出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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38模索

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ヘラルド様が教師として来ちゃったぁぁ。私も流石にまずいと思ったし仕事の合間にも習ったステップを思い出しながら足を動かしていたけれど…足はもつれるし、足を動かす事も出来ない。
稽古用の軽装ではあるけれど絵になる素敵なおじ様だ。ポーションふりかけて足はちゃんと治っている。

「靴は鉄板が入っているからきにしないで踏みなさい。」
「お値段が分からない靴を踏まないようにします…」

踏んでもいいと言っているのだけれど。取り敢えず基礎のステップからなのだが、硬い、歩幅もリズムが違う。イザークが匙を投げたわけが分かった。

「無理です…」
「ミカエラ。」
「ふぁい…」

腰に手を回され引き寄せられた。

「ふぇ…」
「力を抜いてリードするからそれに合わせて足を動かしなさい。ぶら下がっているように見えないよう姿勢を意識すれば大丈夫。」

もう一度と、踊るけれど振り回されている訳では無いけれど、力が抜けて足が遅れるが着いていく。ぶら下がっているギリギリで1曲終わったが殆ど浮いていた気がする。つま先で少し着地するくらいで宙ぶらりん…

「私センスとか才能とかないんです…自覚しましたよ…職人にダンスとか違う方向の能力求められてもできません…」
「…では貴族の教養を1年もない短期間で覚えるのか?」
「私が拒むのはワガママなのですか?ただの孤児院育ちの平民です…ちょっと自分の趣味に走ったことが認められただけです…」

「…少し詰め込みすぎた。済まない。」

タオルをべしっ。と、押し付けられた。少し目元が暑くなっていたから目が泣きそうだったのだろうか。ふかふかのタオルで顔を埋めて反省する。技術を伸ばすことは出来るし職人だからすべきだけど、ここまで出来ないことをすることすら無駄だ。

「ミカエラの男爵は年明けには決まっている。その前に近親者にお披露目もあるしそこで食事会か舞踏会になる。」
「ご飯じゃダメなのですか?」
「立食形式でひたすら挨拶と世間話だ。挨拶する順番や相手の序列繋がりのある家や派閥日常生活で覚えたことに加えて最近の知識や政治、経済も頭に入れておく必要がある。もちろんお披露目では親しいものばかりにするつもりだが、そうもいかない。対応出来るならそちらでもいいが、ダンスの方がその辺をしなくていいから楽だ。」
「貴族の方が生まれた時から16年とか18年で培ったものを私が高々数ヶ月の半日で覚えられると思うのですか?仕事をしながら…覚えれると思うのですか??」

無理だと言っても教師を変えるのではなく別の方法を探して欲しい。私には合わない。

ヘラルドはポスポスと頭を撫でる。どうやら聞いていたのと本人が思っているのは違うようだ。

「そういう話なら私の方でも通しておこう。嫌なことを無理やりさせる必要も無い。必要性は理解したか?」

「理解も納得もしてますができるように見えますか…」
「努力は必要だよ。」
「それなら技術を磨く努力をしていたいです。」

早めにダンスレッスンも終えて別邸に戻る。
疲れた。やらかした自信だけある。




「ヘラルド殿、えっと…」

ユーリはせっかく来てくれたヘラルドを見上げると怒られそうな雰囲気ではある。

「あまり彼女に無理をさせるな。」
「では何が良いと思うのですか?立食にさせて腹芸を仕込むと?」
「それも考える方が良いだろう。無理させるよりは。探られて困る腹でもない。幸いにも王妃を初めとした上級貴族の奥方令嬢は彼女の顧客だ。」
「思いましたよ?母上やベスに作者だと、職人で1人で頑張っているのだと宣伝させるのも。」

「双子も付けておけば誰かがそばにいるだろう。男で守るより同性で護らせればいい。侯爵家の女性陣は彼女のことを気に入っているように見えるのは気のせいか?エリザベスに相談でもしなさい。」




仕事が手につかない訳では無いけれど…応急納品分のクズ石加工を行う。各種宝石のクズ石を磨いて整えてアクションを刻む。早く家を見つけて1人で自分のペースで仕事がしたい。

「私に貴族の生活なんて無理だっての…」
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