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第一章
ざわめき
しおりを挟む依頼の完了を報告するためにギルドへと戻ってくると、ここでも受付嬢たちがわたわたとせわしなく動いていた。
その中の一人で唯一名前を知っているミースに話しかけた。
「何かあったのか?」
「あぁっ!!ヒイラギさんお帰りなさい、心配してたんですよ!?薬草採取の依頼で森に行ったと思っていたので、あの……とにかく無事でよかったです!!」
「あ、あぁ……。」
「ホントよかったです~。あっ、そういえばドーナさんが呼んでいましたので、ギルド長室の方に行ってもらってもいいですか?」
ドーナが呼んでいる?何か用事でもあるのかな?昨日話せる範囲で自分のことは話したつもりだったんだが、まぁ行ってみればわかるか。
「わかった、取り敢えず顔を出してくる。」
ミースにそう告げて俺はドーナが待っているらしいギルド長室へと向かった。そしてその扉をノックする。
「ヒイラギだ、呼ばれたから来たんだが。」
「あ、ヒイラギか入っていいよ。」
ドアを開けソファーに腰かけていたドーナと目が合う。しかしすぐに視線をそらされてしまった。
「ま、まぁ……す、座ってくれ。」
「あぁわかった。」
今日のドーナは何故かとてもよそよそしい様子だ。初対面でもあれだけぐいぐい来ていたのが、まるで嘘のようだ。
すると彼女は、テーブルの上に置いてあった湯気の立ち昇る飲み物と、焼き菓子のようなものを勧めてきた。
「こ、これ紅茶と菓子……だ。す、好きなだけ食べてくれ。」
おぉっ!!この世界の紅茶とお菓子か。見たところ紅茶は元居た世界と変わらなさそうだな。お菓子のほうは……クッキーかな。
「ありがとう、ではいただきます。」
クッキーのような菓子を手に取り口に放り込む。甘くてとても香ばしい、それにサクサクと食感も楽しい。普通においしいお菓子だ。
「うん!!美味しい。」
かみ砕いたクッキーを飲み込み、少し甘さが残る口のなかに紅茶を流し入れる。葉の香りがダイレクトに伝わる、ダージリンより少し強めの香り。嫌になる渋味もなく、キチンと丁寧に淹れられたものだとすぐにわかった。
「紅茶もまた美味しい、いい香りだ。」
「そっ、そうかい!?それはよかったよ。じ、実はこれちょっとアタイが作ってみたん……だ。」
少し顔を赤くしながらドーナは言う。どうやら彼女はお菓子作りもできるようだ。
「そうなのか、とても良い味だった。もっと食べてもいいか?」
「も、もちろんだよ!!好きなだけ食べてくれ。」
サクサク食感のクッキーをつまみながら紅茶を飲んでいる中、俺はふとあることを思い出した。
「あ、そういえば何か用事があって呼び出したんじゃないのか?」
「よ、用事……あ、あぁ!!思い出したよ。ヒイラギ、あんたエミル樹林で何か見なかったかい?」
ついに今の今まで忘れられていた本題について切り出された。
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