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天狗と家なき子
迷子の優斗君は天狗の迷い家(が)に その一
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大きな座卓を挟んで俺の前にいる男、ウグイス色の丹前姿でも大天狗らしい彼だが、俺が彼の台詞に何も返さないことにむっとした顔をして見せた。
すいません。
俺はあなたの言った言葉が脳みそに染み渡らなかったので、その代わりとして、翼が着物から出ていないのは翼が収納可能だからですか?なんてくだらないことを考えておりました。
だってさ。
「森羅万象界から人間界に戻す時に必ず行う処置だ。」
知ったところで消去される不要な情報じゃない?
消去方法が脳みそを弄るだったら、俺は若年性アルツハイマーとかになっちゃうんじゃない?そんな不安が出来ちゃうじゃないの。
だから聞き流したのだ。
どうせ脳みそを弄られるならば、出来るだけ少ない方がいいはずだ。
「優斗?今回は聞かないのか?森羅万象界はなんだ、と?」
「だから、聞いても結局記憶を消して聞かなかった事にするのでしょう。」
「それは人間界に戻ると言うのならば、だ。」
ぎん、と聞こえそうな眼力でこっち見るな。
「じゃあ、やはり必要ないですよ。俺は人間界に戻らなきゃ。」
「どうして?」
子供の声に俺は子供に振り返った、
子供は子供らしい好奇心ばかりの人形みたいな表情を俺に向けており、猫程度の憐憫の情しかないことを俺に思い知らせた。
「ユウトがここにいたくないって願ったから、オレはユウトを連れて来たのに。」
「ああ、そうだね。その通りだった。」
俺は家主に向き合うと、教えてください、と言った。
この世界の事を。
あれ?
家主は俺に説明してくれるどころか、俺の前に香しい緑茶と練り切りを差し出した。寒椿を模しているのかな。白とピンクがまだらな可愛い花形の練り切りで、薄いグリーンの小皿に乗っている。
「いただきます。」
「おとーさん、オレのも。オレが作ったのもユウトに出して!」
「ひらのさん、これはあなたの手作りでしたか!もしやお菓子職人様でいらっしゃいましたか?」
「う、うむ。」
ひらのさんは真っ赤になって顔を背けた。
初めて可愛らしい表情をした?
そこで俺は彼への見方が少しだけ変わった、というか、脳みそが現実修正をするべきだと訴えてきたのだ。
よくあるじゃないかって囁いて来たんだよ。
日本伝統に傾倒した外人さんが老舗旅館とか老舗の飲食店の跡継ぎと国際結婚して、その店の伝統をぼんくら跡継ぎよりもしっかりと守ってくれるってやつ。
だけど、悲しいかな、人は趣味から逃げられないんだ。
ひらのさんは日本に滞在したことで、深夜アニメかなにかにも嵌ったに違いない。その結果として、この親子はコスプレ大好きな父親によって天狗を演じているだけなんだって。
「おとーさんはしらかみさんちを守る大天狗様だよ!でね、天狗が住む家は人間界と神羅万象界の境目にあるものなんだ。オレたちはこっちとあっちを行き来して山を守らなきゃだもん。」
俺は自分の中に生まれた、現実感、を再び消去してくれた子供の頭を撫でた。
別の虚しい現実感もくれやがって、と考えながら。
白神山地って、青森のあの世界遺産な所の事だよな。
で、しらかみさんちのひらのさん?
天狗のネーミングセンスがわかんねえ。
「えへ。ユウトは迷子になったからうちに呼んだの。オレ達の家ってニンゲンにマヨイガっていわれてるって日高言ってたから、ちょうどいいよね。迷子のユウトとマヨイガの俺達。」
「そっか。俺は迷子だったか。」
なんだか納得していた。
家族に囲まれながら帰りたいと望み、とうとう家出してしまった俺だ。
「ほんとはね、オレはユウトを元気づけるだけだったんだ。おとーさんとユウトを元気づけるためにお菓子を作ったから、オレはユウトに会いに行ったんだ。」
そして俺が町をさすらう姿を見たのか。
それで俺はすぐりに攫われてここにいる、と。
これではすぐりの行為を俺は責められない。
俺はさらにすぐりの頭をぐりぐりと撫でた。
「ありがとう。すぐり。っで、日高さんって誰?」
ひらのさんが最初に俺に言った台詞も思い出したのだ。
「ここは日高の家ではない。」
記憶のない俺が帰りたいと望んだのは、日高さんの家の方だったの?
すいません。
俺はあなたの言った言葉が脳みそに染み渡らなかったので、その代わりとして、翼が着物から出ていないのは翼が収納可能だからですか?なんてくだらないことを考えておりました。
だってさ。
「森羅万象界から人間界に戻す時に必ず行う処置だ。」
知ったところで消去される不要な情報じゃない?
消去方法が脳みそを弄るだったら、俺は若年性アルツハイマーとかになっちゃうんじゃない?そんな不安が出来ちゃうじゃないの。
だから聞き流したのだ。
どうせ脳みそを弄られるならば、出来るだけ少ない方がいいはずだ。
「優斗?今回は聞かないのか?森羅万象界はなんだ、と?」
「だから、聞いても結局記憶を消して聞かなかった事にするのでしょう。」
「それは人間界に戻ると言うのならば、だ。」
ぎん、と聞こえそうな眼力でこっち見るな。
「じゃあ、やはり必要ないですよ。俺は人間界に戻らなきゃ。」
「どうして?」
子供の声に俺は子供に振り返った、
子供は子供らしい好奇心ばかりの人形みたいな表情を俺に向けており、猫程度の憐憫の情しかないことを俺に思い知らせた。
「ユウトがここにいたくないって願ったから、オレはユウトを連れて来たのに。」
「ああ、そうだね。その通りだった。」
俺は家主に向き合うと、教えてください、と言った。
この世界の事を。
あれ?
家主は俺に説明してくれるどころか、俺の前に香しい緑茶と練り切りを差し出した。寒椿を模しているのかな。白とピンクがまだらな可愛い花形の練り切りで、薄いグリーンの小皿に乗っている。
「いただきます。」
「おとーさん、オレのも。オレが作ったのもユウトに出して!」
「ひらのさん、これはあなたの手作りでしたか!もしやお菓子職人様でいらっしゃいましたか?」
「う、うむ。」
ひらのさんは真っ赤になって顔を背けた。
初めて可愛らしい表情をした?
そこで俺は彼への見方が少しだけ変わった、というか、脳みそが現実修正をするべきだと訴えてきたのだ。
よくあるじゃないかって囁いて来たんだよ。
日本伝統に傾倒した外人さんが老舗旅館とか老舗の飲食店の跡継ぎと国際結婚して、その店の伝統をぼんくら跡継ぎよりもしっかりと守ってくれるってやつ。
だけど、悲しいかな、人は趣味から逃げられないんだ。
ひらのさんは日本に滞在したことで、深夜アニメかなにかにも嵌ったに違いない。その結果として、この親子はコスプレ大好きな父親によって天狗を演じているだけなんだって。
「おとーさんはしらかみさんちを守る大天狗様だよ!でね、天狗が住む家は人間界と神羅万象界の境目にあるものなんだ。オレたちはこっちとあっちを行き来して山を守らなきゃだもん。」
俺は自分の中に生まれた、現実感、を再び消去してくれた子供の頭を撫でた。
別の虚しい現実感もくれやがって、と考えながら。
白神山地って、青森のあの世界遺産な所の事だよな。
で、しらかみさんちのひらのさん?
天狗のネーミングセンスがわかんねえ。
「えへ。ユウトは迷子になったからうちに呼んだの。オレ達の家ってニンゲンにマヨイガっていわれてるって日高言ってたから、ちょうどいいよね。迷子のユウトとマヨイガの俺達。」
「そっか。俺は迷子だったか。」
なんだか納得していた。
家族に囲まれながら帰りたいと望み、とうとう家出してしまった俺だ。
「ほんとはね、オレはユウトを元気づけるだけだったんだ。おとーさんとユウトを元気づけるためにお菓子を作ったから、オレはユウトに会いに行ったんだ。」
そして俺が町をさすらう姿を見たのか。
それで俺はすぐりに攫われてここにいる、と。
これではすぐりの行為を俺は責められない。
俺はさらにすぐりの頭をぐりぐりと撫でた。
「ありがとう。すぐり。っで、日高さんって誰?」
ひらのさんが最初に俺に言った台詞も思い出したのだ。
「ここは日高の家ではない。」
記憶のない俺が帰りたいと望んだのは、日高さんの家の方だったの?
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