出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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56初仕事

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本日はヘラルド様の邸で夜会があるからパートナーとしての参加の日。新作の髪飾りがあるなら持ってくるように。ヘラルド様と私の当日の花のモチーフやドレスの色まで書いてあったのでシクラメンやバラ。立体的にした蝶に羽は貝殻のシートで紫を基調としながらも美しく見えるように。何個か作った。ギルドにも出したが…

「この衣装で私の生活費どれくらい消えるのでしょう。」
「今日はお役目の日ですからね。こちらの髪飾りは全て使わせていただきます。」

あっという間にどこぞの貴族のご令嬢のように仕上がった。サイズいつの間に計られたのだろう。凄い華やかだ。

「蝶の髪飾りが1番際立って美しいですね。」
「新作です。」

爪の塗装も自分でしたがそれなりに綺麗にできているはず。自分でクズ石をワンポイントで載せてみたりしたがいい感じだ。お化粧も施されたが…泣けないやつ。

「ほぅ…」
「これ、他の愛人希望殺到しません?」
「そう見えないようにするのが私の技量だ。似合っているので自信を持ちなさい。」
「ダンスないですよね!?」
「ないない。」

取り敢えずコルセットで中身が出そうだし、ヒールの高い靴はベルトで固定しているから脱げるなんてことは無いが布が多い。夜会?というより王宮なんだけどぉ。

「ミカエラ、取り敢えず私の傍に居たらいい。魔導師団の技術協力者という話だけでいい。城で忖度された発注書の納期の話はしたくないだろう?」
「そうですね。」

会場に入ると視線がこちらに集まる。ヘラルドは大丈夫だろうか?と、目線を向けると優雅に微笑んでいた。仕事になったらあの短期間で叩き込まれた姿になっていた。貴族の顔と名前は全く一致していないし覚えなくても良いだろう。これみよがしの宝飾品をつけているので見つめはしないけれどお財布事情が分かるというものだ。

「リンドブルム公、珍しく花を伴ってなのですな。」
「あぁ、最近懇意にしている。女性でね。やっとパートナーをして貰えてね。」

顔に触れられたので見上げてニッコリとお貴族用の笑顔を向けておく。さてと何を求めているのだろう。

「その装飾品は最近流行っている職人の物ですよね。それほど揃えるとは…」

自作です。新作です。口を開いたらボロが出るからひたすらニコニコしながら話し相手ではなくヘラルド様の顔だけ見ておく。良かった、ヘラルド様の顔が良くて。眺める分は苦痛ではない。
ヴィルフリートとギルバートが仰天した顔をしていたがニコニコとして笑顔を貼り付けて過ごす。女性が誰も近寄らなかったけれど…



「ヘラルド様、アレで良かったのですか?」
「実に静かに終えることが出来たよ。また次頼むよ。」
「…甥の2人に説明をお願い致しますね?凄く驚いていましたから。」
「そうだね。明日はどうするんだ?」
「温室にお邪魔してもいいですか??夕食頃に帰ろうかと。」

ご褒美の温室見学が楽しみだ。ヘラルドは手配しておこう。と、頷いてくれた。
ドレスはヘラルド様から借りている部屋に返しておこう。宝飾品もこの部屋でいいだろう。普段着で温室に行くと侯爵家では見たことの無い花が沢山咲いていた。

「ふぉー…」
「お食事までお声かけは無しで宜しいのですか?」
「はい!」
「適宜お茶を入れに来ますので休憩をお願い致します。」

ひゃっふー。素敵な温室!!!!見たことの無い花が沢山ある。嬉しくてスケッチブックに絵を書いていく。絵心はないけれど草花とかのスケッチだけは人に見られてもいいかなくらいの腕になった。人物画は出来ない。



そして年明けと共に引っ越した。と言っても荷物はほとんどない。
迎え馬車で新居に来たけれど…商業ギルドが目と鼻の先で機材も沢山ある。

「新居…???」
「そうですよミカエラ様。」

侯爵家から派遣されてきたのが私の部屋についてて仲良くしてくれていた人だ。それと料理人は交代らしい。

「アリア、交代ですよね?」
「私は概ね専属に近いですね。ユーリ様が親しいからって。」
「あ、うん…よろしくお願いします?」
「はい、よろしくお願いされました。女男爵になったのですから楽にしてください。」

「う、うん。アリアよろしく。」

叙爵に関しては体調不良を理由に欠席して引越しにした。服もある程度補充されており城に行くための衣装、作業着、作業道具と充実していた。

「ものが揃い過ぎて怖い。」
「ヘラルド様やユーリ様達が用意したので当然ですよ。前回の掃除のこともありますから。」

アリアと話をしながら家を見る..

「まず、何処に何があるのか見よう!アリア!」
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