出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

192 聖女（）

　聖女というのが突然変異の神性属性もちというだけだ。だから人の怪我を癒す神殿でとても重宝されて今後も魔力の多い神官確保のために神殿で一生遊んで暮らせるけれど配偶者も全て決められる人生でもあったりする。貴族の場合はそんなことはないけれど……カリアス男爵が何を目的としているかわからないけれど、魔力と魅了もちで学園で新興宗教みたいなことをしていることも黙認しているならことと次第によっては反逆罪に問われてしまう。その危険もわかってそんなことをしているのだろうか。危険な綱渡りをしている自覚はあまりなさそうだ。
　洗濯アイロンまでしてもらっているのだが、何故かヘラルド様から髪飾り、ユーリ様から新しい服を渡されてしまった。髪飾りにはヘラルド様の紋、服の刺繍にはロズウェル侯爵家の紋が露骨に刺繍されている。これをみて露骨に嫌がらせする気合と根性のある貴族は早々いないと信じたい。

「どうにかできないのですか？」
「新興宗教みたいなものであってただ金のない貴族の次男三男が何か阿呆をした。証拠もない。とりあえず放置になるね。ミカエラも実害を感じているわけでもないだろう？めんどくさい、鬱陶しいは勿論あると思うけれど。」
「これだけだと弱いですか。」
「弱いね。事実として記録はしているけれど、親を脅すにはまだ足りない。監禁とは言わないけれど、複数人の証人を立てながら殴る蹴るくらいの露骨暴行を受けたらとても嬉しいね。イザークが駆けつけて血祭りにしそうだから我慢を覚えてほしいけれど。こちらでも情報収集をしているけれどね。形違いの衣装を作ってあるから持ち帰るように。」
「？？？」
「それは魔力を込められた衣装だから着用していたらある程度の痛み軽減になるし、瞬時に私に連絡が届くような感じかな。反撃もつけたかったけれど、それをすると逆にやり過ぎる可能性もあるから今回は見送り。」

　聖女だからと国としてちやほやする予定はないそうだ。理由としては私のクズ石補助回復の方がいいらしい。なぜなら相手が人間でそれの機嫌を気にするのは忖度などが働く。そんなものをよその国の貴族であり、成り上がり男爵にするのは嫌だ。何を考えているのか、母国に通じている可能性もあるのにこれ以上好き勝手にさせるつもりもなければ防護の魔道具も価格を落とし、作り方を解放して上位貴族の使用人から家族までつけさせて密かに予防をするようにしているそうだ。
　国の歴史書には記されていないが、聖女によって国の中も荒れたようなので国としてもそれなりに対抗先が各家に受け継ぐようになっているとか。

「ミカエラ、考えてもみてよ。突発的に現れて、魔力はあるけれど礼儀作法もなしに魔力と属性を振りかざしてわがまま放題好き勝手にする相手が時々現れたら流石に長い家は対策をするよ。今回なんて魅了持ちなんだろう？？？誰も口にはしていないけれど、触らぬ神になんとやらでどうやって神殿に幽閉して有効活用してもらうか考えていると思うよ？？？自分の利益を侵害されて財産を食い潰す可能性もあるのだから。幸い王子2人は婚約者一筋のようだし、予防策も色々知っているから国としては大丈夫だよ。ミカエラ1人の被害に比べたらね。」
「……私、殴りたくなったらどうしたら良いのでしょう。」
「そこは私たちに任せなさい。場所などを用意してあげる。それまで手を出すのは禁止。まぁ、聖女（）宛の依頼は受けたとしても基本回さないようにしておくからさ。」

　それで頑張るしかないのだろう。

「ミカエラの今のすべきことは学園を優秀な成績で卒業して領地を確実に得ることだろう？？聖女（）やどこぞの辺境伯が用意したなんちゃって婚約者の対応をすることじゃないだろう？？？？」

　それもそうか。ミカエラはそう思いながら甘えるしかないのだろう。貴族のやり方は前例、判例、しきたり、習慣、伝統と新参ものには難しいことばかりなので、言われた通りに学業に精を出すことにした。ユーリ様だからその細かいことを任せても大丈夫だろう。それにしても私ってなんでこんなに面倒ごとを引き寄せる体質になってしまったのだろう。
　あのクソ工房にいる時は手を動かすだけでよかったのに最近はゆとりができたのかゆとりがあってもなくても巻き込まれているわけだから……やっぱり貴族社会と関わり出してから私の運がなくなっているというか変なものを引き寄せる星のもとなのだろうか。
　一度そういうものをみてもらった方がいいのだろうか。真剣にそういうことを悩み始めてしまった。