11 / 20
四章
性徒会執行部、始動 2
しおりを挟む
性徒会室から中庭に向かうのに、改めてこの学校の図面を頭にたたき起すと、きっと俺の勘違いじゃ済まないように思えることが思い浮かんだ。
一階から三階までの階段は、東も西校舎も同じように、通路の両端と中央にある。一つの校舎に計三つの階段があり、下駄箱のある南の正門へ向かうには南にある階段を使うのが一番適切だろう。
北には運動場、食堂がある。だから北側に近い教室のときは北の階段を使うのがいちばん近い。
そして、唯一東と西校舎を結ぶ通路は、中央階段を下りた一階の先だ。
これを改めて上から見てみたらどうだろうか? あるアルファベットの形に見えないだろうか?
そう、その形は、間違いなくHだ。
これは俺の勘違いじゃないはずだ。いや、むしろどうして気付かなかったのかが不思議なくらいだ。
学校をそんな卑猥なものを連想させる形に作らないという盲点を突かれたのか?
だとしたら、この学校を手掛けたやつはまさに策士と言っても過言じゃない。これはもう天才だ! 設計図を作った人は変態で天才に違いない。
……うん、これは盲点を突かれたっていうか、ただ俺が疲れてるだけなんだろうな。こんな考えするなんて。
自然とそうなっただけで、便利といえば便利なんだから、この形という階段の設置場所といい。
朝から色々なことがありすぎて脳も疲れてるんだろう。
この通路で起こっている争いを解決したら、才華先輩にでも紅茶をもう一杯入れて貰って一息つこう。それがいい。
だなんて考えていると、いつの間にか中庭についていた。
目の前では性徒会執行部のモニターで見たように、争いが繰り広げられている。あのときと今で違うことは、声が聞こえるということ。
あとは容姿がよくわかるくらいだ。
男の方はいかにもてそうな外見だ。高身長でおしゃれに気を使っている感じがなんとなくただよっている。それに引き換えショートボブで少し身長の小さい女の子の方は、大人しめ、控えめな感じがする。胸の方も。
「だから、何回も言わせんなって言ってるだろ?」
「でも……前のいっくんはそれがいいって……」
「前は前、今は今、もう無理なんだって」
「でも! でも!」
「あー、うっせーな。無理なもんは無理だ、いいかげんにしろよ!」
どうやらよくある別れ話みたいだった。こんなところに、部外者の俺や井上先輩が入っていいのか分からないけど、しっかり性徒会執行部の仕事をみなければならない。
「悠斗、よくみておけ。胸は争いをなくすことを」
「いっくん、私の貧乳がいいって言ってたじゃん!」
「ああ? 貧乳なんてクソだよ! 今だから言ってやるよ、あれは貧乳好き語ってお前に近づくだけが目的だったんだよ。誰が貧乳なんか、俺は根っからの巨乳好きだバーカ、貧乳、まな板、絶壁」
「うぅ……」
駄目だ、これはまずい。井上先輩は格好よく「悠斗、よくみておけ。胸は争いをなくすことを」とか言ってたけど、これじゃ火に油を注ぐようなものだ。
あのいっくんとか言うやつなんて言った? 巨乳がいいって言ったよな? 今争いを止めに行こうとした井上先輩はどうだ? 巨乳だ。もしこれで触らせようなんてしたらもう終わりだ。
「君たち、お乳付きたまえ!」
「ああああああああああ、ちょっとまてやごらああああぁぁぁぁ」
二人に向かって胸を触らせようとした発言を何とか聞こえない様に俺は大声をあげて三人の元に走った。
どうだろうか、井上先輩の声は消せただろうか? もし消せてなかったら終わりだ。
「んだよお前、いきなり大声出してきやがって。それにそっちの巨乳の人、何か言ったか?」
「あぁ、私はおち――」
「てめぇごら! いっくんとか言うやつ! お前何て言った!」
井上先輩に今は言葉を喋らせては駄目だ。今回ばかりは絶対に井上先輩の胸では救えない。それが分かっているのは俺だけだ。モニターの向こうの部員達にもこの声は聞こえてない。今解決できるのはたぶん俺だけだ。
それに、このいっくんとか言うやつは聞き捨てならない言葉を言いやがった。撤回するまで絶対に許せない。
「あ? 煩いって言ったんだよ」
「そうじゃないだろ!」
「は?」
「お前、その子に何て言ったんだって聞いてんだよ」
俺はこのふつふつと湧き上がる怒りに体が燃えてしまいそうだ。
「何って、無理なもんは無理だって言ったんだよ」
「無理……? だって?」
「そうだよ、貧乳なんて無理だって言ったんだよ。これで満足か?」
こいつは……言ってはいけないことを言った。
「貧乳がクソだ? まな板だ? 絶壁だ?」
「貧乳なんて揉むこともできねぇ劣等種だよ。これは女に生まれた価値がないにも等しい」
「揉めないから劣等種だ? 揉めないからクソだって言うのか? 貧乳の価値も分かってないお前の方がよっぽどクソだね」
「おい悠斗、どうした? ここは私が――」
「先輩はちょっと黙っててください」
強く言いすぎたか? 井上先輩はどうしたらいいかというように困惑していた。
それでも、俺が言ったように、しっかりと口はつぐんでくれている。後で謝っておこう。
「誰がクソだてめぇ」
「別に無理に貧乳の良さをお前に押し付けようとは思わない、けどな、お前は一線を越えたんだよ。それが俺はどうしても許せない」
こいつは、貧乳女子が一番悩んでることを目の前でクソ呼ばわりした。胸は女の中でデリケートな部分だ。それをこの女の子は言われたんだ。
それも彼氏にだ。今まで付き合っていた彼氏にそんなことを言われ、あまつさえ貧乳が好きだと言えば近づけるからなんて理由で?
それに、俺からすればあれは貧乳じゃない。普乳だ。
スポーツブラか何かをしているせいで、よりスレンダーに見えるだけで、Bカップはあるはずだ。Bカップもあれば貧乳なんて言わない。
「この子はお前が貧乳好きだからって理由で、無理してスポーツブラ使ってわざわざ小さく見せてんだよ! それに、Bカップくらいはあるぞこの子。それだけあれば貧乳なんて言わないんだよ! てめぇヒンヌー教徒に謝れや!」
「は? お前何言ってんだよ、気持ちわりい」
「え? ……え?」
あれ? どうしてこの女の子は胸を隠して一歩さがったの? あれ? なんで!? 俺は助けてあげようと……。
”お前が目測であてたからだろ”
”服の上からサイズあてたからでしょ!”
く、くそ……。イメージが悪くなってしまったか。でも、それでも俺はこの男が謝るまで頑張ってやる。
一階から三階までの階段は、東も西校舎も同じように、通路の両端と中央にある。一つの校舎に計三つの階段があり、下駄箱のある南の正門へ向かうには南にある階段を使うのが一番適切だろう。
北には運動場、食堂がある。だから北側に近い教室のときは北の階段を使うのがいちばん近い。
そして、唯一東と西校舎を結ぶ通路は、中央階段を下りた一階の先だ。
これを改めて上から見てみたらどうだろうか? あるアルファベットの形に見えないだろうか?
そう、その形は、間違いなくHだ。
これは俺の勘違いじゃないはずだ。いや、むしろどうして気付かなかったのかが不思議なくらいだ。
学校をそんな卑猥なものを連想させる形に作らないという盲点を突かれたのか?
だとしたら、この学校を手掛けたやつはまさに策士と言っても過言じゃない。これはもう天才だ! 設計図を作った人は変態で天才に違いない。
……うん、これは盲点を突かれたっていうか、ただ俺が疲れてるだけなんだろうな。こんな考えするなんて。
自然とそうなっただけで、便利といえば便利なんだから、この形という階段の設置場所といい。
朝から色々なことがありすぎて脳も疲れてるんだろう。
この通路で起こっている争いを解決したら、才華先輩にでも紅茶をもう一杯入れて貰って一息つこう。それがいい。
だなんて考えていると、いつの間にか中庭についていた。
目の前では性徒会執行部のモニターで見たように、争いが繰り広げられている。あのときと今で違うことは、声が聞こえるということ。
あとは容姿がよくわかるくらいだ。
男の方はいかにもてそうな外見だ。高身長でおしゃれに気を使っている感じがなんとなくただよっている。それに引き換えショートボブで少し身長の小さい女の子の方は、大人しめ、控えめな感じがする。胸の方も。
「だから、何回も言わせんなって言ってるだろ?」
「でも……前のいっくんはそれがいいって……」
「前は前、今は今、もう無理なんだって」
「でも! でも!」
「あー、うっせーな。無理なもんは無理だ、いいかげんにしろよ!」
どうやらよくある別れ話みたいだった。こんなところに、部外者の俺や井上先輩が入っていいのか分からないけど、しっかり性徒会執行部の仕事をみなければならない。
「悠斗、よくみておけ。胸は争いをなくすことを」
「いっくん、私の貧乳がいいって言ってたじゃん!」
「ああ? 貧乳なんてクソだよ! 今だから言ってやるよ、あれは貧乳好き語ってお前に近づくだけが目的だったんだよ。誰が貧乳なんか、俺は根っからの巨乳好きだバーカ、貧乳、まな板、絶壁」
「うぅ……」
駄目だ、これはまずい。井上先輩は格好よく「悠斗、よくみておけ。胸は争いをなくすことを」とか言ってたけど、これじゃ火に油を注ぐようなものだ。
あのいっくんとか言うやつなんて言った? 巨乳がいいって言ったよな? 今争いを止めに行こうとした井上先輩はどうだ? 巨乳だ。もしこれで触らせようなんてしたらもう終わりだ。
「君たち、お乳付きたまえ!」
「ああああああああああ、ちょっとまてやごらああああぁぁぁぁ」
二人に向かって胸を触らせようとした発言を何とか聞こえない様に俺は大声をあげて三人の元に走った。
どうだろうか、井上先輩の声は消せただろうか? もし消せてなかったら終わりだ。
「んだよお前、いきなり大声出してきやがって。それにそっちの巨乳の人、何か言ったか?」
「あぁ、私はおち――」
「てめぇごら! いっくんとか言うやつ! お前何て言った!」
井上先輩に今は言葉を喋らせては駄目だ。今回ばかりは絶対に井上先輩の胸では救えない。それが分かっているのは俺だけだ。モニターの向こうの部員達にもこの声は聞こえてない。今解決できるのはたぶん俺だけだ。
それに、このいっくんとか言うやつは聞き捨てならない言葉を言いやがった。撤回するまで絶対に許せない。
「あ? 煩いって言ったんだよ」
「そうじゃないだろ!」
「は?」
「お前、その子に何て言ったんだって聞いてんだよ」
俺はこのふつふつと湧き上がる怒りに体が燃えてしまいそうだ。
「何って、無理なもんは無理だって言ったんだよ」
「無理……? だって?」
「そうだよ、貧乳なんて無理だって言ったんだよ。これで満足か?」
こいつは……言ってはいけないことを言った。
「貧乳がクソだ? まな板だ? 絶壁だ?」
「貧乳なんて揉むこともできねぇ劣等種だよ。これは女に生まれた価値がないにも等しい」
「揉めないから劣等種だ? 揉めないからクソだって言うのか? 貧乳の価値も分かってないお前の方がよっぽどクソだね」
「おい悠斗、どうした? ここは私が――」
「先輩はちょっと黙っててください」
強く言いすぎたか? 井上先輩はどうしたらいいかというように困惑していた。
それでも、俺が言ったように、しっかりと口はつぐんでくれている。後で謝っておこう。
「誰がクソだてめぇ」
「別に無理に貧乳の良さをお前に押し付けようとは思わない、けどな、お前は一線を越えたんだよ。それが俺はどうしても許せない」
こいつは、貧乳女子が一番悩んでることを目の前でクソ呼ばわりした。胸は女の中でデリケートな部分だ。それをこの女の子は言われたんだ。
それも彼氏にだ。今まで付き合っていた彼氏にそんなことを言われ、あまつさえ貧乳が好きだと言えば近づけるからなんて理由で?
それに、俺からすればあれは貧乳じゃない。普乳だ。
スポーツブラか何かをしているせいで、よりスレンダーに見えるだけで、Bカップはあるはずだ。Bカップもあれば貧乳なんて言わない。
「この子はお前が貧乳好きだからって理由で、無理してスポーツブラ使ってわざわざ小さく見せてんだよ! それに、Bカップくらいはあるぞこの子。それだけあれば貧乳なんて言わないんだよ! てめぇヒンヌー教徒に謝れや!」
「は? お前何言ってんだよ、気持ちわりい」
「え? ……え?」
あれ? どうしてこの女の子は胸を隠して一歩さがったの? あれ? なんで!? 俺は助けてあげようと……。
”お前が目測であてたからだろ”
”服の上からサイズあてたからでしょ!”
く、くそ……。イメージが悪くなってしまったか。でも、それでも俺はこの男が謝るまで頑張ってやる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる