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天狗と家なき子
俺からどうして記憶を奪ったのか
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日高が言うには、森羅万象界から人間界に戻す時は暗示をかけるだけで、記憶そのものを盗むものでは無いという。
俺は通常通りに暗示をかけられたのではなく、記憶そのものを平埜に奪われてしまったというのだ。
日高にそのことを責められた平埜であるが、彼は日高どころか俺に言い訳さえもしないかった。それどころか、全く話し合うまでもない話だという風にして黙々と食事を続けているだけなのである。
俺という存在なんか話題にするまでもない。
まるで平埜にそう言われているようで、俺は耐えきれなくなった。
「ど、どうして、俺の記憶を?俺が昨年ここに来る前の一週間分の記憶も無いのは、あなたが奪ってしまったのですか?」
平埜は食事を止め、俺を見つめた。
見つめて、俺の為だという意味の言葉を俺に放った。
「君は君の世界で生きるべきだ。」
俺がホテルの受付で聞いた幻聴、あれはやはりあなたのものだったのか。
俺を思ってくれる優しさや気持ちはわかるが、そこに俺の気持を全く入れはしない独断的選択の言葉ではないか。
「選択肢って自分で選べてこそだと思いませんか?俺には記憶がない。だからもとの世界に帰るしかないと思っている。でも記憶があったら、俺には違う選択ができる?結局帰るかもしれない選択かもじゃない?悩んで悩むかもしれないけど、悩んだ上でどうしたいか俺は決めたい。どうして俺にそれをさせてくれないの?あなたから見れば人間なんか下等過ぎるからですか?」
「君が下等なんてことは無い。君に記憶を戻せば君はここに残る選択しかしないだろう。君は人間界で望んでいた人生があったはずだろうに、君は残るに決まっているのだ。本当は違う未来を望んでいても、君は絶対に残るはずだからだ。」
可哀想で世界は救えない。
平埜が俺に言った言葉は、昨年の俺が選んだ結果がそうだったからなのか?
可哀想だから俺はここに残る選択しかしなかった。
ああ。
きっとその可哀想は、すぐりの為なんだろう。
でも、だったら、どうして彼はその一番大事なことを俺に教えたのだ?
昨年の二十一日間のすぐりと俺の思い出が無ければ、たった三日だけならば、俺はすぐりを見捨てて自分の世界に戻ることを選択できるとでも?
どん。
俺は左手の拳で座卓を叩いてた。
右手では右側にいるすぐりを驚かせてしまうから。
「優斗?」
「ざけんな。くそ天狗が。たった一日、いや、数時間だけだって、俺の心は失いたくない大事な人間を作れるんだ。勝手に俺の記憶を奪ってんじゃねえよ。」
平埜は、そうだな、と答えた。
とても、せつなそうに。
その表情は本当に辛そうで、俺は言葉を続ける事なんかできなくなった。
だから、平埜の皿から明太子を盗んで自分の茶碗に乗せた。
でもって怒りのまま明太子と白米を口に運んだ。
「やばい。」
今まで口にした事が無い、物凄く旨い明太子だった。
辛いけど辛いだけじゃない。
スーパーに並んでいる奴と全然違う、きっと高級品だ!
やはり日高の土産だったのだろうか。
「ユウト?オレのもあげようか?」
「君は本当に日高が好きだな。」
「え、違います。これは平埜さんへの罰なだけだよ。ごめんなさいを俺にするまで、美味しいものを俺に盗まれる罰なだけだよ。ざまあみろだ。」
「バカ優斗。そんなん鬼みたいに可愛いだけやん。目の前の変態には単なるご褒美になるだけやないか。」
俺は日高に怒りの視線を向けると、日高の皿の明太子も盗んだ。
日高は自分こそ嬉しそうな顔をした。
ちくしょう、天狗はみんな変態か!
でも旨い。
「オレのもユウトにあげる。」
「いや、すぐりは食べな。これめちゃ旨いぞ。食べとけ食べとけ。」
あ、すぐりがしゅんとなって頭を下げた。
盗んであげるべきだったか!
そうだこの子も天狗さんだった!
「だって、ユウトをこっちに連れてきたのはオレだもの。」
すぐりはとっても大きな罪悪感を俺に抱いていたらしい。
俺は通常通りに暗示をかけられたのではなく、記憶そのものを平埜に奪われてしまったというのだ。
日高にそのことを責められた平埜であるが、彼は日高どころか俺に言い訳さえもしないかった。それどころか、全く話し合うまでもない話だという風にして黙々と食事を続けているだけなのである。
俺という存在なんか話題にするまでもない。
まるで平埜にそう言われているようで、俺は耐えきれなくなった。
「ど、どうして、俺の記憶を?俺が昨年ここに来る前の一週間分の記憶も無いのは、あなたが奪ってしまったのですか?」
平埜は食事を止め、俺を見つめた。
見つめて、俺の為だという意味の言葉を俺に放った。
「君は君の世界で生きるべきだ。」
俺がホテルの受付で聞いた幻聴、あれはやはりあなたのものだったのか。
俺を思ってくれる優しさや気持ちはわかるが、そこに俺の気持を全く入れはしない独断的選択の言葉ではないか。
「選択肢って自分で選べてこそだと思いませんか?俺には記憶がない。だからもとの世界に帰るしかないと思っている。でも記憶があったら、俺には違う選択ができる?結局帰るかもしれない選択かもじゃない?悩んで悩むかもしれないけど、悩んだ上でどうしたいか俺は決めたい。どうして俺にそれをさせてくれないの?あなたから見れば人間なんか下等過ぎるからですか?」
「君が下等なんてことは無い。君に記憶を戻せば君はここに残る選択しかしないだろう。君は人間界で望んでいた人生があったはずだろうに、君は残るに決まっているのだ。本当は違う未来を望んでいても、君は絶対に残るはずだからだ。」
可哀想で世界は救えない。
平埜が俺に言った言葉は、昨年の俺が選んだ結果がそうだったからなのか?
可哀想だから俺はここに残る選択しかしなかった。
ああ。
きっとその可哀想は、すぐりの為なんだろう。
でも、だったら、どうして彼はその一番大事なことを俺に教えたのだ?
昨年の二十一日間のすぐりと俺の思い出が無ければ、たった三日だけならば、俺はすぐりを見捨てて自分の世界に戻ることを選択できるとでも?
どん。
俺は左手の拳で座卓を叩いてた。
右手では右側にいるすぐりを驚かせてしまうから。
「優斗?」
「ざけんな。くそ天狗が。たった一日、いや、数時間だけだって、俺の心は失いたくない大事な人間を作れるんだ。勝手に俺の記憶を奪ってんじゃねえよ。」
平埜は、そうだな、と答えた。
とても、せつなそうに。
その表情は本当に辛そうで、俺は言葉を続ける事なんかできなくなった。
だから、平埜の皿から明太子を盗んで自分の茶碗に乗せた。
でもって怒りのまま明太子と白米を口に運んだ。
「やばい。」
今まで口にした事が無い、物凄く旨い明太子だった。
辛いけど辛いだけじゃない。
スーパーに並んでいる奴と全然違う、きっと高級品だ!
やはり日高の土産だったのだろうか。
「ユウト?オレのもあげようか?」
「君は本当に日高が好きだな。」
「え、違います。これは平埜さんへの罰なだけだよ。ごめんなさいを俺にするまで、美味しいものを俺に盗まれる罰なだけだよ。ざまあみろだ。」
「バカ優斗。そんなん鬼みたいに可愛いだけやん。目の前の変態には単なるご褒美になるだけやないか。」
俺は日高に怒りの視線を向けると、日高の皿の明太子も盗んだ。
日高は自分こそ嬉しそうな顔をした。
ちくしょう、天狗はみんな変態か!
でも旨い。
「オレのもユウトにあげる。」
「いや、すぐりは食べな。これめちゃ旨いぞ。食べとけ食べとけ。」
あ、すぐりがしゅんとなって頭を下げた。
盗んであげるべきだったか!
そうだこの子も天狗さんだった!
「だって、ユウトをこっちに連れてきたのはオレだもの。」
すぐりはとっても大きな罪悪感を俺に抱いていたらしい。
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