いつかの白のお姫様

由井

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二章

式典

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 今日は素敵なお祝いだ。

 美しいお姫様の、誕生日。

 愛された姫の、始まりの日なんだ!

 聖女と王様の、約束された太陽のお姫様。


 彼女はきっと、世界一の幸せなお姫様になるだろう!


 そう、夜明けとともに光差す未来へ祝福を!!


 ※※

 お妃様の喪も明けぬ同日、お姫様の成人の儀が執り行われるとの知らせがありました。

 城の者達は皆、お妃様への悲しみから部屋へ閉じこもったまま出てくる気配のないお姫様へそれを伝えることを躊躇いました。しかし時間は有限、どれだけ辛くとも王様へ意を唱えらえるものは城の中にはおりませんでした。
 そんな時、お姫様の部屋の扉に立つ兵士に向こう側から声がかけられました。

 「式典が予定通りに行われると、風の囁きに伝わりました。お父様に必ず刻限には出るので、それまではそっとして置いて欲しいとお伝えください。」

 落ち着いた、静かな声はお姫様のものだと気づいた兵士は狼狽えたものの、すぐさま王様の元へと伝え走りました。兵士の知らせを聞いた王様は、姿を見せぬお姫様を残念に思いつつも数刻もすれば自分や民の前に出ると言うお姫様の言葉を信じ、喜び準備を急がせました。

 王様が城の者達に式典の準備を焦らせる頃、民の住む城下には春の日差しの中静かな季節外れの雪が降り始めておりました。
 まるでそっと、国を白く隠すかのように雪は次第に降り積もっておりました。

 「どういうことだ?このような時期にこれほどの雪が降るとは、めでたいこの日を台無しにしようとするとはまるであやつの呪いのようではないか!」

 降り積もる雪を眺めながら、王様は酷く怒り城の者へと怒鳴りつけました。

 「王様、そのようなことは決してありませぬ。お妃様は患う前も後も大変、王女様のこの日を楽しみにいらしておりました。どうか、怒りをお納めください。もう時期に民たちの前に王女様が姿を出す頃にございます。」

 王の臣下達は皆、王へと慰めの言葉を口々に唱えました。

 「おぉそうか、もうそんな刻限か!ならば私も向かわねばなるまい、この眼でしかとアレの美しさを確認せねば。」

 臣下の言葉を聞き、とたんに怒りを収めた王様はお姫様がいるはずのバルコニーのある部屋へと足早に辿り着きました。
 そしてそこには純白の、美しいレースの縁取りの布を頭から足元へすっぽりと被った女が立っておりました。

 「お父様、お久しゅうございます。この様な姿でのお目見え、どうかお許しください。今暫し民の前での言葉を、己の心と向き合い思案したいのです。」

 その布から聞こえたのは、お姫様の声でした。

 「そうかそうか、賢く聡明なそなたの言葉はそう考えずともきっと民たちの心へと響くであろうに、なんと立派な心がけなことか!ならば、私が先に民に言葉をかけよう。」

 そういって王様はバルコニーへと、歩みを進め高らかに言いました。

 『皆の者!!今日は私の美しき、愛娘の16の生誕した日である。その素晴らしき日に、わが娘の成人の儀を執り行う!太陽の姫、***の言葉をしかと心に焼き付けよ!」

 民たちは王様の言葉に歓声を上げ、けれども聞こえなかったお姫様の名前を口に出すために思い出そうとしました。その景色の前にゆっくりとお姫様はバルコニーへと足を進めました。

 「民達よ、その歓声はなんとする。 今日この日に、我が国の聖女が月へと還られてしまったというのに、なんと思う。忌々しくも愚王へと囚われた、哀しみの聖女への手向けの言葉もないと言うのか。」

 凛としたその言葉に、民たちは静まり返りました。そしてそれを眼下にゆっくりと、お姫様は纏った純白を降ろしていきました。

 『あぁ、なんということだ!お姫様の黒髪が、太陽の瞳が、失われてしまった!!』

 お姫様の姿を見た民、王や臣下達まで口々に戸惑いの声をあげました。

 「愚かしい、なんと愚かしい事!高々色を失った我が身、この程度で狼狽える王も臣下も、そして民達にも果たして未来はあると言うのか。」

 在りし日に優しく朗らかな笑顔を浮かべていたはずのお姫様、けれど今この時の彼女の赤い瞳には冷たく情景を映す鏡の様な無表情しかありませんでした。

 「どういうことだッ、私の可愛い王女がどうしてこのようなことに!」

 目を見開きお姫様に掴み掛らんとする王様に、バルコニーから振り返ったお姫様は冷たい氷の様な笑みを浮かべました。

 「愚王よ、そなたの娘は死んだ。月の女神に戻った聖女と共に、その日王女もあるべき場所へと還ったのです。むしろ還るのが、遅すぎたくらいですわ。」

 「何を言っているんだ、***。どういうことだ…?お、王女の名が…。」

 王様は言いしえぬ不安に駆られ、酷く青ざめました。

 「だから言ったではありませんか、王女は死んだと。物語の中から消えたのです、そしてこの国も王女と共に時期に終わる。名もなき王女と、名もなき国は歴史も残さず想い出の跡形もなく、消え去るのです。」

 その言葉は白く美しい、大粒の雪とともに国中に降り注ぎました。

「私は銀の魔女、さぁ見ないふりなど出来ないでしょう?目は閉じました?耳は塞ぎました? それでも私の魔法は、全てを移す真実の鏡!!人々の醜さを我が力の糧とします。鏡よ鏡、私に教えておくれ!」

彼女の言葉と共に大きな銀の鏡が現れました。
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