8 / 27
-8-『タヌキ寝入りのお姫さま』♯
しおりを挟む
(あっ、またこの夢かあ……)
肌寒さを感じて、ネムエルは薄く目を開いた。
目の前がぼんやり暗い。この静けさからして、真夜中の夜だ。
身体が冷えているのは、かけ布団は取り払われているせいだろう。ここまではいつもと同じ状況だが、今回は少し違った。
男がベッドに両手をつき、自分の上に覆い被さっていたからだ。
(今日は変だな……んっ!)
胸もとから、引っ張られるような感覚がやってきた。
水が跳ねるような、ぴちゃぴちゃとした音も鳴っている。くすぐったくもあった。乳首が吸われていると気付くのに、やや時間がかかった。
見れば、ざらついた舌がぬるりと乳頭部を舐め回している。
むず痒さが、尻骨の辺りに生まれた。
ゾクゾクと、甘いしびれが背筋を駆けのぼってくる。
戸惑いながら、ネムエルは可憐な唇を引き結んだ。
(なっ、なんだろ……。
な、なんで私、お胸が吸われてるのかなぁ?)
夢中になっている男の頭頂部を見つめた。
暗い影が動いている、という印象しか湧かない。
闇に包まれた男の姿は輪郭線だけに過ぎず、現実味もなかった。時折、窓辺から入ってくる月明かりが男のたくましい肉体を照らしたが、ひどく頼りないものだった。
(わ、私……おっ、おっぱい出ないから……
そ、そんなに吸っても……)
これまでの安眠マッサージでは、胸に触れられたこと少なかった。
そういった女性的な場所――デリケートな部分には、男はある種のためらいを持っているようだった。
なのに、今日に限っては違う。
執拗に舌先を転がし、ぷくりと立った乳首をアメ玉のように転がしてくる。
「はぅ」
短く悲鳴があがる。
吸われながら、揉まれていた。遠慮などなく、指は力強く乳肉を挟みこんだ。乳房の形をぐにゃぐにゃと変えられ、ネムエルはあわあわと口をあけしめした。
頬がカァと熱くなった。
こんなふるまいは誰にもされたことはない。
(うぅううううっ……
くすぐったいし、困ったなぁ。
これって、だめなことだよね。
だめだよね……?
私、怒った方がいいのかな。でも……)
今回は趣向を凝らしたマッサージかもしれない。
そんな可能性も考慮してみる。
未だに奉仕してくれる理由は謎のままだが、ネムエルは深く考えるということは不得手だったので、流されるままに様子見に入った。まだ我慢できる範疇でもあったからだ。
(まあ、ちょこーっと……気持ちいいし……
って、あっ、あっ――あぁー!)
ネムエルの顎がカクンと跳ねた。
男の手が乙女の秘所――熱を帯び始めた股間に触れたからだ。
それも、ただ触られたわけではない。
二本の指は、縦筋の奥へ分け入った。
恥肉をグイッと広げ、秘穴付近に垂れている愛液をすくい取り、ぐちゃぐちゃとかき混ぜつつ、親指が隠れていた小豆をぐりぐりとまさぐってくる。
(ふぁあぁー!)
恥ずかしくなったネムエルはふとももに力を入れ、両足を閉じようとした。
しかし、愛撫が隙なくに続いたこともあり、甘い刺激に惑わされて下半身が震えるだけで終わる。
(はぅううううっ!
こっ、困るよぉ……どっ、どうしよっ、
こ、声をかけようかな?
でも、今から「こんにちは」するのもなんか、おかしい気がするし……)
天然ボケのネムエルは、変なところで迷いを持ってしまった。
その間、彼女の身体に生まれた性的な興奮は燃料を与えられ続け、手が付けられないほど勢いを増していった。
(あぁ…そっかっ……んっ……
これ、ご本にあったやつだっけ……)
寝る前に読んだ本の一ページを思いだした。
確か、女性を楽しませるための手法として書かれていた。
(ふわんってして、気持ちいいから……
楽しい、かな……?)
まさぐられる下腹部は生殖本能の忠実に従い、既に水溜まりとなっていた。
甘い快楽が脳みそをとろかし、どうしようもないほどの陶酔感を与えてくる。
太い指がおのれの弱い部分をこすると、はしたない声を漏らしてしまう。
「ん……あっ」
責め立てる男の息遣いも荒くなった。
腹部の肌に吐息がぶつかってくる。あからさまに反応を楽しんでいる。ネムエルは意地悪だと思った。オモチャにされているような気分になる。
やがて、恥骨の辺りがじんわりと熱を持ってきた。
それは絶頂の予兆だったが、ネムエルには達した経験がなく、どう対処していいかわからなかった。
(んぅっ……もっ、もうだめっ……
わっ、私、おっ、おかしくなる……ぅっ!
じゅ、呪文……唱えちゃお……)
夢にしても、過激すぎた。
目覚めの気配もない。
やむなく抵抗しようとしたネムエルは『疾風撃』という呪文を唱えようとした。手の平に力を集中させる。
渦巻く魔風はひとたび解き放たれれば、厚い石壁をねじ切るほどの暴圧を持っていた。
「あっ……げるっ、うあっ……んっ……ひぃぅっ……!」
(しっ、舌がもつれるよぉ!
あぁぁぁああっ、も、もうだめかもっ!)
ぺろんとへそを舐められ、ネムエルは気を散らした。
まるで、悪戯をたしなめるような一撃だった。
手の平の魔力が霧散した。ベッド際に小さな旋風が散っていった。
同時に――ヘソの辺りに溜まっていた熱が、ふわっと広がっていく感覚が襲ってくる。ぶるぶると股間が震えた。膝がガクガクと笑う。
ネムエルにとって、人生初めての絶頂だった。
その排出感は尿意と似通っていたので、ネムエルは自らが排尿したと錯覚した。
(やっ、やっちゃったぁ……。
あっ、あははっ……久しぶりに……
お、怒られちゃうなぁ……
なんか、身体に力が入らない……って、あれっ?)
股間からの刺激は、いつしかやんでいた。
男は覆い被さるのをやめ、ネムエルの足もとに移動している。
(おっ、終わったのかな……?
よかった。ほどほどが一番だよね……)
くぃっと膝頭が左右に移動させられる。
両脚を開かされた恰好となったが、ネムエルは性感の|余韻(よいん)でふわふわとしていた。
男は足の間でもぞもぞと動いていたが、何をするかなど予想もしていなかった。
――ぷちっ
(あっ)
ふともも同士がぶつかった。パンッと渇いた音がした。
男の象徴が、ぬかるんだ膣道を滑り込んでいく。圧倒的な挿入感により、おぼろげにあったネムエルの眠気は吹き飛んだ。膣奥からくる鋭い痛みと、僅かな肉の悦楽が精神に大きな打撃を与えたのだ。
(いっ、いいい、いったぁあっーーー!!)
目を白黒させ、口をぱくぱくさせる。
ネムエルは何が起こったか確かめようと、弱々しく首を持ち上げた。
そして、縦長の黄金瞳がおのれの痛点――接合部を確認して見開かれた。
(おっ、男の人の股間を押しつけられてる……
これってもう、エッチだよね?
さっき……本で読んだものだよね……赤ちゃんを作るやつだよね?)
自問しても、答えなどはでてこない。
しょせん、付け焼け刃の性知識である。
確かなことは、暗がりでわかりずらいが――男根が膣に深々と侵入したという事実だけだ。
尻の付け根が冷たかった。尻穴への道に破瓜の血が垂れ流れているせいだ。処女膜は破れ、子宮口までペニスが到達している。
胎内でドクッドクッと脈動する肉の棒が、あまりにも強い現実を突きつけてくる。
(これ、夢じゃないや……あっ)
――ようやく、正しく現状を把握したところで唇を奪われた。
舌と舌が重なった。
唾液にまみれた口粘膜がにゅるにゅると絡まっていく。食べ物を口にしているわけでもなかったが、不思議と美味だとネムエルは思った。
自然と目尻が垂れ下がり、固くなっていた身体が弛緩していく。
「君のことが好きなんだ」
(んっ)
耳たぶに向けて、ささやかれる。
ぞくりとさせる声音だった。僅かに震えていて、苦しげな情感がこもっていた。ネムエルは自分の心臓の鼓動を聞いた。どきどきとして騒がしい。残っていた抵抗しようとする気が失せていく。
こわばりが解けたのを見計らったのか、背中に筋肉質の手が回された。
密着すると、火傷をしそうなほど肌が熱い。
相手もまた、自分と同じように感情を昂ぶらせているのだとわかった。
(……なんだろ。安心する触り心地……)
奇妙だが――以前から知っている肌触りだと思った。こんな風に誰かに抱き寄せられたことなど、ないはずなのに。
「はふぅっ」
ネムエルはびくりとして、上半身を浮かせた。
股の奥でおとなしくしていた男性器が暴れ始めたからだ。前後の動きは緩慢であったが、稀に力強いものが突きに混じってくる。
やわな少女の股関節はその度に振動し、尻の形を柔軟に変えた。
(……あわっ……変な、感じ、する……
わぁー……き、気持ちいい。
何これぇ……頭が、さっきより、くらくらするぅ……)
熱に浮かされたネムエルは、黄金の瞳を涙で潤ませながら性交の味に酔った。
硬い棒が秘所を行き来し、うねうねとした膣壁を摩擦し続けている。湯ぶねをかき混ぜるような、ちゃぷんちゃぷんとした音がたまらなく恥ずかしいが、性欲を煽るエッセンスにはなっている。
(……あぁー……ほんと、気持ちいい。
ずっと、こうしていたいな……
私、甘えん坊だったのかなぁ……はぁー……)
根がのんびり屋のネムエルは行為中にも関わらず、そんなことを思った。
誰かに愛おしげに抱きしめられるのは、いつ以来のことだろうか。
いつしか可愛がられるより、恐れられる日々が多くなっていった。
周囲からの期待がつらく、自分を変えられることもできず、流されるままに生きてきた。
(……多分、だめなことしてるけど……気持ちいいなぁ)
身体を上下に揺すられながらも、ネムエルは背徳の快楽に身を任せた。
しかし、行為は激しくはあったが、長続きすることもなかった。
終わりは予告をもって訪れた。
「だっ、出すから……!」
(んっ、出す?
出すってなんだろ……
あっ、ご、ごめんなさい……わ、私が、先に、出しそうぅ……
ま、また、おしっこ漏れるぅ……)
叩かれ、擦られ続けているネムエルの股間には、灼熱の塊が生まれていた。
子宮の溜めこんでいたその高まりは、外へ流れていくことを望んでいる。
「くっ」
「ふぁああ……ぁぁっ……っ!」
膣内にもぐっていた硬い肉棒が、最奥の壁へと突き進んだ。
それはぶるぶると微動し、煮えた液体を子宮に送りこもうとしていた。膣道が白濁した液体で満たされ、それを男の小水だと捉えたネムエルも触発された。
せきとめていた尿意を開放する。
雌穴の隙間から、ぴゅるぴゅると透明な液体が発散した。
「あふっ……あぁあっ……」
ネムエルの視界は、真っ白に染まった。
幸福のホルモンが脳に分泌され、痛みのない電撃が背筋をぴりぴりと刺激する。
少女は、知らなかった快楽を強く記憶に刻みつけることになった。
(凄い、気持ちいい……
あぁ……ふわふわ……する……
何んだろう……これ……またしたいなぁ……)
ネムエルが気を抜いたことで、立てていた膝が崩れた。両足が伸ばされ、ぐったりとした体勢に移行する。
張りつめていた筋肉がすべて、弛緩してしまった。
(でも、ちょっと疲れたかなぁ……)
ベッドに手をつき、呼吸を整える男の横顔を盗み見ると、交接の疲れでしきりに目をぱちぱちとさせていた。
自分と同様に疲労しているのは明らかだ。
少し心配になり、ネムエルはジッとその様子を見つめていた。
そして、偶然にも合うことがなかった視線が交錯した。
「あっ」
「あなたは、誰?」
声をあげて質問すると、男の顔は血の気を失った。
何かを大事なモノを失った者がするような、後悔の表情が浮かぶ。
ネムエルは小首を傾げた。
眠っていたふりを続けるべきだったか。
けれども、股間にこびりついた粘液は拭きたい。
お互いに粗相したのだ。起きて後始末する必要があると、彼女はのんびり思っていた。
肌寒さを感じて、ネムエルは薄く目を開いた。
目の前がぼんやり暗い。この静けさからして、真夜中の夜だ。
身体が冷えているのは、かけ布団は取り払われているせいだろう。ここまではいつもと同じ状況だが、今回は少し違った。
男がベッドに両手をつき、自分の上に覆い被さっていたからだ。
(今日は変だな……んっ!)
胸もとから、引っ張られるような感覚がやってきた。
水が跳ねるような、ぴちゃぴちゃとした音も鳴っている。くすぐったくもあった。乳首が吸われていると気付くのに、やや時間がかかった。
見れば、ざらついた舌がぬるりと乳頭部を舐め回している。
むず痒さが、尻骨の辺りに生まれた。
ゾクゾクと、甘いしびれが背筋を駆けのぼってくる。
戸惑いながら、ネムエルは可憐な唇を引き結んだ。
(なっ、なんだろ……。
な、なんで私、お胸が吸われてるのかなぁ?)
夢中になっている男の頭頂部を見つめた。
暗い影が動いている、という印象しか湧かない。
闇に包まれた男の姿は輪郭線だけに過ぎず、現実味もなかった。時折、窓辺から入ってくる月明かりが男のたくましい肉体を照らしたが、ひどく頼りないものだった。
(わ、私……おっ、おっぱい出ないから……
そ、そんなに吸っても……)
これまでの安眠マッサージでは、胸に触れられたこと少なかった。
そういった女性的な場所――デリケートな部分には、男はある種のためらいを持っているようだった。
なのに、今日に限っては違う。
執拗に舌先を転がし、ぷくりと立った乳首をアメ玉のように転がしてくる。
「はぅ」
短く悲鳴があがる。
吸われながら、揉まれていた。遠慮などなく、指は力強く乳肉を挟みこんだ。乳房の形をぐにゃぐにゃと変えられ、ネムエルはあわあわと口をあけしめした。
頬がカァと熱くなった。
こんなふるまいは誰にもされたことはない。
(うぅううううっ……
くすぐったいし、困ったなぁ。
これって、だめなことだよね。
だめだよね……?
私、怒った方がいいのかな。でも……)
今回は趣向を凝らしたマッサージかもしれない。
そんな可能性も考慮してみる。
未だに奉仕してくれる理由は謎のままだが、ネムエルは深く考えるということは不得手だったので、流されるままに様子見に入った。まだ我慢できる範疇でもあったからだ。
(まあ、ちょこーっと……気持ちいいし……
って、あっ、あっ――あぁー!)
ネムエルの顎がカクンと跳ねた。
男の手が乙女の秘所――熱を帯び始めた股間に触れたからだ。
それも、ただ触られたわけではない。
二本の指は、縦筋の奥へ分け入った。
恥肉をグイッと広げ、秘穴付近に垂れている愛液をすくい取り、ぐちゃぐちゃとかき混ぜつつ、親指が隠れていた小豆をぐりぐりとまさぐってくる。
(ふぁあぁー!)
恥ずかしくなったネムエルはふとももに力を入れ、両足を閉じようとした。
しかし、愛撫が隙なくに続いたこともあり、甘い刺激に惑わされて下半身が震えるだけで終わる。
(はぅううううっ!
こっ、困るよぉ……どっ、どうしよっ、
こ、声をかけようかな?
でも、今から「こんにちは」するのもなんか、おかしい気がするし……)
天然ボケのネムエルは、変なところで迷いを持ってしまった。
その間、彼女の身体に生まれた性的な興奮は燃料を与えられ続け、手が付けられないほど勢いを増していった。
(あぁ…そっかっ……んっ……
これ、ご本にあったやつだっけ……)
寝る前に読んだ本の一ページを思いだした。
確か、女性を楽しませるための手法として書かれていた。
(ふわんってして、気持ちいいから……
楽しい、かな……?)
まさぐられる下腹部は生殖本能の忠実に従い、既に水溜まりとなっていた。
甘い快楽が脳みそをとろかし、どうしようもないほどの陶酔感を与えてくる。
太い指がおのれの弱い部分をこすると、はしたない声を漏らしてしまう。
「ん……あっ」
責め立てる男の息遣いも荒くなった。
腹部の肌に吐息がぶつかってくる。あからさまに反応を楽しんでいる。ネムエルは意地悪だと思った。オモチャにされているような気分になる。
やがて、恥骨の辺りがじんわりと熱を持ってきた。
それは絶頂の予兆だったが、ネムエルには達した経験がなく、どう対処していいかわからなかった。
(んぅっ……もっ、もうだめっ……
わっ、私、おっ、おかしくなる……ぅっ!
じゅ、呪文……唱えちゃお……)
夢にしても、過激すぎた。
目覚めの気配もない。
やむなく抵抗しようとしたネムエルは『疾風撃』という呪文を唱えようとした。手の平に力を集中させる。
渦巻く魔風はひとたび解き放たれれば、厚い石壁をねじ切るほどの暴圧を持っていた。
「あっ……げるっ、うあっ……んっ……ひぃぅっ……!」
(しっ、舌がもつれるよぉ!
あぁぁぁああっ、も、もうだめかもっ!)
ぺろんとへそを舐められ、ネムエルは気を散らした。
まるで、悪戯をたしなめるような一撃だった。
手の平の魔力が霧散した。ベッド際に小さな旋風が散っていった。
同時に――ヘソの辺りに溜まっていた熱が、ふわっと広がっていく感覚が襲ってくる。ぶるぶると股間が震えた。膝がガクガクと笑う。
ネムエルにとって、人生初めての絶頂だった。
その排出感は尿意と似通っていたので、ネムエルは自らが排尿したと錯覚した。
(やっ、やっちゃったぁ……。
あっ、あははっ……久しぶりに……
お、怒られちゃうなぁ……
なんか、身体に力が入らない……って、あれっ?)
股間からの刺激は、いつしかやんでいた。
男は覆い被さるのをやめ、ネムエルの足もとに移動している。
(おっ、終わったのかな……?
よかった。ほどほどが一番だよね……)
くぃっと膝頭が左右に移動させられる。
両脚を開かされた恰好となったが、ネムエルは性感の|余韻(よいん)でふわふわとしていた。
男は足の間でもぞもぞと動いていたが、何をするかなど予想もしていなかった。
――ぷちっ
(あっ)
ふともも同士がぶつかった。パンッと渇いた音がした。
男の象徴が、ぬかるんだ膣道を滑り込んでいく。圧倒的な挿入感により、おぼろげにあったネムエルの眠気は吹き飛んだ。膣奥からくる鋭い痛みと、僅かな肉の悦楽が精神に大きな打撃を与えたのだ。
(いっ、いいい、いったぁあっーーー!!)
目を白黒させ、口をぱくぱくさせる。
ネムエルは何が起こったか確かめようと、弱々しく首を持ち上げた。
そして、縦長の黄金瞳がおのれの痛点――接合部を確認して見開かれた。
(おっ、男の人の股間を押しつけられてる……
これってもう、エッチだよね?
さっき……本で読んだものだよね……赤ちゃんを作るやつだよね?)
自問しても、答えなどはでてこない。
しょせん、付け焼け刃の性知識である。
確かなことは、暗がりでわかりずらいが――男根が膣に深々と侵入したという事実だけだ。
尻の付け根が冷たかった。尻穴への道に破瓜の血が垂れ流れているせいだ。処女膜は破れ、子宮口までペニスが到達している。
胎内でドクッドクッと脈動する肉の棒が、あまりにも強い現実を突きつけてくる。
(これ、夢じゃないや……あっ)
――ようやく、正しく現状を把握したところで唇を奪われた。
舌と舌が重なった。
唾液にまみれた口粘膜がにゅるにゅると絡まっていく。食べ物を口にしているわけでもなかったが、不思議と美味だとネムエルは思った。
自然と目尻が垂れ下がり、固くなっていた身体が弛緩していく。
「君のことが好きなんだ」
(んっ)
耳たぶに向けて、ささやかれる。
ぞくりとさせる声音だった。僅かに震えていて、苦しげな情感がこもっていた。ネムエルは自分の心臓の鼓動を聞いた。どきどきとして騒がしい。残っていた抵抗しようとする気が失せていく。
こわばりが解けたのを見計らったのか、背中に筋肉質の手が回された。
密着すると、火傷をしそうなほど肌が熱い。
相手もまた、自分と同じように感情を昂ぶらせているのだとわかった。
(……なんだろ。安心する触り心地……)
奇妙だが――以前から知っている肌触りだと思った。こんな風に誰かに抱き寄せられたことなど、ないはずなのに。
「はふぅっ」
ネムエルはびくりとして、上半身を浮かせた。
股の奥でおとなしくしていた男性器が暴れ始めたからだ。前後の動きは緩慢であったが、稀に力強いものが突きに混じってくる。
やわな少女の股関節はその度に振動し、尻の形を柔軟に変えた。
(……あわっ……変な、感じ、する……
わぁー……き、気持ちいい。
何これぇ……頭が、さっきより、くらくらするぅ……)
熱に浮かされたネムエルは、黄金の瞳を涙で潤ませながら性交の味に酔った。
硬い棒が秘所を行き来し、うねうねとした膣壁を摩擦し続けている。湯ぶねをかき混ぜるような、ちゃぷんちゃぷんとした音がたまらなく恥ずかしいが、性欲を煽るエッセンスにはなっている。
(……あぁー……ほんと、気持ちいい。
ずっと、こうしていたいな……
私、甘えん坊だったのかなぁ……はぁー……)
根がのんびり屋のネムエルは行為中にも関わらず、そんなことを思った。
誰かに愛おしげに抱きしめられるのは、いつ以来のことだろうか。
いつしか可愛がられるより、恐れられる日々が多くなっていった。
周囲からの期待がつらく、自分を変えられることもできず、流されるままに生きてきた。
(……多分、だめなことしてるけど……気持ちいいなぁ)
身体を上下に揺すられながらも、ネムエルは背徳の快楽に身を任せた。
しかし、行為は激しくはあったが、長続きすることもなかった。
終わりは予告をもって訪れた。
「だっ、出すから……!」
(んっ、出す?
出すってなんだろ……
あっ、ご、ごめんなさい……わ、私が、先に、出しそうぅ……
ま、また、おしっこ漏れるぅ……)
叩かれ、擦られ続けているネムエルの股間には、灼熱の塊が生まれていた。
子宮の溜めこんでいたその高まりは、外へ流れていくことを望んでいる。
「くっ」
「ふぁああ……ぁぁっ……っ!」
膣内にもぐっていた硬い肉棒が、最奥の壁へと突き進んだ。
それはぶるぶると微動し、煮えた液体を子宮に送りこもうとしていた。膣道が白濁した液体で満たされ、それを男の小水だと捉えたネムエルも触発された。
せきとめていた尿意を開放する。
雌穴の隙間から、ぴゅるぴゅると透明な液体が発散した。
「あふっ……あぁあっ……」
ネムエルの視界は、真っ白に染まった。
幸福のホルモンが脳に分泌され、痛みのない電撃が背筋をぴりぴりと刺激する。
少女は、知らなかった快楽を強く記憶に刻みつけることになった。
(凄い、気持ちいい……
あぁ……ふわふわ……する……
何んだろう……これ……またしたいなぁ……)
ネムエルが気を抜いたことで、立てていた膝が崩れた。両足が伸ばされ、ぐったりとした体勢に移行する。
張りつめていた筋肉がすべて、弛緩してしまった。
(でも、ちょっと疲れたかなぁ……)
ベッドに手をつき、呼吸を整える男の横顔を盗み見ると、交接の疲れでしきりに目をぱちぱちとさせていた。
自分と同様に疲労しているのは明らかだ。
少し心配になり、ネムエルはジッとその様子を見つめていた。
そして、偶然にも合うことがなかった視線が交錯した。
「あっ」
「あなたは、誰?」
声をあげて質問すると、男の顔は血の気を失った。
何かを大事なモノを失った者がするような、後悔の表情が浮かぶ。
ネムエルは小首を傾げた。
眠っていたふりを続けるべきだったか。
けれども、股間にこびりついた粘液は拭きたい。
お互いに粗相したのだ。起きて後始末する必要があると、彼女はのんびり思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる