出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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42視察

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後は孤児院を見に行くのだが、馬車に乗ろうとした。

「ミカエラ、少し休憩しよう。」
「…ありがとうございます。顔酷いですか?」
「うーん、どちらかと言うと。」

完全個室のカフェに入り果実水や焼き菓子を頼む。気分が悪い。あれを見せたかったのか…

「ミカエラ、何があったの?」
「……世間では極小数派だと言われる人向けになった知り合いです。あの状態でメイドなどは不可能かと…」
「…仲良かったとか?」
「どちらかと言うと…でも今の自分の生活やこれからのことを考えたら助けるなんて聖人君子みたいなことは出来ません。それに何かやって警備に突き出す代わりにあそこに行くなら彼女の借金を私が支払う必要がありますし…そこまでしてやろうとも思えなくて。」

それに何とかしたかったら振り払って中に入って買い取れる資金くらいはあった。だけど、それだけの事をしたのかとか、自分の抱えてるものやお世話になっているものが脳裏に過ってそうすべきでは無いと判断した。そうしたら同じような子が量産されて私が引き取るという採算性のないことが起きてしまう。

「孤児院行くのですか?」

イザークに聞かれて顔を向けるとクッキーを押し込まれた。もそもそと食べると失礼致します。と、給仕が入ってきて目の前にガラスのグラスにもりもりと盛られたスイーツが出てきた。

「これでも食べて孤児院行きますよ。」

「食べます…」

美味しい食べ物で気分が一新される私って単純…食べ終わる頃にはやる気もみなぎってよし行くぞ。と、気合いを入れ直すことが出来ていた。

「イザーク様別行動とかでは無いのですか?」
「別行動ではないです。護衛ついでに別命があるという感じです。」

深く聞く必要や理由も無い。私はただの居候なんだし。放火されてなかったらもっと面倒事になってたとか???

孤児院は少し外れた郊外の建物なのだけれども修繕をされていないのか壁もボロボロで子供同士で遊んで年が上になると下の子の世話をする環境だ。

「ここがミカエラの居た孤児院?」
「そうです。森の方に行って数人でスライムを倒したり、赤兎を捕まえて肉は夕食にしたり毛皮は束にしたら売れるから綺麗に捌いたり…院長…ケルビ男爵はたまにしか来なくて大体先生がやりくりしてた気が…」
「ミカエラ、先生を紹介してくれますか?」

イザークの用事は先生だったらしい。頷いて孤児院に入る。貴族の服装はしているけれどビクビクと隠れだした。私の時にそんなことはなかったし、私が鈍かったのかな。

「孤児院ってこんなに空気重いもの?」
「いえ?私の時はどうなのでしょうか。私はあまり周りのことを見てなかったというか、一人すっごい意地悪な兄がいて関わらないようにしていたんで。」

「貴族の方が孤児院に何か…ルシア先生お久しぶりです。ミカエラです。」
「…まぁ、ミカエラ!?久しぶりですね。1度も帰ってこなかったのは貴方だけでしたから心配だったのですよ?」

護衛2人の視線が痛い。
「マルセルで馬車馬のように働いてたからそんな暇なかったし…イザーク様、この方がルシア先生です。ずっとこの孤児院にいてくださってます。」
「わかりました。手紙の件もあるので2人は孤児院のどこかにいてください。」
「…場所決めなくて良いのですか?」
「広くもないので私が見つけます。」

ミカエラとレオンハルトで設備はあまり変わってないからと中を見せるがそれなりに衝撃的らしい。

「ミカエラ、遠征とかで見た施設はまだマシだったはずなんだけど」
「あの院長ですからね。」
「普通もう少し強かにするものだけど…」
「だと思います。多分何ですけど、ユーリ様から後で感想聞かれる気がします。私の視点の違和感とレオン様の違和感は違うでしょうし、イザーク様はレオン様寄りだと思いますから。」
「兄上にお土産話は?って聞かれそうだし、イザークは当然視察くらいしてましたよね?って顔してそう。」

と言っても私は記憶との違和感でしかない。

「ミカ姉?」
「リサ!わー久しぶり!」

久しぶりー。と、駆け寄ろうとしたがこの格好だからそれは出来ない。

「お貴族様みたいな服!!」
「これでもマシな方なんだけどね。」
「お貴族の愛人??」
「いやいや。護衛というか、お世話になってる家の人。」
「貴族の愛人になったから?」
「もういいよ愛人でもなんでも。なんか、私達がいた時より雰囲気暗くない?」

聞いてみたかった。全体的に暗い。どこがというのではなく全体的に。

「ミカエラ、彼女は?」
「リサ。私の一つ下です。もう少し年上もいたんじゃない?」

リサと呼ばれた少女は辺りを見渡してそれが…と、口を開いた。

「ここじゃ誰が聞いてるか分からないから…」

「大丈夫。レオン様、盗聴防止お持ちですよね?」
「持ってるし、最初から起動させてるから気にしなくていいよ。」
「なんの話し?」

「盗み聞きされないための魔導具。私は自分の持ってないから。で、どうしたの?」

リサはそれが…と、口を開いた。



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