性徒会執行部!!

ふうまさきと

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二章

性徒会執行部、入部 3

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 顔は平常心を保ちつつ、冷や汗ダラダラ、心臓バックンバックン。そんな俺とは違い、井上先輩と住吉先生は和らいだ表情をして余韻にでも浸っているのだろうか、ピクリとも動かない。

 そんな二人を他所に、奥で何かが動いた気配が。厳つい表情を浮かべる後藤先生だ。ヤバイと本能が俺に告げている。

 今すぐにここから立ち去らなければと。

 なのに、それなのに俺の脚は蛇に睨まれた蛙の如く、小刻みに震えるだけでまともに動こうともしない。

 こちらは動かなくても相手は動く。

 一歩、一歩と後藤先生は俺に近付いてくる。弱った獲物をなぶり殺しにするくらいの訳ないとの余裕を見せながら。

 拳の射程圏内に突入。

 もう駄目だ。俺は殴られるんだろう。鉄拳制裁というやつだ。仮に殴られなかったとしても、通報されて檻の中にでも連れて行かれるんだろう。

 俺は諦めて目を瞑る。

 先立つ不幸をお許し下さい。最後にFとGのマシュマロのようにやわらかい中にしっかりとした手ごたえのあるおっぱいが揉めて幸せでした。

 できることなら、もう少し生きたかった……。

 さようなら……。

 ―完―

 俺は俺の物語に幕を閉じたつもりでいた。

 けれど、何も起こらない。もしかすると助かったのかもしれない。状況を確認しようと、ゆっくり目を開くと、すぐ前に後藤先生が立っていた。改めて間近で見ると、本当に筋骨隆々だ。いかにも体育教師! といった感じが体格からにじみ出ている。もしくは筋肉バカ。

「如月」

 ボソリと後藤先生が俺の名前を口にした。その声は俺だけに聞こえるように、かなりの小声だった。

「……はい」

 警察に通報なのだろうか。それとも、今から殴られるのだろうか。俺は顔でも腹でも殴られても耐えられるように、歯軋りが鳴りそうなほど歯を食いしばり、腹筋にも力をいれる。

「後で感想教えろよな」

 ……はい?

 後藤先生はそれだけを言って席に戻って行った。

 状況が理解できずあたりを見回すと、井上先輩と住吉先生以外はみな親指をたてて微笑みながら頭を縦に振っていた。何度も頷くようにして。

 あんたら病気か?

 俺にもしテレパシーが使えたら、恐らく全員こう言っているんだろう。「目の保養になった。俺たちが、私たちが触ると間違いなく通報だ。それが許されるのはお前か性徒会執行部の人たちだけ。だから、まじかでそのやわらかさを眺められてよかったよ」、と。

 あえてもう一度言おう。

 あんたら病気なのか!?

 そりゃ、助かったことは素直に嬉しいけど、普通は通報だよね? よくても反省文と自宅謹慎だよね? なのに何この対応!

 俺達は触ることができないから、せめて感触を伝えてくれと? いいだろう、それで争いもなく皆が救われるというのなら!

 これが性徒会執行部の、おっぱいで争いを無くそうっていうことだよね。

“いいのかよ!”

 天使と悪魔の同時の突込みにも俺はめげないぞ。命あっての人生なんだから。

 ようやく井上先輩と住吉先生は意識を取り戻し、キリッとした表情と、教師らしい面構えを俺に見せるが、もう後の祭りだ。あんな顔を見た後では作り物の表情なのだと思ってしまう。

「悠斗」

「悠斗君」

「……?」

 なんで名前を呼ばれたんだろう? 俺、何かしたっけかな?

“したよ!”

“したわよ!”

 やっぱりあれだよね? 揉んだことだよね? 流石にこれは怒られることを覚悟した。あの周りの教師がおかしいだけで、普通は触られたら怒るだろうな。俺だったら確実に怒る。イケメンならそりゃ許すかもしれないけど、なんせ俺だからな……。ビンタだったり、もしかすると単位を出さないと言われたりするんだろうな。

 入ってから知ったことだけど、光雲高校は少し特殊な学校だった。単位制で、単位によって進級や卒業が決まるので、もし単位がでなかったら一大事だ。俺たち学生にとって、単位を出さないぞと言われるのは「もう一年やり直すか?」と言われるのと同義だ。

「よかったぞ」

「よかったわよ」

 あぁ、この人たちもこういう人でしたね。

 怖がって損したよ!

 先輩といい先生といい、そしてクラスの人たち。この学校にいるまともな人って俺だけなんじゃないか?

“それだけはない”

“それだけはないわ”

 思うくらいいいでしょ……。

 入部届けを出しに来ただけなのに、こんな疲れるだなんて思わなかった。それもこれも、あの時「やります」と言わなければこんなことにならなかったのに。

 いや、でもまてよ?

 あの時やると言ったからこそ俺は井上先輩のFと住吉先生のGのおっぱいを揉めたのでは? そう考えるとやると答えてよかったのかもしれないな。

 物は考えようとはよくいったものだ。

 ポジティブに考えていこう。俺がやるのは庶務だ。貞操がどうのというようなポジションじゃない。そして、先輩と先生の様子からあのユートピアに足を、いや、手を差し伸べても構わないときた。ひょっとしてこれは性徒会執行部に入ったのは正解だったのかも。

 そう考えると、がぜんやる気が起きてきた。どこがやる気を出しているかはばれない様にして。

「悠斗、放課後は部室に案内してやるから教室で待っていろ」

「分かりました」

「新乳部員が来るなら久しぶりに私も顔出そうかなぁ……」

 住吉先生、きっと出てるのは顔じゃなくておっぱいです。

 誰のせいか知らないけど、職員室を訪れた時よりも服装がはだけている。もう数センチずれればユートピアに実る果実が見えそうだ!

 見えそうで見えない感じがいい! だれか知らないがグッジョブ!

“お前だよ!”

“貴方よ!”

 あ、やっぱり俺なの? あの時の俺なの? うーん、ナイス俺……。

「はな、悠斗の歓迎会というのはどうだ?」

「いいわね、弥生ちゃん」

 俺をユートピアへ誘ってくれるというのか!

「楽しみにしてます」

 今から放課後が楽しみだ、いったいどんな世界が広がっているというんだろう。井上先輩や住吉先生のような魔乳の持ち主が他にもいるのだろうか。そして、その人も俺におっぱいを触らせてくれるとか?

 駄目だ、考えただけで興奮してきてしまった。

 紳士としたことが……。

“お前は紳士じゃない”

“ただの変態よ、どうしても紳士をつけたいなら、変態紳士よ”

 変態紳士か、悪くない響きだ。

「悠斗、放課後迎えに行くからな」

「はい!」

 ちょうどいいタイミングでチャイムが学校内に鳴り響いた。それは、まるで俺が部活に入ったことを祝福する鐘の音のような。

 昼休みの終わりを告げるチャイムを前にしても、急ぐそぶりを見せずに堂々としている井上先輩を残して、俺は自分の教室へと走る。

「歓迎会……か」

 井上先輩、住吉先生。そしてまだ見ぬ部員、もちろん女子が。全裸でおっぱいをプルんプルん揺らしながら歓迎してくれるとか。巨乳だけじゃなく、貧乳女子が無い胸を必死で腕に押し付けてくるとか。

 放課後が本当に楽しみだ。

 想像するくらいはタダだし、誰も文句は言うまい。後藤先生みたいな筋肉ダルマがいるだなんて想像したくないもんね。

 俺はユートピアな世界を想像し創造して、きたる放課後への授業を乗り切ることにした。
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