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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第229話 ルアに迫る危機?
しおりを挟むラグエルという脅威が去ってから数日の時が流れた。そんなある日のこと……。
「んぅ?」
ベッドで眠りについていたルアは突然なにかにのしかかられたような重さを感じて目を覚ました。すると頭上から声が聞こえた。
「くくく、寝坊助め。いつまで眠っておるつもりだ?」
「し、東雲さん?」
チュンチュンと鳥が鳴くような早朝、ルアのちょうど腰の上にまたがっていたのは東雲だった。ルアの未だ寝ぼけてぼやけている視界の中で妖艶に東雲は笑っている。
彼女は体を倒してルアに密着すると、彼の耳元でささやいた。
「ルアよ、お前は妾が再びこの世に生を受けた理由は何だと思う?」
「え?……え、っとラグエルを倒すこと……ですか?」
「うむ、その通りだ。だが、それはつい先日達成してしまった。妾の目的は他にももう一つある。……くくく、まぁ鈍感なお前にはわからんか。」
「ご、ごめんなさい。」
「何も謝ることはない。妾はラグエルをこの手で殺すことが目的……としかお前たちには伝えていなかったからな。」
謝るルアの頭を優しく撫でながら東雲は言った。
「さて、素直に教えても面白くないからな。少しお前には自分で考えてもらおう。」
「じ、自分で……ですか?」
「あぁ。そのほうが面白いからな。くくく……。」
少し困った表情を浮かべるルアの表情を見て東雲は愉快そうに笑う。
「さぁ、妾のもう一つの目的はなんだと思う?ヒントは未来に関することだ。」
「未来……未来ですか。」
東雲に組み伏せられながらもルアは必死に東雲がヒントとして与えてくれた未来というワードを頼りにして彼女のもう一つの目的というものを予想する。
「くくく、まぁ未来とは言っても考えられることは様々あってわからぬか。」
「は、はい……。」
「では大きなヒントをもう一つやろう。妾のもう一つの目的は妾一人ではどうあがいても成しえぬことだ。そう、ルア……お前の存在なしではな。」
「ボクがいないとできないことですか?」
そう言われてルアはますますわからなくなったようだ。とある知識があればわかりそうなものだが、生憎ルアは前世からその類の知識が欠如していた。
そんな初々しいルアの反応を楽しむように東雲はクスリと笑い、彼の頬に手を当てて言った。
「お前はこの世界唯一のオス。そして妾はこの世界にありふれた一匹のメス。しかし妾の種族は存続の危機に瀕している……くくく、ここまで言えばわかるか?」
「あ、あぅぅ……な、なんとなくは……はい。」
「まぁもとはといえばレトのやつがこの世界を存続させるために、お前をこの世界に呼んだのだ。それを鑑みれば、お前が役目を果たす時が来たというわけだな。」
ぺろりと赤い舌を出して妖艶に東雲は笑う。今の彼女は一匹のオスを品定めするメスの表情をしている。
そして少し興奮し熱い吐息を吐きながら、東雲は恥ずかしそうに顔を赤くしているルアに顔を近づけて言った。
「さぁ、ルアよ。妾と世継ぎをつくるぞ!!」
「ちょ、ちょっとまっ……。」
「東雲ちゃん抜け駆けはいけないねぇ~。」
「いくら東雲はんでもそれはあきまへんなぁ。」
ルアに襲い掛かろうとした東雲だったが、突然彼女は背後から何者かに羽交い絞めにされてしまう。
「なっ!?貴様らっ!?いったいどこから湧いた!?」
東雲を羽交い絞めにしていたのは真琴とミリアの二人だった。
「ちょうど廊下を歩いてたら何かこの部屋からメスの濃い匂いがしてね~。ルア君の部屋だし?誰か発情してるのかな~って思ったら今にも東雲ちゃんがルア君のこと食べちゃいそうだったから取り押さえちゃったよ♪」
「ぐぬぬぬ、思わぬところで邪魔が……。」
「ルア君驚かせたね。東雲ちゃんは私たちが連れてくから安心して休んでてよ。」
「くぬぁ~っ!!離せ、離すのだッ!!妾は世継ぎを残さねばならんのだ~!!」
「ほななルア君。」
そうして暴れる東雲をミリアと真琴の二人は引きずっていった。ラグエルとの戦いのせいでまだ完全に力を取り戻していない東雲は二人の力に抗うことはできず、なすがまま連行されていった。
こうしてルアの貞操喪失の危機は去ったのだった。
しかしこれからも油断ならない日常は続きそうだ。
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