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天狗と家なき子
アメイジンググレイス
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日高から与えられた俺の去年の意識は、俺が家族だと思っていた家族に殺されかけた事実を俺に伝えるものであった。
いや、両親が俺を愛しているのは間違いない。
だけど、彼らは追い詰められていた。
俺の本当の両親の親族が俺と接触して、俺が相続するはずだった両親の財産を彼らが使い果たしてしまった真実を俺が知ってしまったと気が付いたから。
俺は恨んではいなかった。
だって、自分に財産があるなんて知りもしなかったのだから。
両親は衣食住、それを俺が不足だと思うような生活など俺にさせなかった。
大学の進学だって、私大だろうが東京に出してやるから心配するな、そう請け負ってくれていたのだ。
彼らは彼らなりに、必要以上の金を俺にかける心づもりなのは疑いようがない。
だから俺は彼らに裏切られたなんて考えなかった。
ただ、本当の両親の親族に会って、本当の両親の事を少しだけでも知りたかっただけだ。
俺は四万程度のお金を財布に入れて二日くらいの着替えをまとめると、俺に連絡をくれた本当の両親の妹が住んでいるという住所に向かっていた。
彼女は訴訟なんて口にしていたが、俺は実の両親の墓参りがしたいだけだった。
俺を育ててくれた両親、正しくは養父母で実の両親の友人夫妻だったらしいが、彼等は俺に酷い事なんか一つもしたことなどなかった。
財産略取だと実の父の妹は憤っていたが、俺の財産で失敗した投資の穴埋めが出来て、それで今の家や生活が守れたのならば、俺こそ願ったりだもの。
でも、俺は両親を許していたけれども両親からすれば、俺が取った行動は家族への裏切りにしか思えなかったのかもしれない。
俺を連れ戻そうと父は車で俺を追いかけ、彼は俺を轢いてしまったのだ。
すまない、みきとゆきを守らなきゃいかないって、そう思ったら、お前を止めなきゃって、止めなきゃって思っただけで、ああ、すまない。お前に怪我をさせるつもりなんか。
うん。俺も大事なみきとゆきは守りたい。だから、いいよ、もういいよ。
ゆうと、ああ、すまない。
ああ、今すぐに救急車を呼ぶから。ああ、俺はなんてことをしてしまったんだ。
いいよ、とうさん。このまま逃げて。
ああ、お前が死んでしまう。ああ、俺はなんてことを。
このまま逃げて。みきとゆきのために。
そんなこと!
俺の為に。お願いだから逃げて。俺の大事な妹達、みきとゆきのために。
お前だって大事な息子なんだ!それが死にそうなんだ!俺のせいで!
父さん、お願いだから!
雷にも聞こえる嗚咽が起こり、俺の頬に、額に、温かな涙の雨が降り注いだ。
彼は泣いて、泣きながらも、彼の息子である俺の望みを叶えた。
俺を抱き締める温かな腕を俺から外し、俺が望んだとおりに俺を冷たい雪の中に取り残して去って行ってくれたのだ。
カア!
俺の胸の上に大きなハシボソガラスが乗った。
ハシボソの癖にワタリガラスぐらいの大きさのあるそいつは、大きなくちばしを俺の頬に撫でつけた。
自分がここにいるよ、と俺に教えるようにして。
「ありがとう。君のお陰で寂しくないかも。気持だけでも俺はあの日に帰れる。家族みんなで幸せだったあの日に帰れそうだ。」
鴉はもう一度鳴いた。
俺の言葉に応える様に。
「帰りたい。あの幸せだった日に帰って、そのまま俺は死んでいきたい。」
目を瞑った俺は、幸せだった頃の風景の中にいた。
神様が住んでいるとしか思えない、緑と金色の世界だ。
「オレ、ユウトがいなくなるのはやだ。」
幼い子供の涙声が聞こえ、俺はその切ない声に応えねばと重たい瞼を開けた。
目を開けた俺に見える世界は、俺が道路の雪だまりにいないと教えてくれた。
俺は望んだあの日の世界にいた。
でも、あの日とは違っている。
あの日よりも緑の色は薄く、太陽の差し込みは弱く、苔むした木々の幹や岩には白い雪が被ってる。
だが、木々の間から虹が見えた。
普通のアーチの虹じゃ無かった。
万華鏡の中を覗いた時に見える様な、丸い形をした眩い光だ。
初めて見た形状のキラキラ輝くそれは、これから死にゆく俺には天国への入り口のように見えた。
「最後の景色にしては最高だな。」
「じゃあもういい?もう終わりでいい?」
俺の胸の上には鴉ではなく、翼のある天使が乗っていた。
水色の空に映えるだろう真っ赤な髪を持ち、賢そうに輝く黒曜石みたいな大きな瞳をしている、この上なく可愛らしい顔立ちの天使だ。
天使が真っ黒な翼をしているのは、彼が俺に引導を渡す告死天使であるからか。
俺は天使に向かって、もういいよ、そう答えていた。
いや、両親が俺を愛しているのは間違いない。
だけど、彼らは追い詰められていた。
俺の本当の両親の親族が俺と接触して、俺が相続するはずだった両親の財産を彼らが使い果たしてしまった真実を俺が知ってしまったと気が付いたから。
俺は恨んではいなかった。
だって、自分に財産があるなんて知りもしなかったのだから。
両親は衣食住、それを俺が不足だと思うような生活など俺にさせなかった。
大学の進学だって、私大だろうが東京に出してやるから心配するな、そう請け負ってくれていたのだ。
彼らは彼らなりに、必要以上の金を俺にかける心づもりなのは疑いようがない。
だから俺は彼らに裏切られたなんて考えなかった。
ただ、本当の両親の親族に会って、本当の両親の事を少しだけでも知りたかっただけだ。
俺は四万程度のお金を財布に入れて二日くらいの着替えをまとめると、俺に連絡をくれた本当の両親の妹が住んでいるという住所に向かっていた。
彼女は訴訟なんて口にしていたが、俺は実の両親の墓参りがしたいだけだった。
俺を育ててくれた両親、正しくは養父母で実の両親の友人夫妻だったらしいが、彼等は俺に酷い事なんか一つもしたことなどなかった。
財産略取だと実の父の妹は憤っていたが、俺の財産で失敗した投資の穴埋めが出来て、それで今の家や生活が守れたのならば、俺こそ願ったりだもの。
でも、俺は両親を許していたけれども両親からすれば、俺が取った行動は家族への裏切りにしか思えなかったのかもしれない。
俺を連れ戻そうと父は車で俺を追いかけ、彼は俺を轢いてしまったのだ。
すまない、みきとゆきを守らなきゃいかないって、そう思ったら、お前を止めなきゃって、止めなきゃって思っただけで、ああ、すまない。お前に怪我をさせるつもりなんか。
うん。俺も大事なみきとゆきは守りたい。だから、いいよ、もういいよ。
ゆうと、ああ、すまない。
ああ、今すぐに救急車を呼ぶから。ああ、俺はなんてことをしてしまったんだ。
いいよ、とうさん。このまま逃げて。
ああ、お前が死んでしまう。ああ、俺はなんてことを。
このまま逃げて。みきとゆきのために。
そんなこと!
俺の為に。お願いだから逃げて。俺の大事な妹達、みきとゆきのために。
お前だって大事な息子なんだ!それが死にそうなんだ!俺のせいで!
父さん、お願いだから!
雷にも聞こえる嗚咽が起こり、俺の頬に、額に、温かな涙の雨が降り注いだ。
彼は泣いて、泣きながらも、彼の息子である俺の望みを叶えた。
俺を抱き締める温かな腕を俺から外し、俺が望んだとおりに俺を冷たい雪の中に取り残して去って行ってくれたのだ。
カア!
俺の胸の上に大きなハシボソガラスが乗った。
ハシボソの癖にワタリガラスぐらいの大きさのあるそいつは、大きなくちばしを俺の頬に撫でつけた。
自分がここにいるよ、と俺に教えるようにして。
「ありがとう。君のお陰で寂しくないかも。気持だけでも俺はあの日に帰れる。家族みんなで幸せだったあの日に帰れそうだ。」
鴉はもう一度鳴いた。
俺の言葉に応える様に。
「帰りたい。あの幸せだった日に帰って、そのまま俺は死んでいきたい。」
目を瞑った俺は、幸せだった頃の風景の中にいた。
神様が住んでいるとしか思えない、緑と金色の世界だ。
「オレ、ユウトがいなくなるのはやだ。」
幼い子供の涙声が聞こえ、俺はその切ない声に応えねばと重たい瞼を開けた。
目を開けた俺に見える世界は、俺が道路の雪だまりにいないと教えてくれた。
俺は望んだあの日の世界にいた。
でも、あの日とは違っている。
あの日よりも緑の色は薄く、太陽の差し込みは弱く、苔むした木々の幹や岩には白い雪が被ってる。
だが、木々の間から虹が見えた。
普通のアーチの虹じゃ無かった。
万華鏡の中を覗いた時に見える様な、丸い形をした眩い光だ。
初めて見た形状のキラキラ輝くそれは、これから死にゆく俺には天国への入り口のように見えた。
「最後の景色にしては最高だな。」
「じゃあもういい?もう終わりでいい?」
俺の胸の上には鴉ではなく、翼のある天使が乗っていた。
水色の空に映えるだろう真っ赤な髪を持ち、賢そうに輝く黒曜石みたいな大きな瞳をしている、この上なく可愛らしい顔立ちの天使だ。
天使が真っ黒な翼をしているのは、彼が俺に引導を渡す告死天使であるからか。
俺は天使に向かって、もういいよ、そう答えていた。
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