【R-18】異世界でお姫さまと眠れ-チートマクラに人外転生-

七色春日

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-14-『発散中に扉を叩くな』

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 魔王城<ロストアイ>には、地下フロアが存在する。

 その中には、侵入者を惑わす迷路もあるが――四魔将のために用意された異空間もある。

〝氷壁〟の名を冠するシフルの支配領域の名は《カチコチ・アイスランド》。

 室温は常に零下を下回り。
 床は一部は、歩道を除いてスケートリンク仕立て。

 四方の壁もまた氷山である。

 主に氷雪系モンスターの居住エリアであり、食糧貯蔵庫として扱われる側面もある。

 徘徊はいかいしているのは、ペンギン型モンスターや二足歩行するシロクマだ。彼らは物流関係の仕事を担っており、箱詰めされた冷凍食を管理している。

 住人は倉庫番でもあり、夜間のつまみ食いをもくろむ者を撃退する役目を負っていた。

 氷魔系モンスターのボス格であるシフルは、空調の関係で冷凍庫の隣を私室としていた。

 彼女はネムエルと悶着したあと――就寝のためにシャワーを浴び、パジャマに着替え、ベットにうつ伏せになっているところだった。

「あぁー……やっちまったなぁ」

 足をばたつかせ、シフルは身をねじっていた。

 彼女は自分のうかつな言動を寝る前に思い出し、後悔するタイプであった。

 ネムエルのためだと頭ではわかっていたが、愛用していたマクラ――従魔を裂いてしまった事実が胸を重くしていた。

(あんなもんを男って、
 カウントしなくてもよかったかなぁ……)

 壮一の人型形態を見ていないシフルは、誤って小動物を踏み殺してしまったような罪悪感を抱いていた。

 身を翻し、うつ伏せで愛用のマクラを掲げる。

 試しとばかりに室内灯にかざしたが、自分が所持しているのはなんの変哲もないマクラだ。

(ああいう、従魔って……どうやって作るんだろう?)

 ネムエルの身体をまさぐっていた壮一のことを思い浮かべた。

 意思を持った無機物と考えれば、自己処理に使うのは便利そうではある。

 これまで、評判の性具を幾つか試したことがあった。

 しかしどれも後片付けは面倒だし、使用後は常に虚しい。

(あれなら、
 手間いらずだよな……
 今更、ネムにも造り方を聞けねえしなぁ)

 途端に滅したのが、もったいなく感じてくる。

 素体がマクラなら無機物だ。
 きっと、低温環境にも耐性がある。

「んっ……」

 おもむろにパジャマズボンを摘まみ、前へと引っ張った。

 水玉模様の下着の中に手を入れる。二本指で秘裂を触った。ぐちょりと、粘度のある液体が指に絡みついてくる。

 濡れている。

 ふぅーっと、シフルは桃色の吐息を漏らした。

「一回、こすってから寝よ」

 やさぐれたOLのように頬をポリポリ掻き、むくりと上半身を起こしたシフルはあぐらをかいた。

 ベッド際にある、サイドボードに手を伸ばす。引きだしの取っ手を引っ張り、秘蔵しているバイブのコレクションのうちから、良さ気なのを探した。

 独り身のシフルは長年、自慰の研鑽も積み重ねていた。

 最近の好みは、乙女にクンニリングスを提供する舌型バイブの『ローズ・フラッシュ』だが、伸縮自在の万能ディルド『サンダー・スピンボーイ』を捨てがたい。

(今日は思いっきり突かれたい気分だから、
 サンダーだな)

 朝食のメニューを決めるノリで、シフルは凶悪なディルドを選択した。

 処女膜など、過去の戦闘訓練でとうに破れている。

「うん……いい感じだ」

 弓なりに反ったシルエット、全長十五センチほど。

 シフルは口の端をぺろりと舐めると、無色透明のローションを取り出した。とぷんとぷんとバイブの先端に振りかける。とろみのある液体を手の平で撫でつけ、濡れ具合を均一にした。

 ベットシーツの濡れ防止は考えない。

 どの道、自分が興奮すれば冷気を放射して氷の板になる。ぐず濡れになるのは毎度のことだ。

「ようしょっと」

 淡々と、ズボンと下着を膝下に降ろす。

 寝転がり、楽な姿勢となる。股下に手を入れ、自らの秘部にディルドをあてがいながら、好みの男性に強引に挿入されるイメージを固める。

 本当に無理やり犯されるのはごめんだが、想像するのは自由だ。

 ――ちゅぷっ

 濡れた亀頭部が、膣口にするりと入った。

 菊座がきゅうっと狭まった。ディルドを包む肉ヒダから、痺れるような快感が押し寄せてきた。尻肉が、ぶるっと揺れた。脳髄に甘い痺れが昇ってくる。

(んっ……あっ、
 ぬるぬるがイイッ……感じ)

 キィッ

「っ!?」

 突然、入り口の戸の開閉音が聞こえた。

 シフルは閃光のごとき素早さで動き、バサッとかけ布団を被った。

 ノックせずに入室する命知らずの魔物など、フロアにはいなかったはずだ。

(うぉいっ! なんだよっ!
 いいところなのに、無断で入りやがって!
 怒鳴ってやりてえけど、この姿勢はまずい……)

 慌てて、かけ布団を頭から被ったのも失態だ。

 早急にズボンと下着を戻したいところだが、足先からの感覚がない。どこかにいってしまっている。自分は果たして、下半身丸出しで説教ができるだろうか。非常にアンタッチャブルな恰好だ。

 ペタペタと、重量感のない足音が聞こえた。

「魔法の灯りがあるせいで、
 部屋が明るいけど……もう、眠ってるか」

 どこかホッとしたような声。
 男のものだ。

(嘘だろ。まさか)

 ――夜這い。

 その二文字がシフルの脳裏で踊った。
 緊張の汗が額に流れ、開いた毛穴から冷めたい微風が噴き出ていく。

 そんな根性のある魔族が居ただろうか。

 一体、誰が?

「んんっ……」

 高鳴る鼓動を驚きながらも、うめき声をわざと漏らした。

 寝返りを打つふりをする。そうして扉の方向をチラ見したが、声の主の姿はない。

 男の気配は素早く、ベッドの下にいった。隠れてしまったようだ。視界の範囲では姿は確認できない。

 残念に思いながらも、そのまま寝たふりを継続して出方を窺う。

(よ、様子見しよ……万が一敵でも……
 あたしなら対処できるしな)

 気配が移動した。
 ベッドがギシッと軋んだ。確実に傍にいる。もうすぐそこに。

 乙女らしい感情など、しばらくぶりだ。

 シフルはきゅんきゅんしながら、薄目を開けた。

(は?)

 マクラが、そこに居た。

 もとい、マクラ型のモンスターだ。

 なぜか、水の入ったジョッキを持っている。

 自分の腰の辺りを凝視しながら、水を垂らそうと試みているようだ。

 ひょっとしてだが、疑似的におねしょでもさせようと考えているのだろうか。

(可哀相なくらい馬鹿だな、こいつ)

 救いようがないくらいに頭が悪いモンスターだ。

 けれど、ネムエルが従えていた魔物と同じモノだ。

(あれで、死んでなかったのかよ……
 何しに来たんだ?
 まさか……あんな目に遭ってなお、
 あたしに喧嘩を売りにきたのか……
 根性だけはあるようだけどさぁ……もっとこう、考えろよな)

 なんとも、大胆不敵だ。

 すぐさま起きあがり、ボコボコにしたあとに焼却場に放り込み、殺処分してやろうと考えたが、惜しい気もした。

 あの官能的な愛撫は得難いものだろうし、下僕として扱うのも手ではある。

 無駄な意識を消して、魔法だけを使う性処理用奴隷にしてしまうのも可か。

「……あっ」
「……あっ」

 シフルの邪念もそこそこに。

 ぴたりと、目と目が合った。

 吐息さえ当たりそうな距離――偶然にしろ、曲がり角でバッタリと敵に遭ったような表情で、お互いが固まった。

「『熟睡念波』」

 機先を制したのはマクラの方だった。
 致命的な遅れが、シフルの抗うすべを奪った。

(うっ……また魔法、か。
 うおおおおっ、ね、眠くなってきた……
 眠くなんて、なかったのに……
 そう……か……至近距離か……)

 力の波長がダイレクトに脳を揺さぶる。

 ずしりとくる睡魔が、まぶたを重くした。

 とっさに腕を上げてマクラを攻撃しようしたが、魔力がこめられない。

 こじ開けようとした両目に、暗幕が下りる。

 すやりと、意識が遠のいた。
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