神隠しは天狗の仕業といいます、が

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君が望まぬとも、我は君を望むだろう

我は浅ましき獣

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 我は優斗を抱きしめると、彼の頭に顔を埋めながら囁いた。
 我は何て浅ましい、と。

「え?」

「だってそうだろう?我こそ出したいと願い、その手伝いを君にさせようとしているのだからな。我が守るべき君に、だ」

「俺はかまいません」

「かまわない?いいのか?割合と軽いな。それは恩があると思っているからか?我でも日高でも、君はいいよと答えるのか。った!」

 我は急に感じた痛みに驚いていた。
 優斗が我の腕を叩いたのだ。
 たいした痛みなど感じなかったが、優斗が我を叩くほどに怒ったらしいことに我は驚いていた。
 いいや、我があてこすった言葉を彼が否定した行為に我は驚いていたのだ。

 日高には優斗は身を任せない?

 そして驚いて動きを止めた我の腕から優斗は抜け出した。
 我が彼を逃がすはずもないが。
 我は優斗をすぐに捕まえて、再び彼を布団に押し付けていた。
 仰向けにされて檻となった我に覆いかぶされている優斗は、我に向けた目の色に脅えが見えたが、もともとの気性の強さを見せた。

「平埜さん。放してください」

「君が我の質問に答えたら」

「何が聞きたいんですか?俺は誰とでも寝るって?」

「そうじゃない。身持ちが固い君が我だけには体を許す理由だ」

「だって俺は平埜さんを親とは思えないし」

「そうだな。日高と比べれば我の親和性など低すぎる」

「そんなことないです。日高さんは金色の翼で太陽神みたいですけど、白い翼の平埜さんは誰もが想像する大天使様みたいです」

 優斗は我を慰めようとしているのか?
 我を見つめる優斗の瞳は無邪気に煌いていて、我と言う天狗は天の犬と書く天の使いそのものなのだよと教えてあげるべきか迷う程だ。

「そうか、ええと、天使か」

「はい。ミカエル様です。そうですよ。平埜さんに出会えた誰もが、絶対に大天使ミカエル様を想像するはずです!」

 我は乾いた笑い声をあげると、無知なだけの可愛らしい口を閉じさせた。
 口づけたのではない。
 指さきで優斗の唇を撫でたのだ。
 鳥の羽で撫でるようにして。

 性感帯にもなる唇だ。
 優斗は一瞬で唇が感じた刺激に震え、我はそれを良い事に優斗が絶対に感じる右耳の下に舌を這わせた。

「はあ。ひらの、さん」

「この地はあの神のものではない。度々侵略に来るミカエルを追い払うのに我は苦労しているんだぞ。それなのにこの日の本の国の守護者がミカエルと信じる者ばかりで悲しいが」

「え、うそ」

 我の指先は優斗の唇から離れ、しかし、優斗の顎へと進み、その後は優斗の喉へと胸へとゆっくりとなぞりながら降りて行った。我の指先の動きに合わせて優斗の体はびくりびくりと震え、我は彼が震える度に耳の下を舐め、吸った。

「あ、ああ。ひらの、さん」

 我の手は優斗の左乳首を撫でていた。
 彼は大きくびくりと身を持ち上げ、我はもう一方の手を彼の背中へと回した。

「あいつの羽は燃える様な赤だ。三対の翼を持ち、二対の翼で顔を体を隠している蛇があいつだ。あいつと戦うのはかなりの難儀だ。我には一対の翼しかない」

「へび?え?嘘。ご、ごめんなさい。し、失礼なことを、ええと。うわっ」

 左乳首は我に摘ままれ、我の口は優斗の耳たぶをしゃぶっていた。
 彼は嫌ならば逃げる事もできるが、自分の言葉が我には失言だと思ったのか、短い吐息を上げて身を丸めるばかりだ。
 身を任せて貰えるのは嬉しいが、謝罪代わりでしかないのは興ざめだ。
 どうしたものだと我は急いで考えるしかなく、そこで急に優斗がすぐりに放った台詞を思い出した。

「すぐりがまっすぐでいい子なのは、平埜さんが良い人過ぎるからかな。でもね、すぐり。俺は我儘してくれる方が嬉しいな。気を使いながらよりもさ、それできない、ちょっとそこ無理かも、って俺も言い返せる関係の方がお互いに楽だし楽しいんじゃない?」

「その通りだな」

「平埜さん?」

「優斗よ。我は君が思っているほど良いものじゃないぞ」

 我は優斗に笑って見せた。
 出来うる限り悪そうで、我がミカエルを追い払った時に奴に見せつけた笑顔を優斗に見せつけたのである。
 何があっても先に進みたい今の我にピッタリな、悪辣な笑みだった。
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