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天狗と家なき子
平埜さんと夕食とキッチン
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さて、金問題も片付けば目的の夕飯の材料の買い出しだ。
それでようやくスーパー内部に入ったのだが、平埜に連れて来られた俺とすぐりには初めてのこのスーパーには、フードコートというものがあった。
俺は一瞬、すぐりがフェミレスも利用したがっていたこともあるし、今夜はここで飯を済ませたらいんじゃね?なんて思ったが、平埜さんはくそ真面目な大天狗様だった。
また、無駄に俺を睨みつける威圧感ばかり凄い人である。
スーパーの食料品売り場に真っ直ぐに向かおうとする大柄な男の後姿に対し、今日は買い物止めてフードコートで食べるなんていかがですか、なんて気軽に言えるわけもない。
俺は、ええ、双子の妹達に好評だった、煮込みデミグラハンバーグ乗せフワフワオムライスを、スーパーで買った食材にて平埜さんちのキッチンで作らせていただきましたよ。
ええ、ええ。
鴉天狗様のすぐり君たら大はしゃぎの上に、明日も、なんて騒ぐぐらいに喜んでくださりました。――平埜さんの口には合わなかったみたいだけれど。
苦虫を噛み潰す顔?そんな顔で一口一口咀嚼してらしたもんね。
まあ、煮込みっても、なんちゃって煮込みだもんな。
ハンバーグを両面焼いた後にトマトジュースを注いて煮込むことで素早く火を通し、あとからデミグラスソースとケチャップをそこに投入してソースの味を調えるというだけの時短料理でしかない。共働き両親の代りに学校帰りの俺が短時間で作れる、妹達の為の夕飯メニューの一つでしかないのだ。
熟成物の年月を生きてらっしゃる大天狗様には、料理といえないとお気に召さなかったのであろう。
「今日はありがとう。」
「はうっ。」
俺は腰にくるような素晴らしいバリトンを耳元に浴びていて、思わず洗っていた皿を取り落としそうになった。
しかし、大きな手が俺の手と皿を支えた。
「あとは我がやる。皿の片づけは、食事を作って貰った者の仕事だ。」
俺はそうだと言って流しから去るべきだ。
だけど、平埜は俺の真後ろに立っていて、俺の両脇から長い腕を伸ばして俺が取り落としかけた皿と俺の手を支えているのだ。
後ろから抱き締められている、そんな立ち位置なのだ、俺達は。
「お、俺こそ居候させてもらうし、あの。」
「我は不要か。」
めちゃ低い怖い声。
「いや、あの。一緒に洗うのはどうかなって。ほら、ここのキッチンは凄く広いしって、あれ、以前もこんな最新のシステムキッチンでしたっけ?」
俺はぼんやりと思い出していた。
記憶がない昨年の記憶じゃない。
買い物前に買い出し内容の確認のためにキッチンを調べ、キッチンにカセットコンロがあることで、すぐりに鍋をするのかと聞いたという記憶だ。
その答えは、昨年の俺がすぐりにパスタを作ってやったりした時に俺が買ったものだというものだった。俺が薪の竈を使えないからと買った品だと。
思い出したことで、俺は昨年と今の違いに急に気が付いた。
「このキッチン、――新品ですね。」
「うむ。使い勝手はどうであった?人間界のキッチンを売っている場所をいくつか見学して、一番お薦めで人気らしいものを設置してみた。」
お菓子作りのために迷い家に最新システムキッチン導入かよ。
非常識め。
だが、俺は平埜を罵倒するよりも褒めていた。
お菓子作りが俺を慰めるためのものであると俺は知っているし、このシステムキッチンが実に使いやすい素晴らしき理想のものであるのは事実だからだ。
「あなたの審美眼と決断力は最高です。」
フフッて、笑った?
俺のうなじがふわって吐息を感じたから、笑ったはずだ。
「では、一緒に洗おうか。」
「って、ちょっと待って。広いので俺の横に並んでください。てか、俺の手を使って洗うんじゃないです。二人羽織りじゃないです。」
やっぱ非常識だ、この天狗。
それでようやくスーパー内部に入ったのだが、平埜に連れて来られた俺とすぐりには初めてのこのスーパーには、フードコートというものがあった。
俺は一瞬、すぐりがフェミレスも利用したがっていたこともあるし、今夜はここで飯を済ませたらいんじゃね?なんて思ったが、平埜さんはくそ真面目な大天狗様だった。
また、無駄に俺を睨みつける威圧感ばかり凄い人である。
スーパーの食料品売り場に真っ直ぐに向かおうとする大柄な男の後姿に対し、今日は買い物止めてフードコートで食べるなんていかがですか、なんて気軽に言えるわけもない。
俺は、ええ、双子の妹達に好評だった、煮込みデミグラハンバーグ乗せフワフワオムライスを、スーパーで買った食材にて平埜さんちのキッチンで作らせていただきましたよ。
ええ、ええ。
鴉天狗様のすぐり君たら大はしゃぎの上に、明日も、なんて騒ぐぐらいに喜んでくださりました。――平埜さんの口には合わなかったみたいだけれど。
苦虫を噛み潰す顔?そんな顔で一口一口咀嚼してらしたもんね。
まあ、煮込みっても、なんちゃって煮込みだもんな。
ハンバーグを両面焼いた後にトマトジュースを注いて煮込むことで素早く火を通し、あとからデミグラスソースとケチャップをそこに投入してソースの味を調えるというだけの時短料理でしかない。共働き両親の代りに学校帰りの俺が短時間で作れる、妹達の為の夕飯メニューの一つでしかないのだ。
熟成物の年月を生きてらっしゃる大天狗様には、料理といえないとお気に召さなかったのであろう。
「今日はありがとう。」
「はうっ。」
俺は腰にくるような素晴らしいバリトンを耳元に浴びていて、思わず洗っていた皿を取り落としそうになった。
しかし、大きな手が俺の手と皿を支えた。
「あとは我がやる。皿の片づけは、食事を作って貰った者の仕事だ。」
俺はそうだと言って流しから去るべきだ。
だけど、平埜は俺の真後ろに立っていて、俺の両脇から長い腕を伸ばして俺が取り落としかけた皿と俺の手を支えているのだ。
後ろから抱き締められている、そんな立ち位置なのだ、俺達は。
「お、俺こそ居候させてもらうし、あの。」
「我は不要か。」
めちゃ低い怖い声。
「いや、あの。一緒に洗うのはどうかなって。ほら、ここのキッチンは凄く広いしって、あれ、以前もこんな最新のシステムキッチンでしたっけ?」
俺はぼんやりと思い出していた。
記憶がない昨年の記憶じゃない。
買い物前に買い出し内容の確認のためにキッチンを調べ、キッチンにカセットコンロがあることで、すぐりに鍋をするのかと聞いたという記憶だ。
その答えは、昨年の俺がすぐりにパスタを作ってやったりした時に俺が買ったものだというものだった。俺が薪の竈を使えないからと買った品だと。
思い出したことで、俺は昨年と今の違いに急に気が付いた。
「このキッチン、――新品ですね。」
「うむ。使い勝手はどうであった?人間界のキッチンを売っている場所をいくつか見学して、一番お薦めで人気らしいものを設置してみた。」
お菓子作りのために迷い家に最新システムキッチン導入かよ。
非常識め。
だが、俺は平埜を罵倒するよりも褒めていた。
お菓子作りが俺を慰めるためのものであると俺は知っているし、このシステムキッチンが実に使いやすい素晴らしき理想のものであるのは事実だからだ。
「あなたの審美眼と決断力は最高です。」
フフッて、笑った?
俺のうなじがふわって吐息を感じたから、笑ったはずだ。
「では、一緒に洗おうか。」
「って、ちょっと待って。広いので俺の横に並んでください。てか、俺の手を使って洗うんじゃないです。二人羽織りじゃないです。」
やっぱ非常識だ、この天狗。
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