出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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164 授業の難易度と油断

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 アレックス様からの匂いが気に食わないのか部屋に戻っても暫く離してくれない。

「イザーク様、復習しないと本当に今回はまずいんです。離してください。」
「どうされたのですか???」

 本日の授業内容を伝えるとイザーク様は仕方ないと思いながらおろしてくれた。なぜ仕方ない…いや、私の成績をある程度出すっていう仕事のために必要なんですけれど????そう思いながら見上げるとチュッと軽く口付けしてきた。このすかさず口づけをしてくるのもやめてほしい。

「借りている教科書を使いながら勉強をしましょうか。」

 本をおいている場所で復習をするが、復習というよりも研究に近い。古い法律や判例などを調べていかなければならないし、イザーク様は頭を抱えているとわかりやすく教えてくれる。一緒に考えてくれることもありがたい。どうしても政策議論とかになってしまう。それで理解を深められるなら良いけれど、頭が疲れる。

「ミカエラ様、おやつ食べられますか???」

 アリアがお菓子を持ってきてくれたのでおやつ休憩。とりあえず糖分を体が求めている。これ、話を聞き流していた大半の人間なんとかなるのだろうか。そう思ったが、自分のことを優先しなければならない。それほどに情報量は多いし、法律も新旧織り交ぜている。しかも廃止された物ではなく現役で生きて居るトンチンカンな法律も生きて居るのだから覚えておかないといけない。誰も使ってないからと廃れたかもしれないが、廃止をされていないから法律としてはしっかり生きている。
 法律の本をすべて暗記してそれを活かすくらいの記憶力と論理力を求められている気がして非常に頭が痛い講義となっている。

 学園の後期は領地運営と税に関しての講義なのにアレックス様はぶっちぎっていく。講義の内容が専門性が強すぎる。それなのに掘り下げて居るのにほとんどが聞き慣れている言葉を使って居るから聞き流して居るのかもしれないが、かなり掘り下げているし、変遷とか細かいことをさらっと説明されて居るからぼんやりと聞いていたらテスト絶対落とす。

「私のこの講義は小テストなんて細々としたことは致しません。皆様も時間の無駄だと思いますので。きちんと授業を聞いていたらわかる内容ですので頑張ってください。」

 いや、ちゃんと聞いていたらさらにわからなくなる。何を出してくるんだ。この教師。そう思いながら講義を真面目に聞いていた。難しい。そう思いながら放課後になると最初に残らないとまずいと危機感を持った人間たちで集まって自習と補習を受ける。そうしないとどう見ても試験なんて受けられそうにない。知らない単語をメモするだけで精一杯で授業だけで頭がパンクしそうになる。アレックス様がニコニコとさらに噛み砕いて説明をしてくれるから頭にすんなりと入ってくるが、量が多すぎて頭から抜け落ちていきそうだ。

 帰りの馬車では疲れて寝ることが増えた。ヤバい。覚え切れるだろうか。レフィラ令嬢のことなんて気にしてられない。それどころではない。彼女の相手をしている暇もなく、補習を受ける令嬢、令息達が守ってくれる。

「フィル子爵、なんですかアレ。」
「私が平民上がりなのが気に食わないのでしょう。」
「ミカエラ様は上位成績者ではないですか。胸を張ってくださいませ。」
「ありがとうございます。」

   ミカエラはニコリと微笑んで早足で職員棟に向かう。補習を受けた後にお互いに補完し合うが勉強量が足りない事だけが分かっていく。

「ミカエラ様、大丈夫ですか?」
「アレックス様……もう少し手加減してください。」

  笑顔で伝えるとアレックス様はニコッと笑顔を返された。

「領民の命背負う覚悟あるんですよね?常識ですよね?」
「ヴ……」
「ミカエラ様は成績次第で領地が決まるんですよね??」
「は、はい……」
「じゃあ手加減は必要ですか??」
「……ど、努力致します。」

    ガックリと肩を落とす。

「ミカエラ様は領地の広さや場所、条件が掛かってますからね。」

   撫でようとしたらふぃっと避ける。

「護衛が異性の匂いがつくとめんどくさいんです。」
「????はい。承知致しました。」

   イザーク様が迎えに来てふわりと自分の腕の中に引き寄せる。この体格差どうすべきか。どうにも出来ないんだけど。暗器がゴツゴツと当たるのだけど。痛い。

「痛いです……暗器どれだけ隠してるんです?」
「必要分ですよ。拉致誘拐諸々経験済みなのですから。帰りますよ。」
「あぅ……」

  帰り道にレフィラ嬢と鉢合わせになった。勉強しすぎでもう頭がしんどい。抱き上げられて荷物を抱えた状態で疲れた。と、天井を見上げていたら彼の顔も見えるわけで顔を眺めていると思っているのか上機嫌だ。

「毎日毎日、従僕に抱えられて療養に費やしては如何ですか?」
「……そうですね。私、下賜される領地が掛かっているので必死で勉強しないと行けないので貴方のように暇では無いのです。帰りましょう。」
「はい。ミカエラ様。」

    本当に私を抱き上げている従僕の服装をしているのが婚約者だと気付いてないのか。哀れな子。
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