7 / 14
本編
7 小さいのはお別れをする
しおりを挟む
ガレス皇子を連れて、リヒトも天幕に入る。
小さな天幕は、ガレス皇子とリヒト、そして東の宮が入っただけで満杯だ。
「ガレス様、あなた様をお連れ下さった方ですよ」
リヒトはそう言って、簡易な寝台に横わる男に、ガレスを対面させる。
炎の魔法を喰らった男は、ガレス皇子を抱え込んでいた腕と胸以外は、至る所に手当ての布が当てられていた。顔は、目と乾きひび割れた唇だけが、辛うじて見える。
「……ガレスさ……ま」
自分が呼ばれたことは分かるガレス皇子であったが、男の異様な風体に驚いているようだ。
苦し気な息の下から男が告げる。
「申し訳ありません。未熟な私は道を誤り……、どうか、お健やか……に……、」
後の言葉は、ひゅ、ひゅ、という奇妙な音に消えた。
怯えて嫌々をするガレス皇子に、リヒトが言う。
「こういう時は、もう、手を繋ぐだけでいいんですよ」
男の目は開いているが、もう、見えてはいないかもしれない。
何かを探すように這う男の手に、リヒトはガレス皇子の手を重ねてやる。
その手が本当に求めたのは、ガレス皇子ではなかったかもしれない。それでも、とリヒトは思う。自分が守った命の温もりを最期に感じられることは、きっと悪くはないはずだ、と。
やがて、男は息を引き取った。
次の日の早朝、リヒトは妙な感触に目を覚ます。ガレス皇子がリヒトの腹の上で寝ていた。
昨晩、ガレス皇子はなかなか眠らず、リヒトはガレス皇子をあやしては眠らせ、寝台にそっと下ろしては目を覚まされ、仕方なく抱っこしながら眠らせたのだった。知らぬうちに自分も眠ってしまっていたらしい。
押し潰さなくて良かったと一安心したリヒトだが、ガレス皇子を抱き上げて異常に気付く。
ひどい熱だった。
小さな天幕は、ガレス皇子とリヒト、そして東の宮が入っただけで満杯だ。
「ガレス様、あなた様をお連れ下さった方ですよ」
リヒトはそう言って、簡易な寝台に横わる男に、ガレスを対面させる。
炎の魔法を喰らった男は、ガレス皇子を抱え込んでいた腕と胸以外は、至る所に手当ての布が当てられていた。顔は、目と乾きひび割れた唇だけが、辛うじて見える。
「……ガレスさ……ま」
自分が呼ばれたことは分かるガレス皇子であったが、男の異様な風体に驚いているようだ。
苦し気な息の下から男が告げる。
「申し訳ありません。未熟な私は道を誤り……、どうか、お健やか……に……、」
後の言葉は、ひゅ、ひゅ、という奇妙な音に消えた。
怯えて嫌々をするガレス皇子に、リヒトが言う。
「こういう時は、もう、手を繋ぐだけでいいんですよ」
男の目は開いているが、もう、見えてはいないかもしれない。
何かを探すように這う男の手に、リヒトはガレス皇子の手を重ねてやる。
その手が本当に求めたのは、ガレス皇子ではなかったかもしれない。それでも、とリヒトは思う。自分が守った命の温もりを最期に感じられることは、きっと悪くはないはずだ、と。
やがて、男は息を引き取った。
次の日の早朝、リヒトは妙な感触に目を覚ます。ガレス皇子がリヒトの腹の上で寝ていた。
昨晩、ガレス皇子はなかなか眠らず、リヒトはガレス皇子をあやしては眠らせ、寝台にそっと下ろしては目を覚まされ、仕方なく抱っこしながら眠らせたのだった。知らぬうちに自分も眠ってしまっていたらしい。
押し潰さなくて良かったと一安心したリヒトだが、ガレス皇子を抱き上げて異常に気付く。
ひどい熱だった。
1
あなたにおすすめの小説
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる