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39努力はするけど
しおりを挟むミカエラは仕事している方がいい。と、ため息を着く。ヘラルド様に失礼なことをというか暴言吐いてしまったァァァ。
「ミカエラ?どうしたの?」
作業用ではなくベッドにぼふっと飛び込んだ所をレオンハルトに見られてしまった。頭を撫でられてむすぅとレオンハルトを見上げる。
「ヘラルド様に八つ当たりっぽいことをしてしまったんです。」
「ヘラルド様怒ってました?」
「認識が違ったのか怒られなかったです。」
「じゃあ怒っていらっしゃらないよ。ミカエラに対して怒ることはないと思うよ。怒られるようなことをしない限り。」
「…お詫びしないと。」
「うん。受け入れてくださると思うよ。で、何したの?」
「ダンスが散々でしたくないってワガママ言った…」
「まぁ、俺とか兄上は昔から叩き込まれてたからね。大丈夫だよ。母上や義姉上から爪の塗料のことが大好評見たいで細い絵付が出来る人間が引っ張りだこだって。」
「凄いですね…」
「気分転換に何したい?邸から出てもいいし、温室もある。」
「…元の生活に戻りたいです。不便でしたけど自由でしたから。」
貴族って面倒臭い。そう思って身体を起こす。宙ぶらりんにされてほとんど疲れてないけれど。精神的にくる。ドスっと、頭突きをするようにもたれ掛かる。レオンハルトは抱きしめるなんてことはしないでよしよしと頭を撫でてくれた。
「ミカエラ、抱きしめたほうがいい?許してくれるならだけど。」
「許可いるんですか?」
「婚約者でも恋人でもないし。ミカエラも嫌だろ?」
「求む、人肌…」
レオンハルトの膝に載せられて抱きしめられた。ただ頭を撫でられた。疲れた。でもあの時抱き上げられた時の匂いではない。もふもふしたい。絶対私疲れてる。
「ミカエラ?」
安堵して眠りについた。彼女を膝に乗せてしばらく堪能していたが寝にくいだろうとベッドに寝かせる。
今年の明けに男爵、1年後には子爵は約束されている。土地なし貴族でも望めば鉱山近くの土地を得ることも出来るだろう。
ミカエラには幸せになってもらいたいと思う。ちょっとしたことが切っ掛けで彼女の努力と才能が認められていくのは嬉しいが求められる努力が高すぎる。
「おやすみ。」
変な時間に起きてしまった。庭に出て気分転換に仕事をすべきか。外に出たい。ミカエラは深呼吸するために外に出る。あの時の巨躯のもふもふ狼は現れないだろうか。
外に出て芝生に横になり、空を眺める。狭い。孤児院でも1人変だと言われて外に出てひとり遊びばかり。歳の近い兄弟に虐められたりもした。殴り返したけれど。感情の処理の仕方がわからない。
「…」
視界にあの時の狼が現れた。ミカエラは手を伸ばしてもふもふと撫でながら身体を起こす。ぼふっとと抱きついて顔を埋める。すっごいもふもふしてる。
「夢じゃなかったぁぁぁ。会いたかった。心配だったんだ。もう貴族になる勉強嫌だよ…元の生活に戻りたいー。」
ここでの生活が嫌だという訳では無い。人はいい人達だ。私が貴族のやり方や教育についていけてないだけだ。学園の成績もとても良かったという訳では無い。
「わんこさん。私だって好きでワガママ言っているわけじゃないんだよ。ヘラルド様に八つ当たりっぽくなってしまったよ…でもさ、犬猫に玉ねぎダメなように私だってできない事の1つや2つ3つ4つあるんだよ…できないとダメ、義務だっていうけどさぁ…私はなりたくてなる訳でもないんだよ…良くしてもらってるからその分の努力をして返そうとは思うけど…厳しいよ…」
狼の首に腕を回して顔を埋めて愚痴を漏らす。ミカエラはロズウェル侯爵家の愚痴というより貴族の生態の愚痴に対して自分が出来ないのが悪いのは重々承知しているがこっちにも限界はある。
もっともっふもふしていたいのだけれど、狼が姿勢を動かして肉球で顔を押された。肉球ぷにっとしてる。肩に手を置かれてぽすんと押し倒された。
食べられるようには思えず見上げていると急激に眠くなった。
こてん。と、眠りについたミカエラを見下ろす狼は熟睡していることを確認し、狼の姿ではなく人の姿になる。
「…迂闊すぎますよ。」
眠りにつく魔法を軽く掛けただけなのにここまで効果があるのはそれほどに魔法抵抗が弱いのか、疲れ切っているのか。
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