子守 〜元盗賊の使いっ走りが皇子の守役になる話〜

すみよし

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本編

7 小さいのはお別れをする

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 ガレス皇子を連れて、リヒトも天幕に入る。
 小さな天幕は、ガレス皇子とリヒト、そして東の宮が入っただけで満杯だ。
 
「ガレス様、あなた様をお連れ下さった方ですよ」

 リヒトはそう言って、簡易な寝台に横わる男に、ガレスを対面させる。

 炎の魔法を喰らった男は、ガレス皇子を抱え込んでいた腕と胸以外は、至る所に手当ての布が当てられていた。顔は、目と乾きひび割れた唇だけが、辛うじて見える。

「……ガレスさ……ま」

 自分が呼ばれたことは分かるガレス皇子であったが、男の異様な風体に驚いているようだ。

 苦し気な息の下から男が告げる。

「申し訳ありません。未熟な私は道を誤り……、どうか、お健やか……に……、」

 後の言葉は、ひゅ、ひゅ、という奇妙な音に消えた。

 怯えて嫌々をするガレス皇子に、リヒトが言う。

「こういう時は、もう、手を繋ぐだけでいいんですよ」

 男の目は開いているが、もう、見えてはいないかもしれない。

 何かを探すように這う男の手に、リヒトはガレス皇子の手を重ねてやる。

 その手が本当に求めたのは、ガレス皇子ではなかったかもしれない。それでも、とリヒトは思う。自分が守った命の温もりを最期に感じられることは、きっと悪くはないはずだ、と。

 やがて、男は息を引き取った。



 次の日の早朝、リヒトは妙な感触に目を覚ます。ガレス皇子がリヒトの腹の上で寝ていた。
 
 昨晩、ガレス皇子はなかなか眠らず、リヒトはガレス皇子をあやしては眠らせ、寝台にそっと下ろしては目を覚まされ、仕方なく抱っこしながら眠らせたのだった。知らぬうちに自分も眠ってしまっていたらしい。

 押し潰さなくて良かったと一安心したリヒトだが、ガレス皇子を抱き上げて異常に気付く。

 ひどい熱だった。
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