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第二章 呪われた運命

第125話 飢えた獣に狙われた末路

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 東雲たちから逃げ出したルアは、何とか透明化を維持しながら周りの風景に紛れ込んでいた。気配を消し、魔力も消し、自身という存在を自然の中に一体化させて東雲たちの目から逃れようと必死だった。

 それもそのはずで、彼女たちは今……彼のことを弄ばんとして探しているのだから。しかし彼女たちに今のところルアの姿を見つけ出す方法は無いはず……。その一筋の希望がルアの心の安らぎになっていた。

(ば、バレない……よね?)

 ドクンドクンとルアの心臓の鼓動が緊張に応じて大きくなる。

 そして足音が聞こえてきた……。

「ん~どこやろねぇ~。」

(こ、この声は……真琴さん?)

 聞こえてきた足音とともに、ルアの耳に入ってきたのはおっとりとして、独特のなまりがある真琴の声だった。すると、隠れているルアの真横を真琴が通りすぎていく。

 ちょうどルアの顔の真横を魅惑のもふもふの尻尾が通りすぎていく。

(そういえば……真琴さんの尻尾柔らかくて、もふもふで気持ちよかったなぁ~。もう一回触らせてくれないかな。)

 ルアは最初真琴と出会ったときに触れた、彼女のもふもふの尻尾の感触を思い出していた。

「……こっちにはおらんみたいやねぇ~。向こう行ったかな?」

 そして真琴は再びルアを探しにどこかへと歩きだし、彼の近くから消えた。

(ホッ……良かった。流石にバレてないみたい。それにしても、今こうやって透明になってるんだったら……真琴さんの尻尾触れたんじゃ…………。)

 透明になっているならばバレる心配もないと、頭を悪い考えがよぎったルアだったが、すぐにその思いを振り払うように首をブンブンと横に振った。

(だ、ダメダメっ!!今やろうとしてたことって……ち、痴漢だよね!?そんなことはしちゃダメ…………。)

 仮にもし、そんなことをしてしまったら……後が怖い。何をされるかわかったものではないし、アルのように東雲にの烙印を押されてしまう可能性もある。

 邪念を振り払い、必死に気配を殺していると……遠くの方で声が聞こえてきた。

「真琴ちゃ~ん、そっちいた~?」

「おらへんかったよ~。見た限りでは……ね。」

「そっか~、こっちにもいなかったんだよね~。」

(あっちの方で真琴さんとミリアさんが話してる……。)

 ルアは彼女達の会話に聞き耳をたてることにした。

「ホントどこ行っちゃったんだろ~……流石にそんなに遠くには行ってないと思うけど。こう気配も魔力も完全に消されちゃうとさっぱりわかんないや。」

「でも、ミリアはんとっても楽しそうな顔してはりますえ?」

「あははっ♪わかる~?やっぱりさ、逃げられるってそそられるんだよね~。意地でも見つけ出したくなるって言うのかな?」

「んふふふ、それに関しては同感どすなぁ~。」

「じゃあ、もう一回あっちの方を調べてくるよ。」

「あても行ってますわ。」

 それを最後に真琴とミリアの声は聞こえなくなった。そして二人がルアのいる場所から離れていったことにホッと胸を撫で下ろしていると、彼はあることに気が付いた。

(あれ?そういえば、東雲さんが……いない?それにアルさんもいな…………。)

 先ほどの会話に東雲とアルがいなかったことに気が付いたルア。そんな時、突然後ろから声をかけられた。

「み~つけたっ♪」

「っ!?」
 
 咄嗟に後ろに飛び退いたルアだったが、先ほどまで後ろには何もなかったはずが、むにゅん……と柔らかい何かに動きを止められてしまった。

「んふふふ♪この先は行き止まり~やよ?」

「なぁっ……ま、真琴さ……あぅっ……。」

 ルアがの動きを止めたのは真琴の柔らかく、大きな胸だった。驚くルアの体に手を回し、あっという間に真琴はルアの事を拘束する。

「やっと捕まったか……手をかけさせてくれたな。」

「まぁ、まだまだ力の使い方が雑ね。気配も魔力も消しても、心臓の鼓動だけは消せなかったみたい。」

 真琴の胸の中で、もがくルアの前に東雲とアルが姿を現した。

「おい真琴、確かにそこにルアはいるのか?」

「間違いないどす~。あての胸の中でパタパタ暴れよりますわぁ。」

「そうか、にしても本当に透明だな。ここまで近づいても気配も魔力も感じない……。これが神の力か。」

 拘束されたルアに近づき、まじまじと眺めてくる東雲。

 そして彼女達のもとにミリアが合流した。

「あっ!!ルア君捕まえた~?」

「あぁ、今なんとか真琴が取り押さえているようだ。」

「ほぇ~……。でもぜんっぜん見えないね。これじゃあ面白くないなぁ。ねぇ、この透明化を無効化する方法はないの?女神サマ?」

「もちろんあるわ。集中力を乱せばいいのよ。」

「なるほどな。先ほどの貴様のように刺激を与えてやればよい……というわけか。」

「だからさっきのは忘れなさいってば!!」

 そんなやり取りをしていると、ミリアが何かを思い付いたようで、ニヤリと口角を歪に歪めた。

「ねぇ真琴ちゃん、ルア君の顔……どこにある~?」

「ちょうどあての胸の真ん中らへんやね~。」

「あははっ♪ならちょうどいいや。」

 ゆっくりとミリアは真琴へと近付くと、真琴の胸に自分の胸をぎゅっ……と押し付けた。すると、ちょうど二人の胸の中心にぽっかりと穴が空いている。
 そこにルアの顔があるのだ。

「む~~~~~っ!?」

「あはははははっ♪サンドイッチだよ~。」

「考えたねぇ~ミリアはん。こうやって動いたらどうやろねぇ~?んふふふふふ♪」

 むぎゅむぎゅと二人の豊満な胸に押し潰されるルアの様子を見て、東雲は顔をしかめ自分の胸に手を当てた。そして何度か揉んだ後、大きなため息を吐く。

 それと同時に、ルアの透明化が完全に解けた。

「あはっ♪ご対面だねル~ア~君っ?」

「ひっ……や、やめ…………。」

「やめろと言われてやめるやつはこの世におらん。観念しろルアっ!!」

「やぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

 カシャッ…………。

 東雲達にもみくちゃにされている最中、カメラのシャッター音が虚しく響いた。
 
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