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第二章 呪われた運命
第108話 好奇心
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東雲たちがそんな作戦を企てているとはついぞ知らず、今日もルアのことを監視するためにアルはロレットの城へと足を運んでいた。
いつものように誰にも悟られることなく彼女は城の中へと足を踏み入れた。そしてきょろきょろと周囲を見渡すような仕草を見せると、ほっと一息つきながら言った。
「……今日はあのスライムはいないみたいね。」
ルアとトリトニーの絡み合いを覗いていた時、自分を眺めていたスライムの存在に気が付かずうっかり映像に映り込んでしまった。
それ以降アルは自身の存在を知ろうとしている者がいることに気がつき、監視の目に気を付けながらルアのことを眺めていた。
「そ~れにしても、なにかしら……何か空気が変?」
言い表せない違和感にアルは思わず首をかしげた。ちらりと薄暗くなりつつある空に目を向けると、たくさんの蝙蝠が羽ばたいている。
別の方向に視線を向けると、陽が暮れようとしているのにも関わらず巣へと帰ろうとしない鳥が木に止まっている。
「…………おかしい。」
アルはもとは弓の名手でもあり、狩人としての腕も超一流だ。故に狩人としての本能が警告を鳴らしている。
「お母様にあんまり目立っちゃダメ……って言われてるし。撤退ね。」
そしてアルが渋々立ち去ろうとしたその時だった。
「あんれぇ?ルア君、どないしたん?」
城の中からおっとりとした真琴の声が聞こえてくる。
彼女の言葉に含まれていたルア君というワードに、思わずアルは歩みを止めた。
「あ、あの声……狸の子ね。いったい……ルア君と何を話すのかしら。」
これから何が起こるのか……興味をそそられたアルだったが、ハッと我にかえると、ブンブンと雑念を払うように何度も首を横に振った。
「だ、ダメダメ……これは罠、罠…………なんだけど。くぅっ、どんなやり取りをするのか気になるっ。」
好奇心と、警戒心のせめぎあい……最終的にこの二つの心情のうち競り勝ったのは、好奇心だった。
「……ちょっと覗いて帰る。ちょっとだけ……ちょっとだけ…………。」
自分にそう言い聞かせ、アルは辺りの警戒をしながら声のした部屋の方へと、ふわふわと浮かびながら近付いていく。そして窓から部屋の中を覗くと、部屋の中にはルアと真琴の姿があった。
「んふふふ♪そんなにあての尻尾の感触が忘れられんかった?」
にんまりと笑みを浮かべる真琴に、恥ずかしそうにしながらもルアはコクリと頷いた。
「でもタダで触らせるわけにはあかんねぇ~。」
ゆったりとした足取りで真琴はルアに歩み寄ると、耳元で囁く。
「ルア君は~……あてに何をくれるんどす?んふふふ……♪」
耳元でそう囁かれ、恥ずかしそうにもじもじと内股になるルア。
そんな二人の様子をアルは口に手を当てながら、じっ……とこれから何が起こるのかワクワクしながら待っていた。
好奇心が完全に心を支配していたアルは、自分の背後を小さな一匹の蝙蝠が通りすぎていったのに気が付かなかった。
そしてこそこそと小声で話していた真琴とルアだったが、突然真琴は後ろを振り返ると、アルが覗いていた窓の方を見てニヤリと笑った。
「っ!!しまっ………………。」
ゾクリと冷たいものが背中を突き抜けていったアル。咄嗟に逃げ出そうとしたアルだったが、彼女の上から声が響く。
「もう遅い。四封結界っ!!」
アルが逃げ出そうとした目の前に魔力の壁が現れ、彼女のことを取り囲む。
「くっ……これは不味いわね。」
まんまと嵌められたことに気が付き、ぎりりと歯軋りをするアル。そんな彼女は自然と、背中に背負っていた金色の弓に手を伸ばしていた。
「くくくくく、まんまと罠にかかってくれたな。監視者よ。」
「ずいぶん手の込んだことをしてくれるわ……まったく。」
フワフワと宙を舞いながら結界の中に閉じ込められたアルの目の前に東雲は降り立つ。
「んふふふ、流石にあての渾身の化かしは見抜けなかったみたいやねぇ~。」
部屋の中でクスリと笑った真琴の後ろで、ルアが白煙を上げてミリアへと姿を変えた。
「あはっ♪作戦成功~。ルア君じゃなくて残念だったね~。」
「なるほど、それは見抜けなかったわ。」
「さぁ、観念するがいい。妾が魔力を込めている以上、貴様はここから出ることはできんぞ。」
そう東雲はアルへと向かって告げたが、彼女は悔しがっていた様子から一転、ニヤリと笑った。
「人の身でここまで追い詰めたこと……称賛に値するわ。」
「なんだと?」
彼女は背中の金色の弓を構えると、目をつぶりギリリと引き絞った。
「貫け……月光っ!!」
金色の弓から放たれた矢は東雲の結界をいとも容易く貫通し、バラバラに破壊した。
「なにっ!?」
「それじゃあ、またね。」
驚く東雲を尻目に一瞬にしてアルはその場から消えた。
いつものように誰にも悟られることなく彼女は城の中へと足を踏み入れた。そしてきょろきょろと周囲を見渡すような仕草を見せると、ほっと一息つきながら言った。
「……今日はあのスライムはいないみたいね。」
ルアとトリトニーの絡み合いを覗いていた時、自分を眺めていたスライムの存在に気が付かずうっかり映像に映り込んでしまった。
それ以降アルは自身の存在を知ろうとしている者がいることに気がつき、監視の目に気を付けながらルアのことを眺めていた。
「そ~れにしても、なにかしら……何か空気が変?」
言い表せない違和感にアルは思わず首をかしげた。ちらりと薄暗くなりつつある空に目を向けると、たくさんの蝙蝠が羽ばたいている。
別の方向に視線を向けると、陽が暮れようとしているのにも関わらず巣へと帰ろうとしない鳥が木に止まっている。
「…………おかしい。」
アルはもとは弓の名手でもあり、狩人としての腕も超一流だ。故に狩人としての本能が警告を鳴らしている。
「お母様にあんまり目立っちゃダメ……って言われてるし。撤退ね。」
そしてアルが渋々立ち去ろうとしたその時だった。
「あんれぇ?ルア君、どないしたん?」
城の中からおっとりとした真琴の声が聞こえてくる。
彼女の言葉に含まれていたルア君というワードに、思わずアルは歩みを止めた。
「あ、あの声……狸の子ね。いったい……ルア君と何を話すのかしら。」
これから何が起こるのか……興味をそそられたアルだったが、ハッと我にかえると、ブンブンと雑念を払うように何度も首を横に振った。
「だ、ダメダメ……これは罠、罠…………なんだけど。くぅっ、どんなやり取りをするのか気になるっ。」
好奇心と、警戒心のせめぎあい……最終的にこの二つの心情のうち競り勝ったのは、好奇心だった。
「……ちょっと覗いて帰る。ちょっとだけ……ちょっとだけ…………。」
自分にそう言い聞かせ、アルは辺りの警戒をしながら声のした部屋の方へと、ふわふわと浮かびながら近付いていく。そして窓から部屋の中を覗くと、部屋の中にはルアと真琴の姿があった。
「んふふふ♪そんなにあての尻尾の感触が忘れられんかった?」
にんまりと笑みを浮かべる真琴に、恥ずかしそうにしながらもルアはコクリと頷いた。
「でもタダで触らせるわけにはあかんねぇ~。」
ゆったりとした足取りで真琴はルアに歩み寄ると、耳元で囁く。
「ルア君は~……あてに何をくれるんどす?んふふふ……♪」
耳元でそう囁かれ、恥ずかしそうにもじもじと内股になるルア。
そんな二人の様子をアルは口に手を当てながら、じっ……とこれから何が起こるのかワクワクしながら待っていた。
好奇心が完全に心を支配していたアルは、自分の背後を小さな一匹の蝙蝠が通りすぎていったのに気が付かなかった。
そしてこそこそと小声で話していた真琴とルアだったが、突然真琴は後ろを振り返ると、アルが覗いていた窓の方を見てニヤリと笑った。
「っ!!しまっ………………。」
ゾクリと冷たいものが背中を突き抜けていったアル。咄嗟に逃げ出そうとしたアルだったが、彼女の上から声が響く。
「もう遅い。四封結界っ!!」
アルが逃げ出そうとした目の前に魔力の壁が現れ、彼女のことを取り囲む。
「くっ……これは不味いわね。」
まんまと嵌められたことに気が付き、ぎりりと歯軋りをするアル。そんな彼女は自然と、背中に背負っていた金色の弓に手を伸ばしていた。
「くくくくく、まんまと罠にかかってくれたな。監視者よ。」
「ずいぶん手の込んだことをしてくれるわ……まったく。」
フワフワと宙を舞いながら結界の中に閉じ込められたアルの目の前に東雲は降り立つ。
「んふふふ、流石にあての渾身の化かしは見抜けなかったみたいやねぇ~。」
部屋の中でクスリと笑った真琴の後ろで、ルアが白煙を上げてミリアへと姿を変えた。
「あはっ♪作戦成功~。ルア君じゃなくて残念だったね~。」
「なるほど、それは見抜けなかったわ。」
「さぁ、観念するがいい。妾が魔力を込めている以上、貴様はここから出ることはできんぞ。」
そう東雲はアルへと向かって告げたが、彼女は悔しがっていた様子から一転、ニヤリと笑った。
「人の身でここまで追い詰めたこと……称賛に値するわ。」
「なんだと?」
彼女は背中の金色の弓を構えると、目をつぶりギリリと引き絞った。
「貫け……月光っ!!」
金色の弓から放たれた矢は東雲の結界をいとも容易く貫通し、バラバラに破壊した。
「なにっ!?」
「それじゃあ、またね。」
驚く東雲を尻目に一瞬にしてアルはその場から消えた。
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