出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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117 非常事態

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王宮に納品をした後、魔導師団の人と図書館に足を運んで研究ネタになるようなものがないか一緒に資料を探していた。

「ミカエラさん仕事落ち着いたんじゃないですか??」
「落ち着いたのは落ち着きましたけど…何かしら注文が入っていますね。有難いことに。」
「手に職があるのは安泰ですよー。権利料も入るんでしたっけ??」
「デザインとか技法でお金が入りますよ。」

宝石の国と外国から呼ばれているから宝石の販売はとてもうるさい。職人だとよく分からないがギルドは煩雑な手続きを一手に引き受けているらしい。ギルドを介さず人に譲渡も出来ないし一定の金額、質のものは所在を明らかにしないといけないとか色々あるらしい。国宝が贋作にすり替えられていたこともあり厳格化することにしたらしい。

私は悪くないぞ?

「送迎はイザーク様なのに城では外れますねー。」
「流石に人が多いここだとイザーク様もユーリ様の方に戻りますよ。言っても私ただの庶民ですし。」
「爵位を得たので貴族ですねー。残念ながら。」

作業着では城に入れないから貴族の令息とかが着る服を着ているけれど。この袖が邪魔でまくりあげる為のベルトとボタンを付けている。袖をまくり上げて城内をスタスタとあるく。ズボンを履いているからたまに男に間違えられることが増えた。段々着飾らず雑になり始めてからではあるけれど。

「…雑」
「嫌ですか?」
「有難いですけど…」

魔導師団はすごい楽。ユーリ様達はこちらにたまにしか顔を出さない。他所で忙しいらしい。私は研究室で色々試作を作ることしかしていないし特に用事もないのでそれでいいと思っていた。距離もそこまで遠いわけでもない。そう思いながら歩いていると目の前から人が来る。滅多に通らないところを選んできたから珍しいと思いながらも端っこを歩いて道を譲るようにする。侯爵より少し年齢は上だろうか。ヘラルド様が年齢不詳だから比較対象にはならない。
 作業部屋というか、仕事場はもう少し先だがこちらを見て足が速くなる。絶対にこっちに来る。杖をついているけれど、足腰しっかりしている。ただ、なんとなく怒っている気がする。背後に何か見えるとかではないけれど雰囲気で機嫌の良し悪しってなんとなくわかる人はわかるんだろう。逃げたい。

「ミカエラ・フィル女男爵だな。」
「…はい。」

 名乗らないのか。それとも名乗らずとも通じるほどに有名な人なのか???そう思いながら隣にいる魔道士に目を向けると青ざめていた。

「ミカエラさん、スカルラッティ伯爵ですよ」

 小声でこっそりと教えてもらった。イザーク様の父親。似てない。色味や顔は似ているのだけれども雰囲気が怒っている?からなのかあまり似ていないと思った。近くの部屋を開けて入りなさいと言われた。さて、1人で知らない貴族と話をするのは禁止だと口酸っぱく言われているのだけれどもどうしたものか。

「…救援呼んできます。」

 こっそりと耳打ちされたのに頷いて伯爵が指示した部屋に入る。何を言われるんだろう。さてどうしたものか。話す内容がない…わけでもないか。ここ最近イザーク様が我が家に入り浸っているし、ユーリ様の護衛を外れているし。外れる原因が私が色々持ち込むからで…というより人前で口元を隠しながらではあったけれど…してきたから???心あたりがありすぎて墓穴掘らないようにしなければ…
 そうでもしないと墓穴を掘られてしまう。

 伯爵の護衛と伯爵、私…逃げられないし、何かされても黙殺されるんだろうな。というか、この人自身も鍛えているっぽい。どうやって時間稼ぎしよう。

「平民あがりが愚息に媚を売って何が目的だ?金か?後継ではないから問題なかろうとどうやって誑かした。」
「…」
「醜聞まみれの其方が我が愚息になんのようだ。」

 ……????醜聞???ヘラルド様の件は醜聞ではないだろう。貴族社会で技術者として囲われているという体裁にしているけれど、パトロン扱いではないのか。愛人契約は継続中だし、事前にお手紙でやりとりをしてパーティとかに参加もしている。でもそこにこの人はいなかった気がする。他に醜聞あったかな。レオンハルト様は護衛対象って言っていたし、荷物持ちって自称していたんだけれども。ユーリ様一家との買い出しは大分前だ。となると醜聞に当たることに心当たりが全くない。偉い人に囲われることは職人ではよくあることだと事前に聞いていたし、優秀な職人が囲われるのが誉ってのは庶民で職人である私でもわかることだ。さて、とすっごい怒っているように見えるから何を言っても更に怒りそうだな。血管切れないようにどう説明したものか。
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