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天狗と家なき子
夜の寝床はどうしようか?
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俺は平埜さんちに三日しか滞在しないのに、とても良い部屋を与えられた。
以前にも使った部屋だと平埜は言ったが、前回の記憶がない俺が部屋を見回したところで記憶が蘇ることもない。
それどころか、襖を開けて目の前に四人は座れそうな座卓セットがあり、その向こうに布団もすでに敷いてあるという風景であるならば、記憶をとりもどすどころか高級旅館に来てしまったような感覚しか湧かない。
わーい、平埜さん親子と温泉旅行だ?
て言うか。
みんな一緒でお風呂だったんだから、誰が布団を敷いたんだ?
目に見えないが勝手に立ち働く中居さんが、この迷い家にはいるというのか?
「オレも一緒にユウトと寝る~。オレの枕も持ってくる~。」
部屋に一緒に入ったすぐりは俺の布団を見るや大声をあげ、部屋を飛び出してたかたかと走り去って行ってしまった。
俺こそすぐりと今夜どころかこれから三晩は寝る事になる覚悟というか想定していたので、一緒に寝ると騒いだすぐりには驚きも無い。だが、すぐりの台詞を考えれば、彼は俺と寝る事は控えようと今まで考えていたようだと思われる。
彼は何て気遣いがある可愛い子供だ。
結局は一緒に寝ると声を上げた子供でしか無かったけれど、最初から自分ばかりの子供より数段可愛い。俺はすぐりに対してそんな優しい気持ちとなったまま、すぐりと寝るだろう布団を温かな視線でもう一度見返した。
…………。
見返して、俺は自分の目が節穴だったと気が付いた。
「どうして二組も布団が敷いてあるの?」
俺の隣で牛のような唸り声が上がった。
風呂場で機嫌を損ねようが、俺の為に俺の部屋に案内してくれた家主だ。
彼は本気で怒ったような顔で、俺が見ていた布団を睨んでいた。
俺が見守る中、彼は物凄く暗い目というか殺気が籠った目を、真上の天井に向けたのである。
すると!
ギシイイイイ、ミシミシミシミシ。
俺は急に起きた家鳴りどころか天井に亀裂が走ったかのような大音に驚いた。
わあ!
気が付いて見れば、平埜の腕に俺は無意識にしがみ付いていただなんて。
「えと、あの。」
「全く。迷い家は我からの叱責逃れが上手くなるばかりだ。」
「どうしたのですか?」
「何でもない。」
平埜はぶっきらぼうに答えると、昼間の居間でのようにして俺を俺の部屋の座卓を前に座らせた。そして、やはり旅館のように茶器セットが置いてあるそれで、俺の為に茶を入れ始めようと動きだしたのである。
俺はそれを眺めながら、やっぱりこの人は俺を大事にしているんだな、と、改めて思ってしまった。
ただね、天狗の家に洋物の有名ハーブティ専門店のティーバッグの箱がいくつもあって、射る様な視線でどれにするのか聞いて来るどてら羽織った浴衣姿の天狗様、なんてシュールすぎるよ!
「ハーブティは嫌いか?」
「選ぶ時間をもう少し下さいよ。えっと、お薦めはどれですか?」
「あ、ああ。そうだな。お薦めは、どれもこれも香はいいが馬の小便のような味だ。眠る前には優しい茶と言うならば、我はやはりほうじ茶が一番かな。」
「小便って言い方!でも確かにハーブティってそんな感じだ。俺もほうじ茶の方がいいかなって感じです。」
「じゃあほうじ茶を淹れよう。」
平埜は機嫌のいい声を出した後、俺に向けていた顔を俯かせた。
彼はそれからフフッと笑った。
その笑った顔こそ俺に向けてくれればいいのに。
…………。
え?
俺は何を考えて!
「ただいまです!オレ自分の枕持ってきた!」
俺はすぐりの登場にほっとしていた。
以前にも使った部屋だと平埜は言ったが、前回の記憶がない俺が部屋を見回したところで記憶が蘇ることもない。
それどころか、襖を開けて目の前に四人は座れそうな座卓セットがあり、その向こうに布団もすでに敷いてあるという風景であるならば、記憶をとりもどすどころか高級旅館に来てしまったような感覚しか湧かない。
わーい、平埜さん親子と温泉旅行だ?
て言うか。
みんな一緒でお風呂だったんだから、誰が布団を敷いたんだ?
目に見えないが勝手に立ち働く中居さんが、この迷い家にはいるというのか?
「オレも一緒にユウトと寝る~。オレの枕も持ってくる~。」
部屋に一緒に入ったすぐりは俺の布団を見るや大声をあげ、部屋を飛び出してたかたかと走り去って行ってしまった。
俺こそすぐりと今夜どころかこれから三晩は寝る事になる覚悟というか想定していたので、一緒に寝ると騒いだすぐりには驚きも無い。だが、すぐりの台詞を考えれば、彼は俺と寝る事は控えようと今まで考えていたようだと思われる。
彼は何て気遣いがある可愛い子供だ。
結局は一緒に寝ると声を上げた子供でしか無かったけれど、最初から自分ばかりの子供より数段可愛い。俺はすぐりに対してそんな優しい気持ちとなったまま、すぐりと寝るだろう布団を温かな視線でもう一度見返した。
…………。
見返して、俺は自分の目が節穴だったと気が付いた。
「どうして二組も布団が敷いてあるの?」
俺の隣で牛のような唸り声が上がった。
風呂場で機嫌を損ねようが、俺の為に俺の部屋に案内してくれた家主だ。
彼は本気で怒ったような顔で、俺が見ていた布団を睨んでいた。
俺が見守る中、彼は物凄く暗い目というか殺気が籠った目を、真上の天井に向けたのである。
すると!
ギシイイイイ、ミシミシミシミシ。
俺は急に起きた家鳴りどころか天井に亀裂が走ったかのような大音に驚いた。
わあ!
気が付いて見れば、平埜の腕に俺は無意識にしがみ付いていただなんて。
「えと、あの。」
「全く。迷い家は我からの叱責逃れが上手くなるばかりだ。」
「どうしたのですか?」
「何でもない。」
平埜はぶっきらぼうに答えると、昼間の居間でのようにして俺を俺の部屋の座卓を前に座らせた。そして、やはり旅館のように茶器セットが置いてあるそれで、俺の為に茶を入れ始めようと動きだしたのである。
俺はそれを眺めながら、やっぱりこの人は俺を大事にしているんだな、と、改めて思ってしまった。
ただね、天狗の家に洋物の有名ハーブティ専門店のティーバッグの箱がいくつもあって、射る様な視線でどれにするのか聞いて来るどてら羽織った浴衣姿の天狗様、なんてシュールすぎるよ!
「ハーブティは嫌いか?」
「選ぶ時間をもう少し下さいよ。えっと、お薦めはどれですか?」
「あ、ああ。そうだな。お薦めは、どれもこれも香はいいが馬の小便のような味だ。眠る前には優しい茶と言うならば、我はやはりほうじ茶が一番かな。」
「小便って言い方!でも確かにハーブティってそんな感じだ。俺もほうじ茶の方がいいかなって感じです。」
「じゃあほうじ茶を淹れよう。」
平埜は機嫌のいい声を出した後、俺に向けていた顔を俯かせた。
彼はそれからフフッと笑った。
その笑った顔こそ俺に向けてくれればいいのに。
…………。
え?
俺は何を考えて!
「ただいまです!オレ自分の枕持ってきた!」
俺はすぐりの登場にほっとしていた。
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