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第ニ章

運命のコイントス

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 シアにはまだ包丁を握らせるのは早いため、ドーナかランのどちらかが切る担当になるのだが……。

 二人はどちらもその担当を譲りたくは無いらしく、お互いに一歩も引かずに争っていた。

「それじゃあ公平にコイントスで、どっちが野菜を切るか決めようじゃないか?」

「えぇ、そうねそうしましょう。」

 二人はどうやら平和で平等なコイントスで野菜を切る担当を決めることにしたらしい。

「それじゃあアタイは裏だ。」

「ワタシは表ね。」

 そして、ドーナが親指でコインを弾く。コインはくるくると回転しながら落下し、地面に落ちたとき上を向いていたのは……

「やった!!表ね♪」

「くっ、負けちまったかい。まぁ、こればっかりは運だしょうがないか。」

「それじゃあ今度やる時はドーナだな。」

「そうだね、楽しみってのは後にとっといたほうがイイって言うし。楽しみにしとくさ。」

「よし、役割分担も決まったところで……さっそく作ろう。」

 みんなで厨房へと入ると、俺はみんなに役割を言い渡していく。

「それじゃあシア、今回はお米をといだら水を入れずに俺のところまで持ってきてくれ。」

「うん!!わかったぁ!!」

「ドーナはこの分量で調味料を頼む。」

「わかったよ。」

「それじゃあランは俺と野菜を切ろうか。」

「えぇ!!お願いするわ。」

 指示を出した後、ランとともにまな板に向かう。

「それじゃあまずはこのキノコから切っていこう。これは、こう下を落として手でぱらぱらってほぐして終わりだ。」

「わ、わかったわ。」

 ランは緊張しているのだろうか、包丁を握る手に力が入っているように見える。

「緊張しなくていい、ゆっくりやればいいんだ。まず、左手をこう指先を少し曲げて内側に寄せて食材を押さえるんだ。」

「こう……かしら?」

「あぁ、そうだ。そしたら中指の第一間接に包丁の腹を当てる。」

 ランに包丁の扱い方の基本を少しずつ教えていく。

「うん、構えはそれで大丈夫だ。後は包丁を前に突きだすように切るんだ。」

「前に突きだすように……こうね!!」

「あぁ、そんな感じで大丈夫だ。」

 最初の一歩をしっかり踏み出せれば、後は繰り返して慣れるだけだ。

「それじゃあパラパラにほぐしてくれ。」

「わかったわ。よいしょ。」

 ランはキノコを一本一本丁寧にバラバラにしていく。

「ふぅ、人間の姿でこういう細かいことやるのって、なかなか慣れないけれど……頑張って慣れなきゃね。」

「少しずつ慣れればいいさ。それじゃあ次はこっちのキノコだ。これもさっきのキノコと同じで、下を落としてバラバラにするんだが……だいたいこのくらいの大きさにしてくれ。」

「わかったわ、任せて。」

 ランが楽しそうに取り組んでくれている間に、俺はまだ彼女ができない切りものを終わらせよう。
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