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第九話【あまから五目いなり】偲ぶ人々に誓いを

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墓参りから帰宅した後、怜は職場である大学へと出勤して行った。
美寧は家に一人、仏壇の前に座っている。

シャンと伸びた背筋。正しい姿勢で正座するその姿は、着物を着ていても不思議がないくらいに気品がある。
洗礼されたその佇まいは、芯通った強さを思わせる一本の白百合のよう。
その姿のまま美寧は微動だにせず、ただじっと仏壇を見つめていた。

仏壇には、朝美寧が飾った花と怜が作ったいなり寿司が供えられている。
その向こうには怜の両親の写真。そして香炉と花立ての間に、美寧の祖父の写真が小さな写真たてで飾られている。

(おじいさま……わたし初めて誰かを守りたいと思いました)

これまで守られてばかりだった自分が、初めて守りたいと思ったひと―――

(れいちゃんはいつも私の涙を拭いてくれるけど、私だってれいちゃんの涙を拭いてあげたい。守られるばかりじゃなくて守りたい)

彼が寂しいとか悲しいとか、そんな時がこれからもしあるとしたら、その時彼の隣に居てその心に寄り添いたい。ぎゅっと抱きしめたい。
そしてその役目を他の誰にも譲りたくないと思うのだ。

(これって、私がれいちゃんのことを好き、てことだよね?)

自分の心に問う。

(ううん、好きよりもっと………)

瞳を閉じて怜の微笑みを思い出す。
それだけで美寧の体の真ん中がぼわっと温かくなった。

そっと瞼を持ち上げ目線を上げる。

(れいちゃんのお父さまとお母さま……お二人に誓います。私、ちゃんとれいちゃんに自分の気持ちを伝えます)

怜に良く似た微笑みの男性とその隣の女性が、美寧を優しく見つめている。

そんな気がした。




【第九話 了】
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