。早瀬の絵はもう一息というところまできている。

何か物足りない。
物足りないという事は解るのに何が足りないのかが分からない。

羽毛立った心を鎮めようともう一つの欲求に手を伸ばした。下着の中に手を入れれば熱を持ち誇張している性器がドクンと脈打つ。大切なものを扱うようにゆっくりと動かせば、小さな波が波紋となり刺激を伝えた。

「・・・ハァ」

声を出してしまわない様に息を吐いた。自分の手ですれば快楽もコントロールできる。ほどほどに心地よく、こうしてゆるゆると高みに上りつめるのがいい。佐倉が与える快楽とはまるで違う心地よさだ。

佐倉・・・。あの手。
僕の体に余すことなく触れ、乳首の先端をつねる。

「あっ・・・」

僕が声を上げると、今度は視線が僕を犯しに来る。僕の痴態を佐倉の目が見ている。

「やっ・・・だ」

耳に佐倉の粗い呼吸がかかったと思えば首筋に顔を埋められ、くすぐったくて顔を背けた。佐倉の濡れた舌が首筋から離れる。

「渉はこの尖ったところを舐められるの、好きだよな」

乳首の先端に触れない様に舌で円を描く。

「くす、先端に触って欲しいの?体動いてるよ」

僕が恥ずかしがって顔を両手で隠すと容赦なく刺激が与えられ、胸を突き出すように体が跳ねた。乳首の先端を舌で潰すように押し、強く吸い、優しくノックしたと思えば弦をはじく様に舌ではじかれる。

「そんなに・・・するなっ・・・」

息と共に言葉を吐き出せは、急に乳首から離れた唇が一気に性器を飲み込んだ。大きな刺激に耐えられず体を捩じる。

「だめ。逃げないで」

唾液でぬめりを足しながら佐倉の手が容赦なく僕を追い立てる。
ぬちゅ、ぬちゅ、じゅるっ、じゅるっ
このまま飲み込まれてしまいそうだ。

「あっ・・・んんっ」

声を上げる瞬間、僕は近くのテッシュを数枚手に取り、慌てて性器にあてがった。手の中でドクドクと震えながらテッシュに欲望を吐き出す。

「なんであいつが出てくるんだよ」

脱力した体を起こして苛立ちのまま鉛筆を壁に投げつけた。近頃、いつもこうだ。自分で処理しているのに思い浮かぶのは佐倉の姿。
佐倉がどこにどう触れ、それがどんな快楽を生むのか体が可笑しくなりそうなほど記憶している。
一度出したというのにまた鎌首をもたげはじめた中心に僕は失笑した。


どうしたら逃れられるのだろうか。


どうしたら忘れられるのだろう。


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