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二節 対吸血鬼専門部隊
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しおりを挟む後日、エリーが確保した吸血鬼を引き渡すため、エリーとメイは一ノ瀬との待ち合わせ場所へと車を走らせていた。
二人が現地に辿り着くと、そこには一ノ瀬と何人かの研究者のような白衣に身を包んだ人物たちが二人のことを待っていた。
「おぅ、待ったか?」
車から降りたエリーが一ノ瀬へと声を掛ける。
「い、いえ、今こちらも準備を整えたところでした。」
「ん、ほんで今日は黒井とかはいねぇのか?」
「彼らの部隊には今回甚大な被害が出ましたから……その埋め合わせで忙しいらしくて。」
「そか、まぁアタシらには関係ねぇわ。」
と、二人が会話していると、ズルズルと重そうに死体袋をメイが引きずってくる。
「コレっ、あとはそっちに任せるわよ。」
「あっ、ありがとうございます!!」
一ノ瀬がチラリと背後に控えていた白衣の集団に合図を送ると、彼らがメイの運んでいた死体袋を受け取り、政府の車へと運んでいった。
「それで、もしよろしければ今回の作戦行動のレポートとか……あれば助かるんですけど。」
「もちろんあるわ。はいコレ。」
「た、助かります。」
メイから受け取ったレポートに目を通す一ノ瀬。すると、ある項目に疑問を浮かべた。
「あの、ここにある吸血鬼AとBというのは?」
「あぁ、今回現場にいたのはさっき渡した吸血鬼一匹だけじゃなかったんだわ。そいつよりもっとやべぇ奴がいたんだぜ?」
「あの被害は一体の吸血鬼によるものではなかった……そういうことですか。」
「そういうこと、そっちでもう死んじゃった部隊の人たちの検死は済ませたんでしょ?その結果によってAがやったのか……Bがやったのか、変わってくるわ。」
「検死の結果……大部分を占めたのは爆死でした。」
「ってことは、部隊の人達を殺したのは吸血鬼A……エリーが交戦した吸血鬼ね。」
一ノ瀬の情報によれば、どうやらあの現場で死んでいた部隊の人間たちの主な死因は爆死。爆発の力を使っていたのはあの狂気の吸血鬼しかいない。
「ちなみにエリーさん、一つ伺いたいことがあるんですが。よろしいですか?」
「んぁ?なんだよ。」
「今回派遣された対吸血鬼専門部隊のメンバーは実践経験も充分な方々でした。そんな人達がアッサリと死んでしまっているのに、エリーさんはどうやって生き残ったのです?」
その質問にエリーは一瞬ポカン……とするが、すぐにニヤリと笑って言った。
「ハッ、そんなもん決まってらぁ。ガチの命のやり取りの経験が違うんだよ。」
トントンと、自分の心臓の位置を親指で指し示しながら、エリーは自信満々にそう言い放ったのだった。
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