✿好きな人から『 もしかして、もうあいつにプロポーズされました? 』……そう訊かれ、私は悲しくなった。

設楽理沙

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8 ◇楽しい時間は有限じゃない

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8 ◇楽しい時間は有限じゃない


 杏 side:

 坂口さんから、前日の言動は失言だったと──
『無神経なことを言ってしまいました』と、メールで謝罪された。


 そのあとは、今までのように彼とは他愛もないメールのやりとりで
寝るまでの時間を過ごしたのだけれど……。


 もしかしたら──

交際に繋がるかもしれないとか、自分のことを結婚相手として想っていて
くれるかも?

という気持ちで遣り取りしていた時とは、明らかに自分のテンションが
だだ下がりになっているのが分かる。

 

 彼の言動から、ほぼほぼ相手の気持ちが自分にはないと分かって
しまった今、それは仕方のないことで……。


 昨日の彼の台詞に打ちひしがれたのは勿論のこと、ちょっぴり
彼に対して『酷い』だとか、『何よ許さない』というようなどす黒い感情が、
一瞬芽生えかけた。


 でもね、悲しみや苦しみと一緒にそんなマイナスの感情も、昨夜の涙で
流せた気がする。



 日々密に、彼と楽しい時間を共有できたことを思うと──

昨日の今日という短時間にも関わらず、すっかり黒い感情を消し去り、
更にはその感情を"感謝"に置き換えることができた。


 そしてそれと共に、坂口との楽しい語らいの時間もいつまで続けられるのか、
定かではないことを痛感する杏は……


『海でも見に行きませんか』

と、坂口から次の週末も誘われたため、彼が希望していた手作りの菓子を、
持って行こうと決めたのだった。

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