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豚の謎
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「誰?!」
そばにあった棒を掴んで聞く私を見て男はびっくりしたように「うわ……勇ましいな……」と呟いた。
よく見たら私より年下だ。なんかボソボソっとした話し方。
あれ?
もしかして、メンストンさん家のチャーリー?
いや、でもチャーリーって13歳位だったよね。
ちょっと見ない間に背が伸びていてびっくりだ。
「マージョがいない間豚の面倒を見てやったんだよ」
チャーリーはうらめしそうな顔で言う。視線が私の持っていた棒に流れ、私は気恥ずかしくなって棒を後ろに隠す。バレバレだけど!
「母ちゃんがうるさいからさ。畑も面倒見ておいたよ」
カチッと音がしたような感じで知識が作動した。
あー。そういう取り決めだったんだ。
私がいない間はチャーリーが畑と動物の面倒を見るけれど、卵や畑の農産物は収穫していい、という取り決め。
ちょっと子供のアルバイト感覚だ。
「ありがとう」
これは素直に思った。
13かそこらの男の子が親の手伝いと学校の勉強の合間に私の家の豚の世話をしてくれたとか本当、ありがたいよ。
「お前、動物の世話、下手だからな……」
チャーリーはボソッという。なんか失礼だけどそれは確かだからうなずかざるを得ない。
「それにまだ、学校に行かなくちゃいけないから家の仕事がちょっと軽いんだ」
15歳までの子供は基本的に最低週に2日は学校に行かなくてはならない。基本的に、というのは免除される子供もいるからで、何年行くかは試験の結果による。
1時間以上歩かないと学校にはたどりつかないので、この村の子どもたちにとっては学校は必ずしも楽しい場所ではない。
三か月に一度試験があってそれに受かれば次の3ヶ月は通学しなくても良い。
成績が優秀なら飛び級して卒業もできるから子供たちは必死だ。
チャーリーはあまり物覚えが多くないらしく、毎回試験に落ちているけど。
普通だったらこのくらいの年齢で試験に受かって卒業できるから、メンストンさんも流石に「農作業は少しでいいから勉強しろ」となったのだ、とわかった。
「試験、いくつ残ってるの?」
「7つ」
……多い。
2年以上遅れてるってことだ。
「でも、お前が帰ってきたんだったらもう俺来なくていいかな」
「え」
それは困る。ていうか、むしろ帰ってきたからこそ豚や鶏の世話はお願いしたい。
「あ、あのさ、私が勉強教えてあげようか」
このチャンスを逃してしまうと大変な気がする……!
私が読み書きを教えてあげれは往復の数時間がチャーリーは浮く。その代わりに私は動物の世話と畑仕事で手が必要なときの手伝いを少しだけお願いする。
Win-Winだよ!
「お前、学校行ってなかったよな」
「全部の試験に9歳で受かったから」
これは本当。
そういう設定だし、実際、試験はそれほど難しいものではない。
単純な読み書きと計算で合格できる。他に宗教知識と歴史もあるけど、読み書きの練習をちゃんとしているとある程度頭に入る。
そんなに読み物が多い世界じゃないから、神話と昔の話くらいしか簡単に入手できる本はないのだ。
「そうか……母ちゃんに相談する」
「ちょっと待って、挨拶に行こうと思ってたの。一緒に行こう!」
私は家に駆け込んで、ポンカンをカバンにつめこんだ。それからふと思い立って、東京から持ってきた空の酒瓶とジャムの瓶もバッグに入れた。
バターとか、ミルクとか、あったら分けてもらいたい。小銭も持つ。行ってきます。
そばにあった棒を掴んで聞く私を見て男はびっくりしたように「うわ……勇ましいな……」と呟いた。
よく見たら私より年下だ。なんかボソボソっとした話し方。
あれ?
もしかして、メンストンさん家のチャーリー?
いや、でもチャーリーって13歳位だったよね。
ちょっと見ない間に背が伸びていてびっくりだ。
「マージョがいない間豚の面倒を見てやったんだよ」
チャーリーはうらめしそうな顔で言う。視線が私の持っていた棒に流れ、私は気恥ずかしくなって棒を後ろに隠す。バレバレだけど!
「母ちゃんがうるさいからさ。畑も面倒見ておいたよ」
カチッと音がしたような感じで知識が作動した。
あー。そういう取り決めだったんだ。
私がいない間はチャーリーが畑と動物の面倒を見るけれど、卵や畑の農産物は収穫していい、という取り決め。
ちょっと子供のアルバイト感覚だ。
「ありがとう」
これは素直に思った。
13かそこらの男の子が親の手伝いと学校の勉強の合間に私の家の豚の世話をしてくれたとか本当、ありがたいよ。
「お前、動物の世話、下手だからな……」
チャーリーはボソッという。なんか失礼だけどそれは確かだからうなずかざるを得ない。
「それにまだ、学校に行かなくちゃいけないから家の仕事がちょっと軽いんだ」
15歳までの子供は基本的に最低週に2日は学校に行かなくてはならない。基本的に、というのは免除される子供もいるからで、何年行くかは試験の結果による。
1時間以上歩かないと学校にはたどりつかないので、この村の子どもたちにとっては学校は必ずしも楽しい場所ではない。
三か月に一度試験があってそれに受かれば次の3ヶ月は通学しなくても良い。
成績が優秀なら飛び級して卒業もできるから子供たちは必死だ。
チャーリーはあまり物覚えが多くないらしく、毎回試験に落ちているけど。
普通だったらこのくらいの年齢で試験に受かって卒業できるから、メンストンさんも流石に「農作業は少しでいいから勉強しろ」となったのだ、とわかった。
「試験、いくつ残ってるの?」
「7つ」
……多い。
2年以上遅れてるってことだ。
「でも、お前が帰ってきたんだったらもう俺来なくていいかな」
「え」
それは困る。ていうか、むしろ帰ってきたからこそ豚や鶏の世話はお願いしたい。
「あ、あのさ、私が勉強教えてあげようか」
このチャンスを逃してしまうと大変な気がする……!
私が読み書きを教えてあげれは往復の数時間がチャーリーは浮く。その代わりに私は動物の世話と畑仕事で手が必要なときの手伝いを少しだけお願いする。
Win-Winだよ!
「お前、学校行ってなかったよな」
「全部の試験に9歳で受かったから」
これは本当。
そういう設定だし、実際、試験はそれほど難しいものではない。
単純な読み書きと計算で合格できる。他に宗教知識と歴史もあるけど、読み書きの練習をちゃんとしているとある程度頭に入る。
そんなに読み物が多い世界じゃないから、神話と昔の話くらいしか簡単に入手できる本はないのだ。
「そうか……母ちゃんに相談する」
「ちょっと待って、挨拶に行こうと思ってたの。一緒に行こう!」
私は家に駆け込んで、ポンカンをカバンにつめこんだ。それからふと思い立って、東京から持ってきた空の酒瓶とジャムの瓶もバッグに入れた。
バターとか、ミルクとか、あったら分けてもらいたい。小銭も持つ。行ってきます。
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