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第三章 魔族と人間と
第175話
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夜は明けて次の日……人間と魔族との国境に、アベルが総括する魔族の軍約三千人。プラス、アベルにノア、カミルにヴェル、アスラの三龍達。そしてゼバスと私が加わった。
念のため少しは国に残しておかないとという理由で、今回は三千人規模に収まっているが……実質これが魔王軍の総戦力と言っても過言じゃない。言わずもがな最強であるアベルを始め、三龍もそろってるしな。
そしてアベルが綺麗に並んだ軍の前に立つと、一つ咳払いをしてから話し始めた。
「こほん……まず最初に知っておいてもらいたいんだけど、今日皆に集まってもらったのは、戦争をするためじゃないから勘違いしないようにね?」
まずアベルは今回彼らを招集した理由から話し始めた。
「みんなも知っている通り、最近はボク達魔族と人間とが徐々に手を取り合ってる。そして今回は……みんなの力を使って残ってる人間達に降伏をさせたいんだ。」
アベルは今回の進軍の目的を集まったみんなに話す。彼女の言葉に反対の意見を申し付ける人はいなかった。
「多分、簡単には降伏してくれないだろうけど……この作戦の成功のあかつきには今後二度と、種族間で戦争や争いのない未来が待ってる。だから、みんなの力を貸して?」
「「「おぉ~~~ッ!!」」」
アベルの声に集まった兵士たちが雄たけびのような声を上げた。そんな彼らの姿を見て私の隣にいる三龍たちがポツリと呟いた。
「お~お~、勇ましいのぉ。」
「んね~?それに反対する輩もいなさそうだし、うまくいきそうな予感がするわ~。」
「心意気や良しだな。」
カミル達も彼らの士気には満足しているようだ。
「みんなの安全はボク達が保証するから安心してついてきてね。」
アベルのその言葉に再び大きな雄たけびのような歓声が上がる。それに満足したようにうなずいた彼女は、みんなに背を向けて大きく空間を切り裂いた。
「それじゃあ……進軍開始。」
アベルの合図とともに彼女の後ろに兵士達が続き、空間の裂け目へと入っていく。
そして最後の一人が空間を通ったのを見送ると、私とカミル達もそこをくぐった。
すると、既にアベルの指揮のもと兵士達は動き、目の前の街を囲うように陣をとっていた。
「おぉ~……こうしてみると、圧巻だな。」
大勢の兵士が街を取り囲んでいる様は、まさに圧巻だった。
「では妾達も配置につこうかのぉ~。」
カミル達も街を囲うように三方向に散らばって配置についた。これで仮に人間達が陣形の一点突破を図ったとしても、最高戦力の内誰かがカバーできるようになっている。
まさに隙の無い陣形だな。
兵士達に道を開けてもらって、アベルのところに向かうと、なにやらアベルはノアとゼバスと話をしていた。
「それじゃ、ここから先はノア達に任せるね?」
「うん!!」
話を終えたノアとゼバスは街の方へと向かっていった。それを見送るアベルに私は声をかけた。
「今のところ万事順調だな。」
「うん、一応訓練って名目でこういうの練習させてた甲斐があったよ。まさかホントにやることになるとは思ってなかったけど。」
「その訓練がしっかり板についてるじゃないか。まぁいざってときに動けなきゃ軍の存在意義がないしな。」
この練度を見る限り、今の今まで余程訓練を重ねてきたんだろうな。
「で?ノア達は今ちょうど説得に向かったのか。」
「そっ、後はこのまま何もせずに投降してきてくれればいいんだけどね~。」
「どうだろうな、有能なヤツが指揮を執ってるなら……あっさりと投降してきてくれるかもしれないが……無能なヤツなら…………。」
もしかすると……と、言いかけたときだった。
ガキィィィン!!
金属同士が強くぶつかったような甲高い音が街の方から聞こえてきた。
それと共に、ノアとゼバスが街の中からバックステップを踏みながら飛び出してくる。
そして二人を追うように三人の人影が街の中から飛び出してきた。
「ほらな?言わんこっちゃない。」
ノア達を追って街を飛び出してきた三人は、ゼバスとまったく同じ鎧を身に纏っていた。恐らく、彼等が常駐している王国騎士なのだろうな。
容赦なく剣を振りかぶり、ノアとゼバスに襲いかかる三人にノアは叫ぶように言った。
「やめてください!!私達は戦いに来たんじゃないんです!!」
「黙れ裏切り者!!魔族に身を売った貴様らにこの地を踏む資格は無いッ!!」
「この場で処断させていただきますよ。元勇者様?」
「くっ……ノア殿っ!!」
二人に襲われているノアの手助けに入ろうとしたゼバスだったが……。
「おっと、ゼバスのジジイは俺が相手だぜ?そろそろ引導を渡してやる。」
「ッ!!どけいタイラァァァーーーッ!!」
ゼバスの事をジジイ……と呼ぶタイラーという男に遮られてしまう。
そして私達の前で王国騎士とノア達の激しい戦闘が始まってしまう。そんな最中、それをじっと見て動かないアベルに私は追いかける。
「助けに入らないのか?」
「ノアから言われてたんだ。もし、こうなっても……絶対どうにかするからって。だからボクはノアを信じて待つよ。」
「そうか。なら、私もそうしよう。」
どうやらノアは事前にアベルにこうなったときにどうするかを話していたようだ。
彼女がそうすると言うなら、私達はそれを信じて待つとしよう。
念のため少しは国に残しておかないとという理由で、今回は三千人規模に収まっているが……実質これが魔王軍の総戦力と言っても過言じゃない。言わずもがな最強であるアベルを始め、三龍もそろってるしな。
そしてアベルが綺麗に並んだ軍の前に立つと、一つ咳払いをしてから話し始めた。
「こほん……まず最初に知っておいてもらいたいんだけど、今日皆に集まってもらったのは、戦争をするためじゃないから勘違いしないようにね?」
まずアベルは今回彼らを招集した理由から話し始めた。
「みんなも知っている通り、最近はボク達魔族と人間とが徐々に手を取り合ってる。そして今回は……みんなの力を使って残ってる人間達に降伏をさせたいんだ。」
アベルは今回の進軍の目的を集まったみんなに話す。彼女の言葉に反対の意見を申し付ける人はいなかった。
「多分、簡単には降伏してくれないだろうけど……この作戦の成功のあかつきには今後二度と、種族間で戦争や争いのない未来が待ってる。だから、みんなの力を貸して?」
「「「おぉ~~~ッ!!」」」
アベルの声に集まった兵士たちが雄たけびのような声を上げた。そんな彼らの姿を見て私の隣にいる三龍たちがポツリと呟いた。
「お~お~、勇ましいのぉ。」
「んね~?それに反対する輩もいなさそうだし、うまくいきそうな予感がするわ~。」
「心意気や良しだな。」
カミル達も彼らの士気には満足しているようだ。
「みんなの安全はボク達が保証するから安心してついてきてね。」
アベルのその言葉に再び大きな雄たけびのような歓声が上がる。それに満足したようにうなずいた彼女は、みんなに背を向けて大きく空間を切り裂いた。
「それじゃあ……進軍開始。」
アベルの合図とともに彼女の後ろに兵士達が続き、空間の裂け目へと入っていく。
そして最後の一人が空間を通ったのを見送ると、私とカミル達もそこをくぐった。
すると、既にアベルの指揮のもと兵士達は動き、目の前の街を囲うように陣をとっていた。
「おぉ~……こうしてみると、圧巻だな。」
大勢の兵士が街を取り囲んでいる様は、まさに圧巻だった。
「では妾達も配置につこうかのぉ~。」
カミル達も街を囲うように三方向に散らばって配置についた。これで仮に人間達が陣形の一点突破を図ったとしても、最高戦力の内誰かがカバーできるようになっている。
まさに隙の無い陣形だな。
兵士達に道を開けてもらって、アベルのところに向かうと、なにやらアベルはノアとゼバスと話をしていた。
「それじゃ、ここから先はノア達に任せるね?」
「うん!!」
話を終えたノアとゼバスは街の方へと向かっていった。それを見送るアベルに私は声をかけた。
「今のところ万事順調だな。」
「うん、一応訓練って名目でこういうの練習させてた甲斐があったよ。まさかホントにやることになるとは思ってなかったけど。」
「その訓練がしっかり板についてるじゃないか。まぁいざってときに動けなきゃ軍の存在意義がないしな。」
この練度を見る限り、今の今まで余程訓練を重ねてきたんだろうな。
「で?ノア達は今ちょうど説得に向かったのか。」
「そっ、後はこのまま何もせずに投降してきてくれればいいんだけどね~。」
「どうだろうな、有能なヤツが指揮を執ってるなら……あっさりと投降してきてくれるかもしれないが……無能なヤツなら…………。」
もしかすると……と、言いかけたときだった。
ガキィィィン!!
金属同士が強くぶつかったような甲高い音が街の方から聞こえてきた。
それと共に、ノアとゼバスが街の中からバックステップを踏みながら飛び出してくる。
そして二人を追うように三人の人影が街の中から飛び出してきた。
「ほらな?言わんこっちゃない。」
ノア達を追って街を飛び出してきた三人は、ゼバスとまったく同じ鎧を身に纏っていた。恐らく、彼等が常駐している王国騎士なのだろうな。
容赦なく剣を振りかぶり、ノアとゼバスに襲いかかる三人にノアは叫ぶように言った。
「やめてください!!私達は戦いに来たんじゃないんです!!」
「黙れ裏切り者!!魔族に身を売った貴様らにこの地を踏む資格は無いッ!!」
「この場で処断させていただきますよ。元勇者様?」
「くっ……ノア殿っ!!」
二人に襲われているノアの手助けに入ろうとしたゼバスだったが……。
「おっと、ゼバスのジジイは俺が相手だぜ?そろそろ引導を渡してやる。」
「ッ!!どけいタイラァァァーーーッ!!」
ゼバスの事をジジイ……と呼ぶタイラーという男に遮られてしまう。
そして私達の前で王国騎士とノア達の激しい戦闘が始まってしまう。そんな最中、それをじっと見て動かないアベルに私は追いかける。
「助けに入らないのか?」
「ノアから言われてたんだ。もし、こうなっても……絶対どうにかするからって。だからボクはノアを信じて待つよ。」
「そうか。なら、私もそうしよう。」
どうやらノアは事前にアベルにこうなったときにどうするかを話していたようだ。
彼女がそうすると言うなら、私達はそれを信じて待つとしよう。
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