神隠しは天狗の仕業といいます、が

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天狗と家なき子

居間で今

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 すぐりに半分宙に浮く勢いで引っ張られた俺がその数十秒後に連れこまれた先は、この家では居間と呼べるだろう静かで広々とした和室であった。

 床の間には季節の花が活けられて、天井付近の欄間など、鳳凰か雉みたいな鳥が彫り込まれている。
 すぐりによって差し出された大きな座布団に座らせられた俺の前にあるのは、天板に見事な螺鈿細工もある横長に大きくて黒い座卓だった。高級家具やで物凄い値段が付いているだろう、あれ、だ。
 俺を座らせたすぐりは、俺の真横に自分の座布団を置いたが、すぐり自身は俺の横並びどころか俺の右側に寄りかかるようして座った。

 それはそうするしかないだろう。
 すぐりの正面となる一メートル足らずの場所には、この部屋には似つかわしくない安っぽく小さなテレビ台が置いてあり、その台の上には俺が良く知っている俺の部屋にかってあった小型テレビが乗っているのだ。

 そのテレビには俺の部屋のクローゼットの奥にあった、捨てずにとって置いた旧式ゲーム機が繋がれている。
 すぐりは、やはり俺が捨てられずに持っていた俺のゲームソフトで、俺のだった古いゲーム機を操作して喜んでいるのだ。

 おそらくすぐりは俺がきっと彼に与えたらしいそれが故障していると俺に知らせたいみたいで、俺はとりあえず意識を集中できるものがあったと喜んで子供の希望に沿ってやった。
 つまり、遊んでいるすぐりの視線の先を、ほほえましい気持で見つめる、だ。

 まかり間違っても座卓を挟んで向かいに座っている大男に意識を戻すことなんかするものではない。
 だって怖いよ。
 この家の本当の家主らしい金髪イケメン外人風大天狗様は、本意は俺を招きたくはなかったと言いたげに俺を睨んでいるだけなのだ。

 だったら止めろよ!
 俺の手を掴んで離さないどころかぐいぐいと家の奥に連れ込もうと引っ張る幼児の行動を、一切止めようとしなかったのはなんでだよ!

「ねえ、ユウト。この先ゲームが出来なくなるの。どうして?」

 俺は家主と会話するべきだったな、とテレビ画面を見て思った。

 鴉天狗と言う子供に、人間の子供の夏休みは八月三十一日までで、三十二日など存在しないからバグになっているんだよ、って、どうやって教えていいかわからないからである。

「ユウト?」

「えーと、まずは前回お邪魔した時の事を教えてくれるかな。俺はあの、申し訳ないんだけど、あんまり覚えていないんだ。」

「森羅万象界から人間界に戻す時に必ず行う処置だ。」

 ぶっきらぼうすぎる説明に俺は結局大天狗を見返しており、やっぱり俺は見返すんじゃ無かったと思った。
 俺がすぐりに引き摺られることを止めもしなかったが、俺を出迎えた時の衣装を脱いで光沢のあるウグイス色の生地の丹前姿になる着換えはちゃんと行っていた男だ。

 天狗姿の時よりも見目麗しくなってやがる。
 俺を睨む無表情を止めてくれればもっとな!
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