【完結】君が僕に触れる理由

SAI

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5年後

ホワイトデー 2 ⭐︎

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 エレベーターから降りると早足で部屋まで歩き、無言のまま中に入る。直ぐに佐倉も入ってきて、くすっと笑った。

「渉がここまでしてくれるなんて。俺、明日死んだりしないよな」
「縁起でもないこというなよ」

佐倉に腕をつかまれて抱き寄せられる。ふわっと香る佐倉の香水。唇が重なって佐倉を感じて、舌が触れてゾクリと本能が顔を出した。佐倉を押し離して、赤の僕を抑える。

「まだ、だめ。ちょっと待ってて」
「どうしたの? ここまできてお預けとか言わないよな」

「言うわけないじゃん。とにかく待ってろよ」

佐倉を部屋に残したまま急いで浴室へ駆け込む。手に持っているのは家から持って来た紙袋だ。僕、本当にこれを着るのか?

紙袋からソレを取り出しながら、未だに自分の行動が信じられない。

これ、僕が買ったんだよな……。

買った、確かにポチっとした。着ないという選択も今ならまだ間に合う。このまま戻って佐倉と抱き合う。それでも十分なはずだ。

【間違いなく喜ぶね。親友の俺が言うんだから間違いないって】

「渉、大丈夫か? もし具合悪いならこのまま帰るでもいいよ。家の方がゆっくりできるだろうし」
「だっ、大丈夫。今、出るから」

佐倉が喜ぶならそれでいい。僕の羞恥心なんて……。




 僕は今、公開処刑中だ。目の前にいる佐倉は口をポカンと開いたまま、何も言葉を発しない。対する僕はベッドに腰を下ろしている佐倉の前に所在なさげに立っている。ウサギの格好をして……。

あの日、早瀬が佐倉が喜ぶから買うようにと見せてくれたのがこういう衣装だったのだ。もっとも早瀬が僕に勧めた衣装は、どこをどう隠すための服だよとツッコミみたくなるくらい露出が凄かったので僕が着ている衣装はそれに比べればちゃんと布がある。

モフモフの白い耳。ノースリーブのレオタードのような素材で、胸と下半身は綿のようにも見えるモフモフした布に覆われている。手首にもリストバンドのようになっているモフモフがついていて、勿論お尻には可愛いしっぽがあった。

「や、やっぱり着替えてくる」

何も言わない佐倉に居たたまれなくなり浴室に引き返そうとすると、しっかりと腕をつかまれた。

「これって、容赦しなくていいってことだよな?」

佐倉の目が血走っているような気がする。

「俺の為に着てくれたんだろ? 今だって恥ずかしくって仕方ないって顔してるのに」
「さ、くら」

佐倉の体重が僕に乗って、ベッドにゆっくりと押し倒された。佐倉の片手でベッドに縫い付けられた僕の両手。

「その服、何がどうなってるのかじっくり楽しませて」
「あ……」

どこに触れられたわけでもない。それなのに、佐倉の視線だけで声が漏れた。

「ここどうなってんの?」

胸の部分のモフモフにふわりと触れると、その手を少し下にずらして布とモフモフの間からスルリと手を忍び込ませた。

「へぇ、下から手が入れられるようになってるんだ」

佐倉はそのまま胸の部分の布をたくし上げると、露わになった僕の胸を見つめた。空気の動きと佐倉の視線を感じたまま僕は恥ずかしさに耐えるしかない。

「可愛い。白い服に渉のピンク色の乳首が映えるね。触って欲しい?」

ザワザワとした何とも言えない熱を乳首に感じる。頭を少し起こして胸元を見ると、たくし上げた洋服に半分隠れた佐倉の頭が目に入った。と、いうことは佐倉の唇が僕の乳首のギリギリのところにあるに違いない。

「……っ」

想像する。僅かに動けば佐倉の唇に触れ、そこから覗く舌で転がされ甘い疼きが体を支配する。想像だけで熱が僕の中心に集まり、モフモフの布の下でペニスがヒクっと存在を誇示した。

「どうする? どうして欲しい?」

息がかかるたびにピクピクっと皮膚の表面が動く気がした。

「さゎ」
「そういえば、この衣装って鎖がついてなかった?」
「ついてたけど……」
「どこにある?」

「浴室にある紙袋の中」

すっと佐倉の体が離れて、僕はほっとしてベッドに座り直した。長く一緒にいるからか、海外出張が多いからか、あんな風にギラついた佐倉を見るのが久しぶりで落ち着かない。

あった、と声がして佐倉が短いチェーンを持って戻ってきた。

「それどうするの?」

佐倉は僕の手首をとるとこうするんだ、と言いながら手首のモフモフの中にあった突起にチェーンを繋いだ。

「こんなところに突起があるなんて気づかなかった」
「このタイプにはあるんだよ」

何で知ってるんだよ、と小さく呟いている隙に佐倉によって僕の両手は体の前で繋がれてしまった。早瀬が佐倉は好きだよと言い切ったこの衣装。好きだってことは他の人ともこういうことをしたのかもしれない。この衣装に詳しいってことがそれを示唆しているようで、口の中に苦みが広がった。

「この衣装、早瀬が言い出したんだろ?」

僕を膝の上に座らせて、拘束されている手首を自分の首の後ろに回すと佐倉は僕の唇に啄むようなキスをした。チュッと鳴る音が可愛い。そしてまた胸の布を捲し上げると、舌の表面で優しく乳首に触れた。グイッと押されたかと思うと舌先で先端をチロチロと弄られる。思わず唇を噛んだ。

「……っ」

気持ち良いはずなのに、脳裏に浮かぶのは自分じゃない誰かに佐倉が触れている姿。今、僕の体に触れているように別の体にもこうして触れたのだろうか。一度マイナスに回り始めた歯車は止まることなく僕の心をマイナスへと導く。

「大学ん時、クラスの奴が彼女にこういうやつ着せようかって話しててさ。俺、そいつの彼女を見たことあったからつい言っちゃったんだよな。高橋さんの方が似合いそうだよなって」

「高橋さんって……僕?」

あの頃、佐倉は僕のことをそう呼んでいたはずだ。

「そ。ほんと、無意識につい、な。あいつ憶えてたんだな。早瀬に言われてってのがちょっとムカつくけど、思っていた通りに似合う」

佐倉はフッと微笑んで僕の唇に音を立てた。誰かと、なんてモヤついていた心が佐倉の言葉で晴れていく。佐倉の顔を引き寄せて自分から唇を重ねた。

「確かに早瀬に教えて貰ったけど、自分の意思で買ったんだ。その……佐倉に喜んで欲しかったから」
「嬉しいよ、嬉しすぎてアタマどうにかなりそう」

佐倉の口づけが深くなる。胸の突起を虐められながら体をひっくり返され、四つん這いになった僕のしっぽが佐倉の指によって揺れた。途端に込み上げる羞恥。

「待って、シャワー浴びてない」
「必要ない。渉から石鹸の匂いがしてる。家で風呂に入ってきたんだろ? ここもしっかり準備してるはず」

「あっ」

しっぽをグイッと上げられ、丸く開いた穴。そこからは僕のイヤラシイ場所がはっきりと見える。

「やぁ、見るな」
「くすっ、いつも見てるだろ」

「そんな……あっ……あぁ」

ローション塗れの指がゆっくりと僕の内部を犯していく。

「ほら、やっぱり柔らかい」




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