6 / 14
本編
6 小さいのが来た理由
しおりを挟む
護衛の男の話と、留守居からの連絡でやっと様子が見えてきた。
ガレス皇子を害そうとしたのは、やはりガレス皇子の父だった。
「クソ兄貴め」
東の宮が吐き捨てる。
ガレス皇子の父は、異国に嫁いだ帝国の神子に産み落とされ、時の皇帝の命により、当時まだ子が居なかった先の東の宮の養子とされた。神子の子らしく、その身に抱える魔力は膨大。しかし、繊細が過ぎて気難しく苛烈な性質は、東の気風に馴染まなかった。
本人もそれを自覚しており、義弟が東の宮を継ぐと決まった時、ガレス皇子の父はそれを静かに受け入れているようだった。
しかし、ガレス皇子が生まれた日、高貴な血と稀有な魔力を持ちながら、豪放な義弟達の影に霞む彼の不満は爆発した。
──神子の子として血は繋いだ。後は好きにさせろ!
その後の彼の振る舞いは、目に余るばかり。
ガレス皇子の母は夫の不行状に心を痛め、すっかり心身を弱らせてしまった。
仕方なく、東の宮は自身の異母妹であるガレス皇子の母を、ガレス皇子と共に別邸へ避難させた。
何度かの話し合いの末、ガレス皇子の父は落ち着きを取り戻した。しかし、それは周囲を騙すためであった。それに気付いていた東の宮は、ガレス母子をさらに別の場所に隠した。
しかし、魔力の強いガレス皇子の父は、数多の守護結界を破り、妻子を見つけた。
折しも隣国との戦が勃発、急な出陣にガレス母子の周辺も手薄になっていた。
護衛の男はガレス皇子を守って一人脱出した。しかし、その際、皇族であるガレス皇子の父を害してしまった。
このままでは、自分は死を賜る。
まだ若い男は理不尽だと怒りに震えた。そして、死に恐怖した。
男は留守居を頼るのではなく逃げることを考え、しかし、やがて逃れられぬと観念する。
己の運命に絶望した男は、東の宮に忠誠を誓う身で、ちらとでも保身を考えた自分にも絶望した。混乱のまま、せめて、この幼子だけは守らねばと東の宮の陣に駆け込んだ。そして、東の宮に死を請うたのだ。
一方、ガレス皇子の父はガレス皇子の母を人質に立て篭もっていると言う。
「忌々しい」
罵倒は、護衛の男に向けてのものではない。
義兄から目を離した己の判断を悔いる東の宮は、今ほど皇族としての身の重さと、宮としての不自由を疎ましく思ったことはない。
神子の血を引く自分には逆えまいとタカを括って護衛に斬られたガレスの父を、今すぐこの手で叩き斬ってやりたいと東の宮は思う。
※
「ガレスを連れてこい」
夜遅く、リヒトは東の宮に呼ばれる。ガレス皇子を守った男に、いよいよ最期の時が来たのだ。
ガレス皇子を害そうとしたのは、やはりガレス皇子の父だった。
「クソ兄貴め」
東の宮が吐き捨てる。
ガレス皇子の父は、異国に嫁いだ帝国の神子に産み落とされ、時の皇帝の命により、当時まだ子が居なかった先の東の宮の養子とされた。神子の子らしく、その身に抱える魔力は膨大。しかし、繊細が過ぎて気難しく苛烈な性質は、東の気風に馴染まなかった。
本人もそれを自覚しており、義弟が東の宮を継ぐと決まった時、ガレス皇子の父はそれを静かに受け入れているようだった。
しかし、ガレス皇子が生まれた日、高貴な血と稀有な魔力を持ちながら、豪放な義弟達の影に霞む彼の不満は爆発した。
──神子の子として血は繋いだ。後は好きにさせろ!
その後の彼の振る舞いは、目に余るばかり。
ガレス皇子の母は夫の不行状に心を痛め、すっかり心身を弱らせてしまった。
仕方なく、東の宮は自身の異母妹であるガレス皇子の母を、ガレス皇子と共に別邸へ避難させた。
何度かの話し合いの末、ガレス皇子の父は落ち着きを取り戻した。しかし、それは周囲を騙すためであった。それに気付いていた東の宮は、ガレス母子をさらに別の場所に隠した。
しかし、魔力の強いガレス皇子の父は、数多の守護結界を破り、妻子を見つけた。
折しも隣国との戦が勃発、急な出陣にガレス母子の周辺も手薄になっていた。
護衛の男はガレス皇子を守って一人脱出した。しかし、その際、皇族であるガレス皇子の父を害してしまった。
このままでは、自分は死を賜る。
まだ若い男は理不尽だと怒りに震えた。そして、死に恐怖した。
男は留守居を頼るのではなく逃げることを考え、しかし、やがて逃れられぬと観念する。
己の運命に絶望した男は、東の宮に忠誠を誓う身で、ちらとでも保身を考えた自分にも絶望した。混乱のまま、せめて、この幼子だけは守らねばと東の宮の陣に駆け込んだ。そして、東の宮に死を請うたのだ。
一方、ガレス皇子の父はガレス皇子の母を人質に立て篭もっていると言う。
「忌々しい」
罵倒は、護衛の男に向けてのものではない。
義兄から目を離した己の判断を悔いる東の宮は、今ほど皇族としての身の重さと、宮としての不自由を疎ましく思ったことはない。
神子の血を引く自分には逆えまいとタカを括って護衛に斬られたガレスの父を、今すぐこの手で叩き斬ってやりたいと東の宮は思う。
※
「ガレスを連れてこい」
夜遅く、リヒトは東の宮に呼ばれる。ガレス皇子を守った男に、いよいよ最期の時が来たのだ。
1
あなたにおすすめの小説
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる