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三章
性徒会執行部、部員 1
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昼休みが終われば当然午後の授業、五限、六限とやってくる。普段から話などまともに聞いてはいなかったけれど、今日は特に耳に入ってこなかった。
教師の話に面白みが無くて寝ていたわけでも、昼休みにあんなことが廊下であったために、クラスの皆が騒いでいて授業どころじゃない。なんてわけもでもない。
ただただ、俺の頭は井上先輩と住吉先生の待ち構える新乳部員歓迎会が気になってしかたがなかっただけの話だ。
例えば授業中。教団に立つ先生にだけは見えないが、廊下で美人な女性が裸で、それもおっぱいを猛烈に揺らしながら立っていればどうだ?
健全な男子ならば授業どころではないはずだ。人によっては目以外の部分が忙しくなってもしょうがない。
それと同じで、井上先輩、住吉先生。そしてまだ見ぬ部員がおっぱいを揺らしながら俺を歓迎してくれると思えば、授業どころではないと誰に話しても理解して貰えるだろう。理解できない人はきっと男しか愛せない人なんだろう。
女性のおっぱいを愛せないだなんて、人生の九割は損をしていると俺は思う。
いや、十割かもしれない。
男なら、いや、女も含めた人間は、おっぱいを愛しおっぱいに生きおっぱいに死ぬ生き物であるべきだ。
おっぱいこそが正義だ。
あえてもう一度言おう。
おっぱいこそが正義であると。
ふと気づけばクラスの皆は帰りの仕度に入っており、先ほどまでいた教師の姿も見えなくなっていた。壁に掛けられた時計に目を向けると、帰宅時間へと入っていた。新乳部員歓迎会まで残すところ、後はホームルームのみ。
俺の心は自然と高鳴りを上げていた。
クラスに静寂が訪れれば心音が聞こえるのではないかというほど、俺の心臓は力強く脈打っている。
今か今かと、待ちわびる心に、俺はもう少しの辛抱だと言い聞かせた。効果のほどは皆無だったが。
焦る俺とは対称的に、ホームルームはゆっくりと執り行われた。
ゆっくりと言っても、話自体はものの五分で終わったけれど、体感時間では十分以上は超えていた。楽しいことほど時間は早く過ぎ、億劫なことは長く感じる。
ホームルームは後者で、昼休みの極一部は前者、そしてこれから行われる歓迎会もまた前者だろう。
ホームルームの話は要約すれば委員を決めること、最近露出狂が出没するようになったので気を付けることの二点だ。
露出狂に気をつけろというが、何に対して気をつけるのかを教えて欲しい。
たわわなおっぱいを魅せつけてきたときに自我を失わないように?
絶壁なおっぱいを魅せつけられても愛でないように?
まてよ?
担任の船井先生は露出狂の性別を言っていなかった、ということは……。
想像したくもないが、俺にも付いているあれを見ないように気を付けろと言う訳か。たしかに気を付けなければならない。
見たくもない物を見せつけられ、尚且つそれが立派であれば敗北感さえ味わうことになる。何も露出狂が狙うのは女の子だけじゃないはずだ。男に見せつける露出狂がいてもおかしくない。世の中には色々な性癖を持っている人がいる。ただ、それを他人にまで押し付けては欲しくないものだが。
いやな物を想像仕掛けたとき、俺の視界にチラッとだけ地蔵菩薩様が姿を現した。それはさながら地獄の妄想に落ちた俺を救ってくれるかのような慈悲に満ち溢れた存在。
そう。それは井上先輩……のおっぱいだ。
廊下側の窓からチラリと見えたそれは、井上先輩のおっぱいに違いない。
俺の記憶があの形状はそうだと言っているんだから間違いないだろう。
視界の端で一秒以下ではあったが、確かに変な想像をしかけた俺を救ってくれたのは井上先輩だ。そうと分かれば、ホームルームも終わったことだし待たせる理由もないので行くしかない。
俺は鞄を持って廊下へと出た。
先輩が教室の前に来て数分もたっていないはずなのに、もう人だかりができていた。さすが魔乳。人を引き付ける力は凄いらしい。
俺は掻き分けて先輩の元へ行こうと試みたのだが。
「来たか悠斗」
先輩の立った一言で、道は開けた。
花道を通るかのように開けた廊下を進み、先輩の直ぐ側にまで近付くと、昼休みには匂わなかった甘美な匂いが鼻腔をくすめた。
「先輩、香水か何か付けました?」
「一度も付けた事はないがどうかしたか?」
香水の匂いじゃなければこの匂いは一体なんだというのか。
矛盾になるのかもしれないが、甘い蜜のようでいて爽やかなこの匂いは。
「先輩、いい匂いしないか?」
俺は集まっている隣のクラスの者や、同じクラスの仲間に問いかけてはみたが、首を振るだけだった。
自分しか匂わない匂い、他の誰もが匂わないというのなら、気のせいと言われればそう思えてきてしまう。
「嫌な臭いなら汗が原因だと思うのだが、さて」
「汗?」
「昼休みに誰かのお陰で、な」
井上先輩は俺に向かってウインクして来た。
昼? というと、やはりアレしかないよ、な……。
「如月、どういうことか説明するよな?」
どうやら井上先輩が俺に向けたウインクを周りにばっちり見られていたみたいだ。他の皆も井上先輩をみているんだからあたりまえかもしれないけど。
説明……か、説明したらきっと明日がこないんだろうなぁ。
「悠斗はテクニシャンだっただけ言っておこう」
さようなら。
本日二回目の、さようなら。
流石に奇跡でも起こらない限り俺は――
「てめぇ如月! 感想教えやがれよ! 俺まだなんだぞ!」
「如月君、私のおっぱいと比べてみて下さい!」
「如月、柔らかかったよな? 先輩のアレ」
「な、お前も敵か!」
――起こったよ、奇跡。
というか、こんなクラスだったね! ここ! クラスっていうか、もう学校全体がこれだよね!
結局あの後は感想を言うだけ言うと周りが満足したみたいで、あっさり俺への標的が外れた。そのお陰で、こうして井上先輩と部室までいけるようになったけど、惜しいことしたかもしれない。
声の主は分からないけれど、あきらかに女の子が胸を揉みくらべてといっていたんだもん!
「はぁ……」
惜しいことをしたなと溜息を吐くと、井上先輩が「歓迎会が逃げるぞ」と笑いながら言ってくるものだから、俺は何でもないですとだけ返した。
それにしても部室って何処にあるんだろう。クラスがある東校舎から図書室だったり視聴覚室、職員室がある西校舎の方へ向かってるけど。
どこにあるんですか? と聞いても「着いてくれば分かる」としか返してくれないから、不安で仕方がないんだけど。
一年の教室がある東校舎の二階から一階へ降りて、渡り廊下を渡って西校舎の三階に来たけど、ここってたしか図書室と生徒会室、パソコン教室があったよな。
生徒会室……まさか、な……。
なぜだか嫌な予感がしてきた。
「ついたぞ悠斗、ここだ」
教師の話に面白みが無くて寝ていたわけでも、昼休みにあんなことが廊下であったために、クラスの皆が騒いでいて授業どころじゃない。なんてわけもでもない。
ただただ、俺の頭は井上先輩と住吉先生の待ち構える新乳部員歓迎会が気になってしかたがなかっただけの話だ。
例えば授業中。教団に立つ先生にだけは見えないが、廊下で美人な女性が裸で、それもおっぱいを猛烈に揺らしながら立っていればどうだ?
健全な男子ならば授業どころではないはずだ。人によっては目以外の部分が忙しくなってもしょうがない。
それと同じで、井上先輩、住吉先生。そしてまだ見ぬ部員がおっぱいを揺らしながら俺を歓迎してくれると思えば、授業どころではないと誰に話しても理解して貰えるだろう。理解できない人はきっと男しか愛せない人なんだろう。
女性のおっぱいを愛せないだなんて、人生の九割は損をしていると俺は思う。
いや、十割かもしれない。
男なら、いや、女も含めた人間は、おっぱいを愛しおっぱいに生きおっぱいに死ぬ生き物であるべきだ。
おっぱいこそが正義だ。
あえてもう一度言おう。
おっぱいこそが正義であると。
ふと気づけばクラスの皆は帰りの仕度に入っており、先ほどまでいた教師の姿も見えなくなっていた。壁に掛けられた時計に目を向けると、帰宅時間へと入っていた。新乳部員歓迎会まで残すところ、後はホームルームのみ。
俺の心は自然と高鳴りを上げていた。
クラスに静寂が訪れれば心音が聞こえるのではないかというほど、俺の心臓は力強く脈打っている。
今か今かと、待ちわびる心に、俺はもう少しの辛抱だと言い聞かせた。効果のほどは皆無だったが。
焦る俺とは対称的に、ホームルームはゆっくりと執り行われた。
ゆっくりと言っても、話自体はものの五分で終わったけれど、体感時間では十分以上は超えていた。楽しいことほど時間は早く過ぎ、億劫なことは長く感じる。
ホームルームは後者で、昼休みの極一部は前者、そしてこれから行われる歓迎会もまた前者だろう。
ホームルームの話は要約すれば委員を決めること、最近露出狂が出没するようになったので気を付けることの二点だ。
露出狂に気をつけろというが、何に対して気をつけるのかを教えて欲しい。
たわわなおっぱいを魅せつけてきたときに自我を失わないように?
絶壁なおっぱいを魅せつけられても愛でないように?
まてよ?
担任の船井先生は露出狂の性別を言っていなかった、ということは……。
想像したくもないが、俺にも付いているあれを見ないように気を付けろと言う訳か。たしかに気を付けなければならない。
見たくもない物を見せつけられ、尚且つそれが立派であれば敗北感さえ味わうことになる。何も露出狂が狙うのは女の子だけじゃないはずだ。男に見せつける露出狂がいてもおかしくない。世の中には色々な性癖を持っている人がいる。ただ、それを他人にまで押し付けては欲しくないものだが。
いやな物を想像仕掛けたとき、俺の視界にチラッとだけ地蔵菩薩様が姿を現した。それはさながら地獄の妄想に落ちた俺を救ってくれるかのような慈悲に満ち溢れた存在。
そう。それは井上先輩……のおっぱいだ。
廊下側の窓からチラリと見えたそれは、井上先輩のおっぱいに違いない。
俺の記憶があの形状はそうだと言っているんだから間違いないだろう。
視界の端で一秒以下ではあったが、確かに変な想像をしかけた俺を救ってくれたのは井上先輩だ。そうと分かれば、ホームルームも終わったことだし待たせる理由もないので行くしかない。
俺は鞄を持って廊下へと出た。
先輩が教室の前に来て数分もたっていないはずなのに、もう人だかりができていた。さすが魔乳。人を引き付ける力は凄いらしい。
俺は掻き分けて先輩の元へ行こうと試みたのだが。
「来たか悠斗」
先輩の立った一言で、道は開けた。
花道を通るかのように開けた廊下を進み、先輩の直ぐ側にまで近付くと、昼休みには匂わなかった甘美な匂いが鼻腔をくすめた。
「先輩、香水か何か付けました?」
「一度も付けた事はないがどうかしたか?」
香水の匂いじゃなければこの匂いは一体なんだというのか。
矛盾になるのかもしれないが、甘い蜜のようでいて爽やかなこの匂いは。
「先輩、いい匂いしないか?」
俺は集まっている隣のクラスの者や、同じクラスの仲間に問いかけてはみたが、首を振るだけだった。
自分しか匂わない匂い、他の誰もが匂わないというのなら、気のせいと言われればそう思えてきてしまう。
「嫌な臭いなら汗が原因だと思うのだが、さて」
「汗?」
「昼休みに誰かのお陰で、な」
井上先輩は俺に向かってウインクして来た。
昼? というと、やはりアレしかないよ、な……。
「如月、どういうことか説明するよな?」
どうやら井上先輩が俺に向けたウインクを周りにばっちり見られていたみたいだ。他の皆も井上先輩をみているんだからあたりまえかもしれないけど。
説明……か、説明したらきっと明日がこないんだろうなぁ。
「悠斗はテクニシャンだっただけ言っておこう」
さようなら。
本日二回目の、さようなら。
流石に奇跡でも起こらない限り俺は――
「てめぇ如月! 感想教えやがれよ! 俺まだなんだぞ!」
「如月君、私のおっぱいと比べてみて下さい!」
「如月、柔らかかったよな? 先輩のアレ」
「な、お前も敵か!」
――起こったよ、奇跡。
というか、こんなクラスだったね! ここ! クラスっていうか、もう学校全体がこれだよね!
結局あの後は感想を言うだけ言うと周りが満足したみたいで、あっさり俺への標的が外れた。そのお陰で、こうして井上先輩と部室までいけるようになったけど、惜しいことしたかもしれない。
声の主は分からないけれど、あきらかに女の子が胸を揉みくらべてといっていたんだもん!
「はぁ……」
惜しいことをしたなと溜息を吐くと、井上先輩が「歓迎会が逃げるぞ」と笑いながら言ってくるものだから、俺は何でもないですとだけ返した。
それにしても部室って何処にあるんだろう。クラスがある東校舎から図書室だったり視聴覚室、職員室がある西校舎の方へ向かってるけど。
どこにあるんですか? と聞いても「着いてくれば分かる」としか返してくれないから、不安で仕方がないんだけど。
一年の教室がある東校舎の二階から一階へ降りて、渡り廊下を渡って西校舎の三階に来たけど、ここってたしか図書室と生徒会室、パソコン教室があったよな。
生徒会室……まさか、な……。
なぜだか嫌な予感がしてきた。
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