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第二章 異次元の魔術師
強さって
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「何故……」
格上に挑むリル、その姿をメティスは冷酷な視線で、見下ろす。
いやただ冷酷なだけではない。どこか慈悲があるかのようにも見える。
「何故、貴方はそこまでして戦うのですか?
貴方自身も言っていたではありませんか、敵うはずもない相手だと」
何故、と聞かれて彼は考えてしまう。
彼女がこのタイミングで質問をしてきた理由に関して、というのもあるけれど、主たるはそれではない。
「貴方が先ほど述べた理由……誰かが悲しむからというのはこの際置いておきましょう。
何も分からなくなる、全ての可能性がなくなる。そんな曖昧な理由で貴方は戦うのですか?」
この疑問に彼は考えられない訳ではない。
言ってしまえば、その答えはそれそのものなのだ。
しかし、それでは彼女は納得しないだろう。だから、
「分からねぇな」
「は……?」
あまりにも突飛な解答に、メティスは呆気を取られてしまう。
「……納得するかどうかなんて、知らないし、お前の考えが変わるなんて一ミリも思わないけどさ。
俺は、そう想うから戦ってるんだ。忘れてはいけない。思い出さなくちゃならない。その先に何があるかなんて、検討もつかないんだけどな。
でも、言葉にできないからと言って、理由にならない訳はない。詳細な理論じゃなくて、曖昧な感情で動く。
楽しいから、嬉しいから、憧れてるから、好きだから。
——俺の場合は、そうすべきだから」
ただ純粋な感情論、だからこそ彼は動くことをやめない。その感情がある限り、彼は進み続ける。そして、なぜか彼の周りにオーラが一瞬見える。
右足も、左足も、右手も、左手も、体も、想いを再確認するほど、それらは動き始める。彼女の魔法を徐々に引きちぎるように。
「嘘……そんなことって……!」
「だから、俺は……まだ……!」
そして、リルはメティスの拘束から逃れる。
「終われないんだ!!!」
そのまま一歩踏み込み、彼女の顔に拳を喰らわせようとするが、
「くっ……黒孔!」
直前に、黒い穴に身を包まれてしまう。そして、その次の瞬間には、
「空……いや、いつの間にこんな上に飛ばされてんだ!?」
はるか上空で、青い空と目下の緑に染まる森が彼の視界に広がる。
綺麗、そうとても綺麗だ。その身が重力によって、高速落下していなければ。
「傷つけたくはなかったのだけれど!」
しかも、メティスは風の刃を、彼を囲うように展開させる。
リルは動くこともできず、その風の刃に人の身が通れるような隙間もない。
「こんなところで……何か、何か……!」
避けようもなく、防ぐ手段はその両腕しかない。しかも、両腕が不能になってしまえば、メティスと戦える状態ではなくなってしまう。果たして、彼のその両腕が真空波を防げるかどうか。
「考えろ……考え……くそ……考えられない……」
しかし、今の彼の脳では何の道筋も導きだせない。
できることといえば、
「とにかく、一つ一つ対処するしか……!」
それだけしかない。
嵐のような猛攻に、そんな単純な作戦しか思いつかないのが、彼の懸念ではあるが、じっくりと考える時間などない。
「くっ、はあっ……!」
襲いかかる半透明の刃を、彼は一つ、あるいは二つ同時に防ぎ、そして受け流していく。
右へ左へ、時には風の勢いを利用し、空中で体を飛ばしながらも。
しかし、そうするごとに彼の腕の皮は少しずつ抉られていく。ほんの少し、血も流れないほど、薄く切られていく。
だが、それは明らかな傷であり、ダメージだ。削られていることには違いなく、そして、
「っ……血が……!」
右の前腕部に大きく擦り傷ができ、血が飛ばされる。
だが、それでメティスが放つ風は最後だ。そう風の刃は。
「なっ……まだあるのか!」
今度は地面から突き出された土柱が、重力によって落ちる彼を狙う。その直径は彼の身長とほぼ同じ程度か。
重力で加速された体と真っ直ぐに上空へ打ち上げるそれがまともに衝突すれば、ひとたまりもないだろう。
「右手……いや左手で……!」
それに対してリルは左腕を引き、そして構える。その土柱を貫通させてみせると言わんばかりに。
そして、彼の利き腕は右だ。それを今使わないのは後のためだ。
「全力で、突き進む!」
リルとその柱がぶつかる、その直前に彼の拳が突き出される……!
「っずあああ!!」
彼の体は、落下のスピードを衰えさせず、土柱を裂くように割っていく。
その様はまるで達人の瓦割りのようだ。しかし、その左腕は突き進むごとに皮がめくれ、傷つき、血塗れとなる。
「ああああ!! ……っ。やっと地面についたか……」
そして、地上近くまで土柱を割ったところで、彼の体は止まる。
無数の刃と巨大な土柱という普通の人間が受ければ、死んでしまってもおかしくない攻撃を、彼の体はかすり傷が数箇所程度で済ませた。しかし、左腕に限れば、見るに堪えない状態となっている。
傷は多く、特に末端となるほど酷くなっている。そして、最も酷いのが指の関節だ。肉が剥けすぎて、骨までも見えているところがある。
「ぐがっ……! 左腕は、もう使えないか……けど、今動かなきゃ……!」
その痛みは決して小さな物ではない。けれども、彼は歯軋りをしながらなんとか耐えている。
今は痛みに悶えている場合ではない、土柱を割った衝撃で周りを舞う土埃。これを使うチャンスであると。
「今、彼女は俺の見えていないはず……!」
そして、彼は構える。重心を低くしたそれはエンプトに放った、そして先に何回も行ったあの技。
左腕に力は入っていないが、たしかにあの技だ。
メティスがどこにいるかは、空中にいる時に把握しており、その方向へと構えている。
「もう一回……もう一回だけ!」
人の身を超えたのではないかと思えてしまうほどのスピードを出す跳躍。動きの無駄を一切削ぎ落とし、人が出来る限りの技術を全て注ぎ込んだこの技の名は、
「『第七の型、牙狼・閃翔』……!」
その名を叫んだ瞬間、彼の体は土埃から飛び出し、それらを晴らし、一筋の軌跡を作り出す。
まさに一瞬、一瞬で彼は光速すらも超える。瞬きをせずとも見失うほどの速さだ。しかし、
「っ……」
目前に黒き光線が迫る。光を吸収する光線とは、これいかにと言いたいところだが、それはさて置き。
その黒いレーザーもまたメティスの魔法で、その性質を彼は知らない。それに当たれば、対象の体全体に纏わり付き、体にかかる重力が何十倍となってしまう。
何十倍の重力は、その体を動かなくするか、あるいは急激にその動きを遅くさせるか。何にせよ、詳細は彼が知るよしもない。もう一度言おう。
彼が知るよしもない。
その理由は実に簡単だ。なぜなら、
「ふっ!」
当たる直前に避けた。
低く飛んだ体から、足を地面につき、横へとずらした。たったそれだけだ。
「っ……あのスピードで……!?」
起こった事は実に簡単だが、それは異常でもある。
メティスが驚いたのは、リルのスピードで、体を横へと動かせた事だ。よほど高い洞察力で事前に読んでいたとしか思えない。しかし、そこまでの余裕が彼にあったのかも不思議だ。
さらに、彼は一切減速する事はなく、
「これで!」
メティスとの距離を詰め切る。
神速のスピード、その勢いを一切殺しきらず、拳に乗せる。これでメティスの顔を貫かんと言わんばかりのその威力は、
「ぎぃっ……まだ隠し球が……!」
不可視の障壁によって殺される。
「……リル、この『最後の手段』まで出されるとは見事です。
しかし、これでもう終わり」
リルの拳が防がれた、その隙をつき、メティスは指先に集めていた魔力を撃ち出そうとする。
それは、今さっき放った光線と全く同じ物。彼女の目に、もう手加減という文字はない。当たれば、大きな隙を生み、そこからさらに意識を失うまで攻撃されるだろう。
——まだ……まだ終わっちゃいない!
しかし、リルは道筋を探す、ここから繋がる一手を。
避ける隙はなく、右手は即座には動けない。それでも彼は何かないかと思考を巡らせる。
脳が酸素を求める中、答えは出ない。エネルギー切れ、けれどもまだ探す。
彼女は最後の手段と言った。ならば、その最後の手段の先に行ければ……
『——一度だけでいい』
「えっ?」
その時、彼の中で何かが聞こえる。声の主はすぐに理解した。
ルディアだ。
しかし、彼女はここにはいないはずだ。けれど、
『——彼を、守ってあげて』
確かに彼には聞こえた。
いや、これは耳で聞いているのではない。頭の中に直接伝わっているような感覚だ。
「これ、なのか……!」
そして、リルはある事に気付く。
その理由も、正体も。
彼の腰にかけてあるナイフ。逃げる際にルディアから渡された物。取り回しがよく汎用性に長けているが、攻撃するにはあまりにも刀身は短い。
しかし今は、今だけはこれが最適だった。
「お前の力、借りるぞ!」
道筋が見えた。そう確信したときには、彼の左腕は腰のナイフに手を取る。
右腕は突き出されているので、傷しかない左腕を使うしかなかった。けれども、問題はない。そのナイフは今だけではあるのだが、扱う者の力をほとんど必要としないのだから。
「っ……いっっっけぇぇぇぇぇ!!!」
気を失うほどの痛みを堪え、リルはナイフを掴んだ左腕を振るう。
その叫びはやせ我慢を一助する物なのか、今までよりも一際大きく、一縷の望みに懸けているかのようだ。
しかし、メティスの指からはすでにレーザーが放たれている。
それがリルに当たるの方が早いのか、それともナイフが振るわれる方が早いか。それは……!
「な……ぜ……!」
ナイフの斬撃、それがメティスのバリアを、そして黒いレーザーを斬り裂く。つまり、リルが紙一重で早く動いていた。
力がほぼ入らない、傷だらけの腕だけでも、彼女の攻撃と防御を同時に潰すそれは、ツクモの力だ。
「いぎっ……! やっぱ、無茶だったか……!」
だが、彼の左腕はナイフを振り切ったと同時に、そのナイフを離し、あらぬ方向へと放ってしまう。
傷だらけの腕ではそれが限界か。
「けど……これで……!」
「っ……!」
何にせよ、彼にはもう関係ない。次の一撃で、全てが決まるのだから。
メティスの言う『最後の手段』、それが本当であれば、彼女にリルの一撃を防ぐ手段はもうない。
いつの間にか腰まで引いていた彼の右腕、左腕以外は完璧な突きの型。
「最後だああああ!!!!!」
そこから放たれる再度の拳。真っ直ぐで、最速の一撃はもう邪魔される事はない。
メティスも、何とかしようと魔法を使おうとするが、一歩遅かった。保険として張っておいたバリア。それを打ち破られ、次の一手も斬られてしまった。
——これが、彼の……
そして、彼女は覚悟を決める。
自身の負けであると、彼はもう自身が干渉できる者ではないと。
顔へと近づく拳に、メティスは目を逸らす事はない。恐怖などなかった、あったのはそう……
「っ……何故……?」
しかし、彼女はすぐに理解する。目を開けていたからこそ、自身に降りかかる運命を受け入れていたからこそ、それらは全て無かったかのように軌道を変えていた事を、全て見えていた。
「何故、攻撃を外したのですか……?」
リルの拳、それは何にも触れず、メティスの顔には当たらず、顔の横にある空を切るだけとなった。
それは無意識でとか、体がついていかず、などではない。
「当たり前だ。攻撃する意味なんかない」
彼はあえて外したのだ。
「お前は俺の力を恐れた。なら、力で解決する訳のはダメだろ。
納得させるには俺の意思を見せる必要がある。
倒すことも視野に入れてたけど、そんなじゃあダメだ」
低くした姿勢を元に戻し、彼はよろめきながらも戦う意思がないことを示す。
その目はどこかうつろでありながらも、しっかりと何かを見定めていた。
同時に彼は悟る。もう少しで意識を失うだろうと。それほどまでに体は満身創痍の状態だ。
「私を説得できるとでも?」
「さあ。お前のことなんて全然理解できてないしな。
……けど、これが一番良い方法だと思っただけだ」
そして、彼は一呼吸置いた後、高らかに宣言するかのように、自分の想いを伝える。
「俺は殺すつもりも傷つけるつもりもない!
お前が敵であり続けようと、それを変えない!
だって、お前が死んじまったら、誰かが悲しむから……! 俺だって多分同じだろう……! だから……!」
しかし、その中でふらり、と彼の体は傾く。限界を迎えてしまったのだろう。
「まだ……!」
けれども未だ肝心な事を言えてないため、せめてそれだけでも、彼の足は踏ん張る。
「俺を……信じてくれ……それが……お前の最善でもあるから……」
まるで遺言を遺すかのように、その声は小さくなり続け、最後に彼は倒れる。
メティスは……何故か空を見上げていた。どこまでも広がる澄み切った青と、眩しく光る太陽。
リルには目もくれない。
「メティス様! お怪我は!」
そこへ、今まで動けずにいたカリューオンが、尻尾と耳を揺らしながらも走り寄ってくる。
彼女はリルが気絶する直前まで動く事ができず、主人を一人で戦わせた事と、その姿が苦戦していたようにも見え、謝意と焦りの気持ちでいっぱいだった。
「……ええ、大丈夫よ。カリュ」
「いいえ、大丈夫な訳がありません!
さっきも言いましたが、メティス様は自身に無頓着な所があります。最後にこの子が出した拳を……うん? 本当にお怪我がない……?」
不思議そうにメティスの顔を見回すカリュであったが、そこに傷どころか汚れも一切ない。
「だから、そう言ってるじゃないの。カリュはちょっと心配屋が過ぎるようね」
「も、申し訳ありません」
どこか楽しそうに冗談めかしに喋るメティス。それにカリュは少し戸惑う。
さっきも笑っていることはあったが、カリューオンには分かる。それは作り笑いに似た物で、今の笑顔はまた違うものだと。
リルとのやり取り、それでメティスの何が変わったのか。
「……あら、ルルじゃない」
そして、メティスは銀色の小型犬、ルルに気付く。
一切吠えないルルであったが、何故彼女は気づいたのか。
「さっきぶりね。あの子達の側にいなくて大丈夫なの?
……そう。男の子が看てるから来たのね。さっきのは……やっぱり貴方でしたか」
首を掻いたり、頭を撫でたりしながらも、彼女はまるでルルと会話しているかのように、喋りだす。
いや、彼女達は実際に会話をしているのだろう。他の者には聞こえないだけで。
「彼? 彼は……大丈夫。寝ているだけだから。
……ええ、ええ。大丈夫よ。そのことも」
「メティス様、その彼をどうするのですか?」
カリューオンはリルの対処の指示を仰ぐ。
本来ならば、最初の目的通りにするはずだが……
「そうね、彼は……」
メティスのその一言で、彼の今後が決まってしまう。
果たして、リルの運命は……
格上に挑むリル、その姿をメティスは冷酷な視線で、見下ろす。
いやただ冷酷なだけではない。どこか慈悲があるかのようにも見える。
「何故、貴方はそこまでして戦うのですか?
貴方自身も言っていたではありませんか、敵うはずもない相手だと」
何故、と聞かれて彼は考えてしまう。
彼女がこのタイミングで質問をしてきた理由に関して、というのもあるけれど、主たるはそれではない。
「貴方が先ほど述べた理由……誰かが悲しむからというのはこの際置いておきましょう。
何も分からなくなる、全ての可能性がなくなる。そんな曖昧な理由で貴方は戦うのですか?」
この疑問に彼は考えられない訳ではない。
言ってしまえば、その答えはそれそのものなのだ。
しかし、それでは彼女は納得しないだろう。だから、
「分からねぇな」
「は……?」
あまりにも突飛な解答に、メティスは呆気を取られてしまう。
「……納得するかどうかなんて、知らないし、お前の考えが変わるなんて一ミリも思わないけどさ。
俺は、そう想うから戦ってるんだ。忘れてはいけない。思い出さなくちゃならない。その先に何があるかなんて、検討もつかないんだけどな。
でも、言葉にできないからと言って、理由にならない訳はない。詳細な理論じゃなくて、曖昧な感情で動く。
楽しいから、嬉しいから、憧れてるから、好きだから。
——俺の場合は、そうすべきだから」
ただ純粋な感情論、だからこそ彼は動くことをやめない。その感情がある限り、彼は進み続ける。そして、なぜか彼の周りにオーラが一瞬見える。
右足も、左足も、右手も、左手も、体も、想いを再確認するほど、それらは動き始める。彼女の魔法を徐々に引きちぎるように。
「嘘……そんなことって……!」
「だから、俺は……まだ……!」
そして、リルはメティスの拘束から逃れる。
「終われないんだ!!!」
そのまま一歩踏み込み、彼女の顔に拳を喰らわせようとするが、
「くっ……黒孔!」
直前に、黒い穴に身を包まれてしまう。そして、その次の瞬間には、
「空……いや、いつの間にこんな上に飛ばされてんだ!?」
はるか上空で、青い空と目下の緑に染まる森が彼の視界に広がる。
綺麗、そうとても綺麗だ。その身が重力によって、高速落下していなければ。
「傷つけたくはなかったのだけれど!」
しかも、メティスは風の刃を、彼を囲うように展開させる。
リルは動くこともできず、その風の刃に人の身が通れるような隙間もない。
「こんなところで……何か、何か……!」
避けようもなく、防ぐ手段はその両腕しかない。しかも、両腕が不能になってしまえば、メティスと戦える状態ではなくなってしまう。果たして、彼のその両腕が真空波を防げるかどうか。
「考えろ……考え……くそ……考えられない……」
しかし、今の彼の脳では何の道筋も導きだせない。
できることといえば、
「とにかく、一つ一つ対処するしか……!」
それだけしかない。
嵐のような猛攻に、そんな単純な作戦しか思いつかないのが、彼の懸念ではあるが、じっくりと考える時間などない。
「くっ、はあっ……!」
襲いかかる半透明の刃を、彼は一つ、あるいは二つ同時に防ぎ、そして受け流していく。
右へ左へ、時には風の勢いを利用し、空中で体を飛ばしながらも。
しかし、そうするごとに彼の腕の皮は少しずつ抉られていく。ほんの少し、血も流れないほど、薄く切られていく。
だが、それは明らかな傷であり、ダメージだ。削られていることには違いなく、そして、
「っ……血が……!」
右の前腕部に大きく擦り傷ができ、血が飛ばされる。
だが、それでメティスが放つ風は最後だ。そう風の刃は。
「なっ……まだあるのか!」
今度は地面から突き出された土柱が、重力によって落ちる彼を狙う。その直径は彼の身長とほぼ同じ程度か。
重力で加速された体と真っ直ぐに上空へ打ち上げるそれがまともに衝突すれば、ひとたまりもないだろう。
「右手……いや左手で……!」
それに対してリルは左腕を引き、そして構える。その土柱を貫通させてみせると言わんばかりに。
そして、彼の利き腕は右だ。それを今使わないのは後のためだ。
「全力で、突き進む!」
リルとその柱がぶつかる、その直前に彼の拳が突き出される……!
「っずあああ!!」
彼の体は、落下のスピードを衰えさせず、土柱を裂くように割っていく。
その様はまるで達人の瓦割りのようだ。しかし、その左腕は突き進むごとに皮がめくれ、傷つき、血塗れとなる。
「ああああ!! ……っ。やっと地面についたか……」
そして、地上近くまで土柱を割ったところで、彼の体は止まる。
無数の刃と巨大な土柱という普通の人間が受ければ、死んでしまってもおかしくない攻撃を、彼の体はかすり傷が数箇所程度で済ませた。しかし、左腕に限れば、見るに堪えない状態となっている。
傷は多く、特に末端となるほど酷くなっている。そして、最も酷いのが指の関節だ。肉が剥けすぎて、骨までも見えているところがある。
「ぐがっ……! 左腕は、もう使えないか……けど、今動かなきゃ……!」
その痛みは決して小さな物ではない。けれども、彼は歯軋りをしながらなんとか耐えている。
今は痛みに悶えている場合ではない、土柱を割った衝撃で周りを舞う土埃。これを使うチャンスであると。
「今、彼女は俺の見えていないはず……!」
そして、彼は構える。重心を低くしたそれはエンプトに放った、そして先に何回も行ったあの技。
左腕に力は入っていないが、たしかにあの技だ。
メティスがどこにいるかは、空中にいる時に把握しており、その方向へと構えている。
「もう一回……もう一回だけ!」
人の身を超えたのではないかと思えてしまうほどのスピードを出す跳躍。動きの無駄を一切削ぎ落とし、人が出来る限りの技術を全て注ぎ込んだこの技の名は、
「『第七の型、牙狼・閃翔』……!」
その名を叫んだ瞬間、彼の体は土埃から飛び出し、それらを晴らし、一筋の軌跡を作り出す。
まさに一瞬、一瞬で彼は光速すらも超える。瞬きをせずとも見失うほどの速さだ。しかし、
「っ……」
目前に黒き光線が迫る。光を吸収する光線とは、これいかにと言いたいところだが、それはさて置き。
その黒いレーザーもまたメティスの魔法で、その性質を彼は知らない。それに当たれば、対象の体全体に纏わり付き、体にかかる重力が何十倍となってしまう。
何十倍の重力は、その体を動かなくするか、あるいは急激にその動きを遅くさせるか。何にせよ、詳細は彼が知るよしもない。もう一度言おう。
彼が知るよしもない。
その理由は実に簡単だ。なぜなら、
「ふっ!」
当たる直前に避けた。
低く飛んだ体から、足を地面につき、横へとずらした。たったそれだけだ。
「っ……あのスピードで……!?」
起こった事は実に簡単だが、それは異常でもある。
メティスが驚いたのは、リルのスピードで、体を横へと動かせた事だ。よほど高い洞察力で事前に読んでいたとしか思えない。しかし、そこまでの余裕が彼にあったのかも不思議だ。
さらに、彼は一切減速する事はなく、
「これで!」
メティスとの距離を詰め切る。
神速のスピード、その勢いを一切殺しきらず、拳に乗せる。これでメティスの顔を貫かんと言わんばかりのその威力は、
「ぎぃっ……まだ隠し球が……!」
不可視の障壁によって殺される。
「……リル、この『最後の手段』まで出されるとは見事です。
しかし、これでもう終わり」
リルの拳が防がれた、その隙をつき、メティスは指先に集めていた魔力を撃ち出そうとする。
それは、今さっき放った光線と全く同じ物。彼女の目に、もう手加減という文字はない。当たれば、大きな隙を生み、そこからさらに意識を失うまで攻撃されるだろう。
——まだ……まだ終わっちゃいない!
しかし、リルは道筋を探す、ここから繋がる一手を。
避ける隙はなく、右手は即座には動けない。それでも彼は何かないかと思考を巡らせる。
脳が酸素を求める中、答えは出ない。エネルギー切れ、けれどもまだ探す。
彼女は最後の手段と言った。ならば、その最後の手段の先に行ければ……
『——一度だけでいい』
「えっ?」
その時、彼の中で何かが聞こえる。声の主はすぐに理解した。
ルディアだ。
しかし、彼女はここにはいないはずだ。けれど、
『——彼を、守ってあげて』
確かに彼には聞こえた。
いや、これは耳で聞いているのではない。頭の中に直接伝わっているような感覚だ。
「これ、なのか……!」
そして、リルはある事に気付く。
その理由も、正体も。
彼の腰にかけてあるナイフ。逃げる際にルディアから渡された物。取り回しがよく汎用性に長けているが、攻撃するにはあまりにも刀身は短い。
しかし今は、今だけはこれが最適だった。
「お前の力、借りるぞ!」
道筋が見えた。そう確信したときには、彼の左腕は腰のナイフに手を取る。
右腕は突き出されているので、傷しかない左腕を使うしかなかった。けれども、問題はない。そのナイフは今だけではあるのだが、扱う者の力をほとんど必要としないのだから。
「っ……いっっっけぇぇぇぇぇ!!!」
気を失うほどの痛みを堪え、リルはナイフを掴んだ左腕を振るう。
その叫びはやせ我慢を一助する物なのか、今までよりも一際大きく、一縷の望みに懸けているかのようだ。
しかし、メティスの指からはすでにレーザーが放たれている。
それがリルに当たるの方が早いのか、それともナイフが振るわれる方が早いか。それは……!
「な……ぜ……!」
ナイフの斬撃、それがメティスのバリアを、そして黒いレーザーを斬り裂く。つまり、リルが紙一重で早く動いていた。
力がほぼ入らない、傷だらけの腕だけでも、彼女の攻撃と防御を同時に潰すそれは、ツクモの力だ。
「いぎっ……! やっぱ、無茶だったか……!」
だが、彼の左腕はナイフを振り切ったと同時に、そのナイフを離し、あらぬ方向へと放ってしまう。
傷だらけの腕ではそれが限界か。
「けど……これで……!」
「っ……!」
何にせよ、彼にはもう関係ない。次の一撃で、全てが決まるのだから。
メティスの言う『最後の手段』、それが本当であれば、彼女にリルの一撃を防ぐ手段はもうない。
いつの間にか腰まで引いていた彼の右腕、左腕以外は完璧な突きの型。
「最後だああああ!!!!!」
そこから放たれる再度の拳。真っ直ぐで、最速の一撃はもう邪魔される事はない。
メティスも、何とかしようと魔法を使おうとするが、一歩遅かった。保険として張っておいたバリア。それを打ち破られ、次の一手も斬られてしまった。
——これが、彼の……
そして、彼女は覚悟を決める。
自身の負けであると、彼はもう自身が干渉できる者ではないと。
顔へと近づく拳に、メティスは目を逸らす事はない。恐怖などなかった、あったのはそう……
「っ……何故……?」
しかし、彼女はすぐに理解する。目を開けていたからこそ、自身に降りかかる運命を受け入れていたからこそ、それらは全て無かったかのように軌道を変えていた事を、全て見えていた。
「何故、攻撃を外したのですか……?」
リルの拳、それは何にも触れず、メティスの顔には当たらず、顔の横にある空を切るだけとなった。
それは無意識でとか、体がついていかず、などではない。
「当たり前だ。攻撃する意味なんかない」
彼はあえて外したのだ。
「お前は俺の力を恐れた。なら、力で解決する訳のはダメだろ。
納得させるには俺の意思を見せる必要がある。
倒すことも視野に入れてたけど、そんなじゃあダメだ」
低くした姿勢を元に戻し、彼はよろめきながらも戦う意思がないことを示す。
その目はどこかうつろでありながらも、しっかりと何かを見定めていた。
同時に彼は悟る。もう少しで意識を失うだろうと。それほどまでに体は満身創痍の状態だ。
「私を説得できるとでも?」
「さあ。お前のことなんて全然理解できてないしな。
……けど、これが一番良い方法だと思っただけだ」
そして、彼は一呼吸置いた後、高らかに宣言するかのように、自分の想いを伝える。
「俺は殺すつもりも傷つけるつもりもない!
お前が敵であり続けようと、それを変えない!
だって、お前が死んじまったら、誰かが悲しむから……! 俺だって多分同じだろう……! だから……!」
しかし、その中でふらり、と彼の体は傾く。限界を迎えてしまったのだろう。
「まだ……!」
けれども未だ肝心な事を言えてないため、せめてそれだけでも、彼の足は踏ん張る。
「俺を……信じてくれ……それが……お前の最善でもあるから……」
まるで遺言を遺すかのように、その声は小さくなり続け、最後に彼は倒れる。
メティスは……何故か空を見上げていた。どこまでも広がる澄み切った青と、眩しく光る太陽。
リルには目もくれない。
「メティス様! お怪我は!」
そこへ、今まで動けずにいたカリューオンが、尻尾と耳を揺らしながらも走り寄ってくる。
彼女はリルが気絶する直前まで動く事ができず、主人を一人で戦わせた事と、その姿が苦戦していたようにも見え、謝意と焦りの気持ちでいっぱいだった。
「……ええ、大丈夫よ。カリュ」
「いいえ、大丈夫な訳がありません!
さっきも言いましたが、メティス様は自身に無頓着な所があります。最後にこの子が出した拳を……うん? 本当にお怪我がない……?」
不思議そうにメティスの顔を見回すカリュであったが、そこに傷どころか汚れも一切ない。
「だから、そう言ってるじゃないの。カリュはちょっと心配屋が過ぎるようね」
「も、申し訳ありません」
どこか楽しそうに冗談めかしに喋るメティス。それにカリュは少し戸惑う。
さっきも笑っていることはあったが、カリューオンには分かる。それは作り笑いに似た物で、今の笑顔はまた違うものだと。
リルとのやり取り、それでメティスの何が変わったのか。
「……あら、ルルじゃない」
そして、メティスは銀色の小型犬、ルルに気付く。
一切吠えないルルであったが、何故彼女は気づいたのか。
「さっきぶりね。あの子達の側にいなくて大丈夫なの?
……そう。男の子が看てるから来たのね。さっきのは……やっぱり貴方でしたか」
首を掻いたり、頭を撫でたりしながらも、彼女はまるでルルと会話しているかのように、喋りだす。
いや、彼女達は実際に会話をしているのだろう。他の者には聞こえないだけで。
「彼? 彼は……大丈夫。寝ているだけだから。
……ええ、ええ。大丈夫よ。そのことも」
「メティス様、その彼をどうするのですか?」
カリューオンはリルの対処の指示を仰ぐ。
本来ならば、最初の目的通りにするはずだが……
「そうね、彼は……」
メティスのその一言で、彼の今後が決まってしまう。
果たして、リルの運命は……
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彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
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