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二節 対吸血鬼専門部隊
3-2-3
しおりを挟む自分の体ごと自爆した狂気の吸血鬼。
咄嗟に異変に気が付けたエリーは爆発の衝撃を浴びることはなかった。
「まさか最後の最後に取る手段が自爆かよ。どこまでも狂ってやがる。」
吐き捨てるようにそう言ったエリーはメイに無線を繋ぐ。
「メイ、芦澤カナを奪った吸血鬼と交戦した。」
『えぇっ!?大丈夫だったの?』
「ひとまずアタシはな。アイツは自爆しやがったよ。」
『そう、エリーが無事ならそれでいいわ。』
「ひとまず、一匹吸血鬼のサンプルは確保できそうだ。こいつだけ持って帰るわ。」
『了解、気を付けてね。』
エリーが無線を切って、先程狂気の吸血鬼に首の骨をへし折られた吸血鬼へと近づいたその時……。
「アハァ、まだ終わってないヨ?」
「っ!!」
突然エリーの真横に狂気の吸血鬼が現れる。
咄嗟に彼女は手にしていたナイフで切りかかるが、ひらりと躱されてしまう。
「アハハァ、やっぱりお姉さんはスゴク面白イ。もっと遊びたいケド、今日はここマデ。ソレはアゲル。」
欠損した体を高速で修復しながら狂気の吸血鬼は、エリーの足元に転がる吸血鬼を指さした。
「こいつは持って行かねぇのかよ?」
「ソイツはいらな~イ。」
そして完全に体を修復し終えた狂気の吸血鬼は、くるりとエリーに背を向けると背中から真っ赤な羽根をはやした。
「それじゃア、マタネ?」
「二度と会いたくねぇよ。」
辛辣にそういったエリーだが、狂気の吸血鬼はそんなことお構いなしといわんばかりに飛んで何処かへと行ってしまった。
「チッ、スッキリしねぇぜ。」
(ヴラドの野郎は頭にも弱点があるっつう話だった。だから一発目は心臓を狙わず頭をぶち抜いたんだが……。そいつが裏目に出たか?)
ヴラドが言っていた二つ目の弱点である頭。それを撃ち抜いたが狂気の吸血鬼はピンピンしていた。それどころか、自分の体を自爆までさせたうえでさらに回復までさせて見せたのだ。
「まぁいい。今はこいつを回収だ。」
「が……なん、で……こん、な。」
エリーが回収しようとすると、足元の吸血鬼が突然話し始める。
「まだ、こんなところで俺はァッ!!」
そして突然起き上がるとエリーに襲い掛かる。
「お前の血を……えぁ?」
エリーへと襲い掛かったが、その次の瞬間には視界が地面に落ちていた。そして、首を失った自分の体が前のめりに倒れ込む様子が最後に目に映った。
エリーがラボへと戻ってくると、そこではメイが彼女のことを待っていた。
「お帰りエリー……って怪我してるじゃない!?」
「かすり傷だ、問題ねぇ。」
「かすり傷じゃないわよ!!早く治療してもらわなきゃ、リースさんのところ行くわよ!!」
「いででっ、人の身を労わるならそんなに強く引っ張るなって。」
そして強引にリースのもとへと連れていかれたエリーは、リースの手によって治療を受けることになった。
「いでででっ、沁みるっ!!」
「はいはい痛くない痛くない。まったくこんな火傷を負うなんて、どんな吸血鬼と戦ったんだい?」
「アイツ、血を爆発物に変えやがった。」
「血を爆発物にねぇ……。ま、その話は後で詳しく聞くよ。今は大人しくしてなさい!!」
リースによって治療を施されるエリーの苦痛の叫びがこの日ラボに木霊した。
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